杖になりたい
思わずため息をついてしまうやるせないニュースです。
車いすの男性、踏切で小田急電車にはねられ即死…東京
18日午後9時45分ごろ、東京都世田谷区北沢の小田急線下北沢駅近くの踏切で、車いすに乗った40歳くらいの男性が、新宿発相模大野行き下り急行電車にはねられて即死した。警視庁北沢署で男性の身元を調べている。
小田急電鉄によると、事故当時、遮断機は降りていたという。この事故で、急行電車は現場に約25分間停車した。
(読売新聞) - 1月19日3時13
下北沢で夜10時前だったら、まだ通行人はいたんじゃないかと思うんですけど、私は誰も責められない。
私自身、いつも障害者の人を見ないように歩いているんです。それは、面倒ということじゃなくて、見ることが相手に失礼だという配慮だと自分では思ってたんですけど、それって勝手な言い訳ですよね。
「今声をかけるべきじゃないかな」と思っても何だかこわいんです。障害者の方にだってプライドがあるだろうし、「迷惑です」なんて言われちゃうんじゃないかって。
そんな私にも体が思い通りにならなかった経験があります。乳がん手術直後は腕が上がらず歩くのもすごく時間がかかるけど、1人暮らしだから病院へは自力で電車の乗って行くしかありませんでした。
東京の街はあまりにも人が多くて、体が自由に動かないと外出することは体も大変だけど、人にぶつかったり押されることへの恐怖感の方が強かったな。ゆっくり歩いていると、後ろから押されることは当たり前で、「チッ」と軽く罵倒されることもありました。
自分の体が自由に動かなくなって初めて、相手の立場に立って考えてみるってこういうことなんだってわかった気がしました。
あの時の私は、自分のペースで歩くことさえできれば、誰の助けも必要ではなかったけど、誰かのサポートが必要だっていう人もいると思うんですよね。
リウマチの知人が、
「足が痛くて階段や電車の上がり降りに時間がかかるし、人に押されたりするのがすごくこわかったんだけど、杖を持っていると足が悪い人だって一目瞭然だから、みんなよけてくれるよ」
と言っていました。杖は、体を支えるだけが役目ではないのですね。
杖が人からの攻撃を守ってくれるってちょっと悲しい。
「どうかしましたか?」なんて自然に声をかけれることは、多分そんなに難しいことじゃないと思うのに、なかなか第一声が出てきません。
「ちょっと道を開けてください」と一言声を出せる人になりたい。
「誰か力を貸してください」と代わりに言える勇気を持ちたい。
<文責/泉 あい>
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コメント
悲しすぎる。でも、もっと悲しいのは扱いの小ささ。
何も無ければ、ここぞとばかりにマスコミは書くだろう。
「なぜ避けられなかったのか小田急」とか。
投稿: 某S | 2006年1月19日 (木) 15時07分
身近で難しい問題ですね。
障害にたいする考え方って人それぞれありそうですね。
投稿: ゴウキング | 2006年1月19日 (木) 18時19分
相手の立場になって考えるって難しいことですね。
健常者にしても障害者にしても、
その時その場所で体の不調や、心の悩み等
いろいろな事情があるでしょうし・・・。
記事を読んだだけではわかりませんが
この男性はなぜそのとき踏み切りにいたのでしょうか?
車椅子の車輪が線路の溝にはまって動けなかったのでしょうか?
それとも想像したくないですが自殺でしょうか?
とにかく
助けようとしたが助けられなかった
あるいは
残念ながら誰もが気づかなかった
と信じたいです。
どちらにしても悲しいことですが
気づいていたにもかかわらず誰も声をかけなかった
というわけではないですよね?
投稿: 中坊 | 2006年1月19日 (木) 21時24分
昨日、世田谷区役所に行く途中、東急世田谷線の踏切で見た出来事。
杖をついた男性の老人が踏切を渡っていたところ、真ん中あたりまで来たときに警報が鳴り出した。
普通の人なら遮断機が下りてくるまでに問題なく踏切内から出ることができるが、この老人は歩幅が狭く(1歩が20cmぐらい)歩くのが遅いため遮断機が下りてきてしまった。
すると、踏切待ちの紳士が降りてくる遮断機を手で支え、老人が渡り終えるまでバーを持ち上げていた。(世田谷線なので電車は遅く、まだ遠くだったので全く危機感はなかったが)
老人はそこで紳士に一礼したが、おそらく自分としては相当頑張って歩いたと見えて、その場でしばらく立ち止まっていた。
踏切の遮断時間は遮断する道路の交通状況や見通しなどを勘案して設定しているのだろうけど、それはたぶん電車側からの基準だと思う。
踏切を渡る人は、車いすの人もいるし歩くのが遅い人もいる。地域住民が安心して渡れるよう安全対策を進めて欲しい。
投稿: 並一丁 | 2006年1月20日 (金) 10時34分
去年か一昨年くらいにどこかの駅で
目の不自由な方がホームで電車に接触するかして
両足を切断するような痛ましい事故がありました
ニュースを読むだけで苦しい気持ちになってしまいます
視力にも障害がある上に脚まで奪われて
世を呪いたい気持ちになったのではないでしょうか
彼等の助けになってあげたいのは確かなのですが
やはり、こちらから声を掛けると言うのは
なんとも、勇気が出ません
当たり前ですが援助を求められたなら
助力は惜しみませんが・・・
後、なんか気恥ずかしいってこともありますか
電車で席を譲る時もついそこの駅で降りるフリを
してしまいます
席を譲ってこちらが目に止まるところで立ってるのも
なんか嫌かなぁと
ほんっと難しいです
投稿: ☆まがり★ | 2006年1月20日 (金) 12時33分
みなさん、ありがとうございます。僕はこのかたの関係者で今だに信じられません。この方は身体も患っていたけども心も患っていましたが現代の日本の法律では受け入れ先の施設がありませんでした。私も付き添いさがしたのですが身体や精神の両方で断られました。いわば極端ですが日本の未熟な福祉体制が殺したともいえなくもありません。どうやら覚悟のうえらしいのですがライブドアや建設の問題が大きい
のはわかりますが、もっとみんなにこの記事を扱ってもらい
正確な情報を知ってもらいたいです。とりあえずは今は自分の力不足を責めることなく、彼のご冥福を祈りたいと思うとともに一人でも若いかたに正確な情報が伝わることを願っています。
投稿: ハスゴン | 2006年1月20日 (金) 16時57分
みなさん賢すぎるんじゃないんですかね。もっと、なにも考えずに動きたいように行動すればそれでいいと思うのですよ。
人に手を差し伸べようとするとき、それはアナタが手を差し伸べたいと思ったときなのですよね。そのとき賢い人はへんに結果を考えてしまうからいけないんじゃないのかな。アナタは結果のために手を差し伸べるのではないのです。それでお礼を言われればそれはそれ、嫌がられたら「あらあら、こりゃ失礼・・・」なんつってその場を離れればいいだけなのですよ。
と、考えて行動すると、あんがい気軽に動けるもんです。
投稿: 大馬鹿門 | 2006年1月22日 (日) 00時20分
あいさんは、マジでやさしい人だ。
こういう記事こそ見逃せないよね。
投稿: ボウイ | 2006年1月23日 (月) 22時23分
泉さん、本blog楽しく拝見させていただいております。
泉さんも、医療系の問題にもご関心があるようですので、
コメント書き込ませてください。
(TBをさせていただいたのですが、どうも反映しないようです)
不治の病とされている難病の患者さんのDNAをバイオバンクへ集めて、
遺伝子レベルで、薬剤の効果、副作用などの関係を明らかにしたり、
病気との関係を解析し、治療方法等を確立していこうとする
「文部科学省のオーダーメイド医療実現化プロジェクト」があります。
この対象となっている難病のひとつにALS(筋委縮性側索硬化症)
があります。
しかし。研究の精度を確保するには、1,000名規模の力協力者が
必要なのですが、ALSの患者の参加数は、平成17年度11月現在で、
699名で、残り 301名 以上の患者の参加が必要だそうです。
泉さんのblogはアクセス数も多く、知人にALSの患者の方が
いらっしゃる読者の方もいるのではないかを思います。
読者の方で、ぜひ、声をかけていただいて、本プロジェクトへの多く
の方の参加を呼びかけてもらえないでしょうか。
文部科学省の本プロジェクトのサイト
http://biobankjp.org/" rel="nofollow">http://biobankjp.org/
もう少し詳しく内容を書いた私のblogでのエントリは
http://doraku.cocolog-nifty.com/waytodoraku/2006/01/14_8483.html" rel="nofollow">http://doraku.cocolog-nifty.com/waytodoraku/2006/01/14_8483.html
投稿: 六甲びと | 2006年1月30日 (月) 15時04分
某Sさん
本当にそうですよね。
大きなニュースって個人によって違うものだと思うんですけど、今のマスメディアでは、ニュースは商品ですから。
大多数の人が関心を持っていることだけが、大きなニュースではないって思っている人も増えてきていると思いますけど・・・。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時22分
ゴウキング さん
本当にそうですよね。
同じ人でも、その時の体調や気分で考え方が変わることもあるでしょうし・・・。
こういうことって考えるより行動なのでしょうか。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時25分
中坊さん
この記事を読んだだけなので、わかりません。
流石に、踏み切りの中で立ち往生をしている人を見つけたら、私でも何かしら行動を起こせると思います。
でも、困っている人に気づかないことが多いと思うんですよね。
一見しただけでは障害があるとか、病気を持っているとわからない方って多いでしょ。
ただゆっくり歩きたいのに、後ろから押されてしまうことって意外に多いんですよ。
でもね、世の中には元気な人ばかりがいるんじゃないという認識があれば、結構気づけるものなんだと思います。
ほんのちょっとの意識があれば、「何だよ!歩くの遅いなぁ」が「どこか具合が悪い人なのかな、避けてあげよう」に変わると思うんですよね。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時36分
並一丁さん
踏み切りが閉じている時間って結構難しいですね。
開かずの踏み切りってよく聞きますけど、寒い今の時期なんかは特に「こんなに長く締めなくてもいいじゃないか」ってつい思ってしまいますもの。
これは、関係者にとっても悩ましい問題ではないでしょうか。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時39分
☆まがり★さん
わかるぅ〜。
私も席を譲るのにバスを途中下車したことがあります。
何て気がちっちゃいんでしょうね・・・。
最近は、おばちゃんになったことだし、もっと堂々と声をかけたいと思うんですよね。
電車の中で、学生風の若い女性が自然にお年寄りに席を譲っている姿を何度か見ました。
あの優しい姿は、女性として見習いたいです。
考えるより前に声をかけているから自然なのでしょうね。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時44分
ハスゴンさん
やはり、亡くなられた方の背景には、いろいろなことが起きているのですね。
そういうことを問題提起するのが、本来のマスメディアの役目なのでしょう。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時49分
大馬鹿門さん
私の場合、気がちっちゃいんだと思います。
人見知りなんですょ。
知らない人に声をかける時は緊張するんです。
やらなくちゃと思っても、行動を起こすまでに決心が必要なんです。
こんな風に説明をしている自分を馬鹿げていると思いますね・・・。
やはり考える前に行動するべきなのかもしれません。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時52分
ボウイ さん
優しくはないと思います。
でも優しくなりたいと思います。
投稿: ぁぃ | 2006年2月 5日 (日) 23時53分
このような事故が起きても鉄道会社はほとんど責任を問われないそうです。それは、鉄道会社が大企業で多額の政治献金をしているからなのでしょう。
そのためか、安全対策は一向に進みません。
人命を軽視し、儲けを優先させる鉄道会社やそれを容認・黙認する政治家の態度には怒りを覚えます。
それと、事故を起こした電車の運転手は心が痛まないのでしょうか?もし、その後も平気で運転を続けられるのだとしたら恐ろしいことです。
投稿: kuroneko | 2006年3月10日 (金) 08時55分