4本指のピアニスト
韓国の20歳の女性イ・ヒアさんは、先天性四肢奇形で両手に2本ずつ、全部で4本の指でピアノを奏でます。
ショパンの幻想即興曲を弾く彼女の姿をテレビで見た時は信じられませんでした。指10本でも右手と左手を合わせるのが難しい難易度の高い曲です。
彼女は、この1曲を仕上げるためにどれだけの時間をかけたのでしょうか。
音大卒の私は、一日8時間以上ピアノに向かうことが普通だってことや、弾けない箇所があれば、たった2小節を何時間でも練習することが当たり前だということも知っています。
私はクラシックとは、人間の限界の境界に存在する音楽だと認識しています。指が10本あったとて、1曲を完全に仕上げるためには、それくらいの努力が必要なのです。
「体が弱いからピアノを習ってるの」なんてセリフを何かのマンガで読んだことがあるけど、ピアノはそんなにあまくない。1曲弾き終えた時には、肩で息をするほど体力を要する曲もあります。1音1音神経を注ぎ、張り詰めた中での作業になるのです。
身長1メートルの彼女のどこにそんな強さがあるのでしょう。
音大生の頃、とても小柄な私の友人が、
「この曲を弾くために、指の付け根を切る!」
と思いつめたように話したことがありました。彼女の手は小さすぎて、いくら指を伸ばしても1オクターブに届きませんでした。結局メスを入れることはありませんでしたが、目にいっぱい涙をためて、
「努力をして1オクターブ届くようになるのなら、私はどんな努力だってするよ」
そう言いながら、彼女なりの落としどころを探し、大きな夢をあきらめようともがく彼女と学生時代を一緒に過ごしました。
友人の中で一番の努力家だった彼女に、人の努力の限界を知った私にとって、イ・ヒアさんは衝撃の人です。
4本の指で夢を手に入れたイ・ヒアさん、ご家族、ピアノの教師に会ってみたいです。
<文責/泉 あい>
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コメント
イ・ヒアさんの姿、夢を与えてくれます。
星野富弘さん、乙武洋匡さんの努力、勇気づけられますね!ご本人の才能も有ることでしょうが そこまでの過程でのご家族、周囲の方々 その事実が存在したことも ひかりを与えてくれるような気がします。 もっと人々が輝いていけるのだ この世の中は!
投稿: 空海望 | 2006年1月12日 (木) 05時47分
あいさん、音大ピアノ科卒だったんだぁ。
そっちの方も驚きです。
先年、ステージから引退した名ピアニストのアリシア・デ・ラローチャも、オクターブ届くか届かないかくらいの手の大きさだったそうです。
投稿: ichiro | 2006年1月12日 (木) 10時12分
あいさん、ご無沙汰しています。
イ・ヒアさんがここまでなるのに、どれほどの努力をされたのでしょう?
諦めようと思ったことは?つらいと思ったことは?
ご家族は?
いろいろと興味が沸いてきました。
彼女のピアノも聴いてみたい。
夢は叶うものなのですね。
あいさんの夢も叶えて欲しいです。
投稿: ざっきー | 2006年1月12日 (木) 15時21分
夢をかなえるために行動できる地球上唯一の存在である
人の命の意味も尊厳もわからぬまま輝きが
簡単に奪われてしまうような中で
努力し夢をかなえる姿は崇高でさえあると言えるでしょう
こんな感動が世にあることがわかれば
浅薄な感情に流され犯罪を犯す人も減らないだろうか
そんなことを思いました
投稿: ☆まがり★ | 2006年1月12日 (木) 18時40分
いろいろご意見をいただきましてありがとうございます。
夢とは何か考えさせられます。
夢をみることさえ放棄している人がいることも知っていますし、いろいろな障害があっても、貫き通す人がいる。
今わかることは、夢をたったひとりでかなえることはできないんじゃないかなって。
PS:私は声楽を専攻しておりました。
投稿: ぁぃ | 2006年1月13日 (金) 14時24分