今年一年を振り返る〜「社会が作る子どもの傷」
福祉に関するテーマもいくつか取材をしました。
将来的に専門にしたいと考えているテーマなのですが、このテのエントリーのアクセス数はがっくりと下がります。
「私が伝えたいことと読者が知りたいと思っていることは違うんだなぁ」と実感するのですが、取材を終えてからもじわじわとご覧いただいているのは、福祉のエントリーだったりもします。
養護施設や里子に出される原因のひとつに虐待が挙げられますが、東京都福祉保険局が今年の12月に出した出した「児童虐待の実態Ⅱ」(PDF)には、「児童相談所の受理する児童虐待相談件数が増加を続けています。」とあります。
「平成14年度にはいったん減少しましたが、平成15年度には再び増加に転じ、平成16年度のは過去最高となりました。(中略)これは虐待に対する社会的認識が広がり、児童相談所に相談あるいは通告される事例の増えたことが大きな要因であると考えられます。」(P.5)
数年前までは、「虐待」という言葉はあまり使われていなかったという印象があります。
何でもかんでも「虐待だ」と大騒ぎをすることが良いことだとは思いませんが、社会が関心を持つことはとても大切だと思います。
同じ資料の中に「虐待を行った保護者と同居を『希望している』子どもの割合が増えました」というデータがあります。中学生年齢にいたっては、同居を希望している割合が拒否している割合の約2倍になり、前回調査(平成13年10月の『児童虐待の実態』)と逆転したとあります。
「その理由のひとつとして、虐待が早い段階で発見され、家族関係が悪化する前に対応できる事例が増加していることが考えられます。」
また意外だなと注目したのは、実父の6割が虐待を認めていないという点。(P.33)
「『行為は認めるがしつけと主張』して虐待を認めない割合が高くなっています。虐待に対する社会的意識が高まり、虐待の通告が増加している一方、虐待者が自らの行為を虐待と認められない状況に変化がなく、虐待者への対応が引き続き困難になっています。」
「虐待している」という意識を持たない人を虐待しないように変えるのは難しい。
この問題って、いろいろなことに当てはまるような気がします。
自分のことは自分が一番知ってるつもりでいても、実は見えてない。ましてや、毎日のように何かしらやらかしてくれる子どもといつも一緒にいるわけですから、自分を見失ってしまうこともあるかもしれません。
何をしつけと言い、どうすれば虐待になってしまうのか、はっきりと線を引くことはできないのかもしれませんが、現実に養護施設や乳児院での生活を余儀なくされる子どもたちがいるということは、しっかり頭に入れて、先ずは、そういう子どもを作らないために、養護施設の子どもについて知る必要があると考えています。
「施設に入れば毎日ごはんが食べられるから」
ボクサーの坂本博之さんは話してくれました。
「かわいそう」と言われ、多くの物やいろいろなイベントへ参加する機会が日常的に与えられても、本当の愛情が与えられていないことを子どもたちは知っていると取材を通して感じました。
別の養護施設を卒園なさった方の中には、「この人なら」と期待しては裏切られることを繰り返し、今では、
「社会とはこんなもの。もう誰も信じない。信じるから傷つくんだ」
と話してくれた人もいました。
「大人になる前から、子どもたちは夢をあきらめています」
と話してくれたボランティアは、何かの希望を持って子どもたちに接しているように見えました。
そんな若者に出会った時、私はこんな大人になるまで、社会の中で何をしてきたのだろうと立ち止まります。
今までは、気楽に「勝ち組」「負け組」という言葉が使われていることに何の疑問も持たなかった。でも、今は「負け組」という言葉を嫌悪しています。
「知らない」ということはある意味罪なことで、知らず知らずのうちに誰かを傷つけていることがあると知った瞬間です。
相手の立場に立つことがどういうことなのかを、私は福祉の取材を通して学んでいます。
<文責/泉 あい>
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コメント
こんばんは。泉さんらしいエントリーですね。福祉に関する関心の低さと「勝ち組・負け組み」という思考のベースにあるものは、おっしゃる通り共通するものがあると思います。(ハッキリとは書かれていないけど、そういうことですよね?)ついでに言えば、今夏の小泉大勝も。。あくまでも主観ですが、その辺の話題がきちんと可視化されていないという意味では、ブログもまだまだ(これから)なんでしょう、きっと。期待していますよ〜、泉さん。では良いお年を、来年もよろしくです。
投稿: katshi | 2005年12月31日 (土) 21時08分
あいさん、こんばんは∈^0^∋
あいさんと逢えたいい年でした。(*^.^*)エヘッ
今年はいろいろありがとうございました。
新年もよろしくお願いいたします。
あと数時間で今年も終わります。
よいお年をお迎え下さい。
くまさんことくまボンでした。ではでは(^.^)/~~~
投稿: くまさん | 2005年12月31日 (土) 21時41分
katshi さん
そうですね。「負け組」という言葉に傷つく人がいるんじゃないかということです。
ブログが来年どうなるのか楽しみですね。
こちらこそよろしくお願いします。
投稿: ぁぃ | 2005年12月31日 (土) 23時30分
くまさん
お久しぶりですね。
私もくまさんにお会いできてうれしかったです。
来年も仲良くしてくださいね♪
投稿: ぁぃ | 2005年12月31日 (土) 23時31分
私がこのブログにコメントをしたきっかけは、福祉のエントリーに引きつけたれたからです。
アクセス数だけでは、興味の深さは測れないのですから。
これからも楽しみにしています!
投稿: みか | 2006年1月 2日 (月) 15時07分
みかさん、ありがとうございます。
どうしても伝えたいことは、一時的にアクセス数が少なかったとしても取材します。
人気だけが記事の判断基準にならないのだということを日々のアクセスを示す数字から学んでいるっておもしろいですよね
投稿: ぁぃ | 2006年1月 4日 (水) 18時11分