スマイルウォークに参加して思うこと
コースへ出るまでの時間、年に1回ここでしか会えない人たちの元へ。
去年、ある協賛企業の方と、
「去年もお会いしましたよね。来年またここで会いましょう」
と約束したのですが彼女の姿はなく、人事異動でもあって、もうここでは会えないのかなとさみしい気分になりました。何でも、出産のために休暇を取っているとか。
(そう言えば結婚したばかりだって言ってたっけ)会えないけどまた違ったうれしさがこみ上げて来ます。
また来年会って直接「おめでとう」って言いたい。
NPO法人「J.POSH」の理事長・田中完児さん(写真)とは再会できました。
田中先生は、乳腺外科の医師でいらっしゃり、昨年のトークショーでは、ご自身のご家族にがんの患者さんがいらっしゃるそうで、「家族は第二の患者」というお話をなさっていました。
その話を聞いて、田中先生のように患者や患者の家族の気持ちが理解できる主治医なら有難いと思い、J.POSHのブースで思い切って声をかけてみたんです。
そしたらとても熱く語ってくださって、熱意のある先生だぁと私も力が入ったのでした。
今年の先生は「かんちゃん」とか「かん様」と呼ばれて、いい感じの脱力感で、より親しみやすかったです。
今年の田中先生との雑談は、
「せっかくの雨ですね。でも参加者は増えましたね」
という喜びの声からはじまったのですが、次の田中先生の言葉で、自分が浮き足立っていたことに気づかされました。
「でも、受診率に結びついてはいないんですよね」
ピンクリボンフェスティバルは年に一度のイベントで、私はスマイルウォークに参加するのを目標にしています。
このフェルティバルがどんどん注目を浴びるようになり、テレビの中でピンクリボンのブローチをつけた芸能人を見かけるとうれしい気分になって、意識が高まってきていると勝手に思っていたけど・・・。
スマイルウォークは、ただのイベントになってしまったのだろうか。乳がんを経験した人や家族に乳がんの患者がいるなど、乳がんと係わりのある人たちの間だけで盛り上がっているのだろうか。
田中先生とお別れして、なんだかモヤモヤしながら各企業のブースを回った後、スタート地点へ。
さっきまでかわいいドレスを着たキティちゃんがお見送りしていたはずなのに、私が行った時には、もう跡形もなく・・・。
でも、いろんな人に「いってらっしゃい」と笑顔で送り出されるのは、とてもいい気分なものです。
長い行列に紛れて歩きながら、田中先生と話したことを思い出します。
「乳がんの患者は年々増えています。2003年で22人に1人の割合で乳がんになっていますが、来年はきっと20人を割るでしょう。」
そんなに多くの女性がつらい想いをしているのかと思うと、地面にのめりこみたくなる。
「結局は他人事なんだろうね」
そうつぶやく一緒に参加した友人は、家族が乳がん患者だったこともあり、真剣にマンモグラフィを受けることについて考えている人です。
去年も一昨年も、おしゃべりと景色を堪能し、普段電車で移動する街中を歩くことを純粋に楽しみ、達成感を持ち帰りました。
でも、今年のスマイルウォークは、ちょっと違う。
「私たちはアピールするために歩いているのに、傘を差してたんじゃメッセージが見えないじゃん」
友人は少し怒ったように言い、断固として傘を開こうとはしないけど、私は前日から風邪をひいて発熱していたし、カメラは持っているしで、雨に濡れるわけにはいかない。
だけど、私は乳がんの早期発見を啓蒙するために歩いているんだよね?と自問自答してみる。
回りを見回すと、男性だけで歩いているグループがあり、声をかけてみると、会社の方針で参加したと言う。聞けば、協賛企業の社員の人たちだそうです。
会社に出ろと言われて出たとしても、何かしら感じることはあるのでしょうか、奥さまの話をしている声が少しだけ聞こえました。
「今日は休日扱いですか?出勤扱いですか?」
と意地悪な質問をしてみると、
「どうなんでしょう」
とお互いに笑い合った。
おばちゃんに囲まれると、だいたい仲間になって雑談しています。あの警戒心のなさはうらやましい。
人見知りの私もこういう場所でなら、知らない人同士でも気軽に雑談できる。やっぱり参加して良かったと思える一時です。
杖を突きながら歩く老人の姿もありますが、老人だからと言ってあなどれない。歩くの早い!!
家族連れが増え子供たちの姿も多く見かけました。
子供たちは、元気が有り余っているようで列が乱れてしまい、道行く人たち、どうか怒らないでとハラハラする場面もありました。
スマイルウォークに参加することで、家族で話し合う時間を持てれば大きな意味があると思います。
誰もが気軽に楽しく参加できるでなきゃいけないし、だからと言って一般の通行人へ迷惑をかけることになってはだめ。ちょっとしたジレンマです。
私が歩いた6キロコースは、六本木から青山の骨董通りを抜けて表参道、青山霊園と人通りの多い道です。
乳がんの早期発見をアピールするために歩くのだから、できるだけ多くの人に見てもらわないと意味がないのだけど、こんな集団がゾロゾロ歩いて迷惑かけてないかなと不安になったりもします。
私は何をしてるんだろう。何のために歩いてるんだろう。
友人とふたり、そんな疑問をごちゃごちゃと抱きながら、スマイルウォークと早期発見の意識と受診率について考えていました。
ふと友人が、
「ぁぃちゃん、スマイルウォークだから笑顔で歩かなきゃ」
と言い、「ぁぁそうだったな」と思う。友人に言われて、毎日毎日考えることばかりで、笑顔でいる自分を忘れていたような、女性としてだめじゃんって気分。
今年はブタに会うことも猿に会うこともなく(去年は会った)、去年「チャーシュー一切れどうですか?」と言ってくれたラーメン屋さんのドアは閉じられており、面白ハプニングはなくてちょっと残念。
でも、去年一度歩いたコースなのであっという間の6キロでした。
ゴール地点では、大勢の人が拍手で迎えてくれて、子供のように得意気にガッツポーズをしたりして。
トークショーで印象に残っている言葉をひとつだけ。
女優の香椎由宇さんが、
「乳がんってがんの中で唯一早期発見できるんですよね」
いつもきれいな島田菜穂子先生は、
「そうです。自己診断できるがんです」
田中完児先生が、
「しこりとして触診でわかるようになるまで、がんは進行しているということで、マンモグラフィなら触診でもわからないようなもっと小さいがんを見つけられる」
がんは早く見つけて治療をすれば、決してこわい病気ではないと、そろそろみんな気づいているはずですよね。
欧米の女性の80%はマンモグラフィを受けて、日本の女性は17%しか受けていない。
あなたが住んでる自治体では、乳がんの検診を行っていますか?
そしてあなたは検診を受けていますか?
子宮がんの検診を今年まだ受けていない私(1月に受診予定だった)にとって、今年は何だか考えさせられるスマイルウォークでした。
回を重ねてきて、スマイルウォークの意義についてもう少し考えた上で、来年また参加したいと思います。それまで、自分の体をいっぱい愛さなくっちゃ。
このエントリーのコメント欄へ、男性からの言葉もあればいいなぁと願います。
<文責/泉 あい>
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コメント
はじめまして。企業検診で乳ガンの検査も検査項目に入っていたのですが、医者に「いりませんよね」とパスされました。元ガン患者ですが相手がやりたくないのであれば是非にとは言えずまた仕事も詰まっていたので大人しく引き下がりました。若い女性なら絶対にパスしっこないし、また欧米の医者でもこういうことは考えられません。日本の男に対する評価がまた下がりました!歳をとるというのはこういう理不尽な扱いにも慣れることなんだと思いましたよ。
投稿: さなえ | 2005年10月12日 (水) 12時42分
さなえさん
はじめまして
ある企業では、義務だから形だけやっておけばいいという印象をあからさまに受けました
多くの人には、病気について考えるきっかけになり得る機会なわけですが、逆に考えさせないようにさせてるなぁって思いました
でもある企業では、会社をあげて健康に取り組んでいると思えるような検診内容でしたし、医師も相談に長い時間かけてくれました
大袈裟な言い方ですけど、会社の本性を見たって気がしますよね
>歳をとるというのはこういう理不尽な扱いにも慣れることなんだと思いましたよ。
思わず口がへの字になっちゃいましたよ
現実にあることですが、若い小娘にはないものを持っているもんねと自負していたりもします
(しわとかシミ以外のもので)
自分の年齢を誇れるような素敵な生き方をしたいですね
投稿: ぁぃ | 2005年10月14日 (金) 11時19分
私は10月2日の有楽町マリオンでのピンクリボンフェスティバルに参加しました。
今年の3月に乳がんの手術を受けたのですが、回を重ねているというピンクリボンのイベントでも、なんかちょっと違うなあ…という印象を受けました。
マンモグラフィはけして万能ではないと思っています。(もちろん、あったほうがいいけど)。胸のしこりがすこしでも気になる人が、気軽に乳腺専門医のもとに行けるようになったら…と思うのですが。そういう観点からすると、今年のピンクリボンのポスターの『ニッポンのオッパイがあぶない』という表現は、どうも本質を外している気がしてならないのです。
投稿: さかいひろこ | 2005年11月15日 (火) 13時17分
さかいひろこさん
日本の女性の受診率は、あまりにも低過ぎると思います
これは、女性だけの問題ではなく、男性にとっても恥ずかしいことだと感じて欲しいと心から思います
私の乳がんが見つかった時、元主人は姑に、
「普通はあなたが見つけるんでしょうが!」
と本気で叱られていました(もう家出した後なのに)
性生活で見つけられればラッキーなんでしょうけど、私が言いたいのはそういうことじゃなく、妻が検査するように促すのが夫の役目だと思う
>マンモグラフィはけして万能ではないと思っています。
同意見です
友人の母は、6度目の検査でようやく乳がんの末期だと診断されました
「異常なし」と言われても、ご本人が「何かおかしい」と思い続けて検査を受けて出た結果です
ピンクリボンは完璧ではないと思うけど、必要でもあると感じています
ようやくその存在が知られるようになった今こそ、その運動について考える時なのかもしれませんね
投稿: ぁぃ | 2005年11月15日 (火) 22時19分