« 民主党本部へご挨拶 | トップページ | 記者クラブの表と裏 【取材記26-6/報道番組制作の現場〜テレビ局ディレクターへのインタビュー »

2005年10月14日 (金)

記者クラブの表と裏 【取材記26-5/報道番組制作の現場〜制作会社ディレクターへのインタビュー

10月11日取材

テレビ局の社員ではなく、制作会社に所属している報道系番組のディレクター(以下Aさんとします)に、ねつ造・ヤラセの問題について話を聞いてきました。
一口にテレビと言っても、局の正社員だという人は少なく、制作会社の人たちが大勢いるそうです。
制作会社も、ひとつの番組を1本丸ごと請け負っている大きい会社から、十人位で動いているような小さな会社まであり、その制作会社の正社員でもなく派遣社員のように契約で働いている人もいる。
テレビ局という大きな建物の中で一緒に仕事をしていても、その雇用形態や待遇はひとりひとり全く違うのです。

局の社員と制作会社の違いを番組の種類で説明します。
私たちがよく見るニュース番組。朝・昼・夕方・夜とストレートニュースを流しているニュース番組は、報道局に配属されているテレビ局の社員である記者が、取材をしてネタを取ってきます。
記者クラブのメンバーになれるのは、テレビ局の社員である記者だけです。
ニュース番組の中でも内容を膨らませている特集は、テレビ局の社員の人と制作会社の人たちが一緒に作っているそうです。
そのようなニュース番組を現場では「ニュース」と呼び、それに対して報道番組や情報バラエティは「番組」と呼んで区別されているそうです。
制作会社の人は、ニュースの特集記事と番組を作ります。
Aさんが携わるのは「番組」で、制作会社に所属し配属先は局制作の番組で、局員と一緒にデスクを並べ、ほぼ対等に仕事をしていると言います。
しかしながら、システム上いくら努力をしても外注のスタッフは番組を仕切るようなトップのプロデューサーにはなれない。
しかも、40代後半になると、それまでどれだけ実績を積んだとしても、ギャラが高く自分より年上の人は使いにくいという理由で、仕事は減ってくるのが実情だとも言う。
テレビは華やかな世界だと思っていたけど、現実にエリートだと言われる局員はほんの一握りで、あとは激しい競争と厳しい雇用契約の上で働いている人たちというのが現実なのですね。

出世も望めないし発言力も弱いと言えども、Aさんにはしっかりとしたプライドがあると感じます。
報道局で記者の経験をした人たちが番組に流れてくることもあり、Aさんは、元々番組で仕事をしている人たちと報道から流れてきた人たちとでは、仕事に対する意識の違いを感じると言います。
「最初から番組にいる人は、どう人に見せるかとか、どう噛み砕こうとかということに心を費やすけど、記者さんっていうのは、どう見せるかって言うよりはネタを取ることの方が重視でしょ。」

インタビュー後の雑談でも、政治やジャーナリズムの話で盛り上がるほど、Aさんの問題意識はかなり高いと感じますが、元々ジャーナリストになりたかったわけではないと言います。
「ニュース番組をやっている人全てが、本当に世の中が良くなるためにはこういうことをもっと追究しなきゃいけないと思ってるなんて思ったら、それは全然間違いで。
たまたま自分が今この番組にいて、このネタを与えられたから、これについてはちょっと調べてやろうと。
私も別にジャーナリストになりたいと思っていたわけではないし、たまたま流れでニュース番組をやる機会があったこともあって、政治をやりたいと思ってやってるんですけど。
流れに任せていたらそうなったという感じで、こんなことを言ったらちょっと回りの人に怒られるかもしれないけど、私はそんな中でもちゃんとニュースに興味を持っていると言うか、世の中こうなった方がいいと思ってやってる方だと思うわけですよ。
みんなじゃないけど、そうでない人は多いと思う」
またAさんは、こうも言っています。
「今ニュース番組をやっているADとかディレクターの人が、本当にニュースをやりたくてテレビの業界に入ったかどうかっていうのが、はっきりわかる人はあまりいない。
謙虚で言わないのかもしれないけど、本当にドキュメンタリがやりたいのか、それとも本当はバラエティがやりたいけど、会社に入ったらニュースへ行けって言われたからそういうところに行っているのか。ちょっとわからない。
ADなんかは、『僕はジャーナリスティックなことがやりたくて』っていう感じの子は少ない」

ねつ造・ヤラセの問題について考えた時、テレビでは記者以外の人も取材をしていて、バラエティ色の強い報道番組もある中、記者以外のスタッフの心にどれだけジャーナリストとしての意識が根付いているのだろうと考えます。
Aさんの話からも、実際に自分がジャーナリストだという意識を持って番組を作っている人は少ないように感じます。
「ねつ造・ヤラセに対する具体的な再発防止策は?」という質問に対して、ほとんどの社が「社員の心に働きかける研修を行います」と答えましたが、現実にはジャーナリスト意識を持っている人は少ない中で、研修は活きているのでしょうか。

局の社員ではない外注スタッフのAさんも研修に参加していて、実際にどんな研修が行われているのか話してくれました。
「例えば、報道の結構ベテランの人が来てお話をしたりとか、問題があった番組のビデオを見せて、『どこが問題だと思います?』って話をしたりとか。
制作現場だけじゃなくて、他の部署からも何人か来た会があって、それでグループを作ってそれぞれディスカッションしたりということが1回あった。」
でも、今までの取材の中で(Aさん以外の)テレビ関係者からは、社員以外が研修に参加できるなんてことは有り得ないと聞いているので、テレビ関係者の全てが研修を受けていると認識するのは正しくないのかもしれません。
それでも、Aさんが常駐している局では上に挙げたような例は一部で、実際には頻繁に研修が行われており、会社としてねつ造・ヤラセの問題を真剣に考えているという社の方針がスタッフに伝わるということでは、効果的だと言う。
果たしてそれが根本的な防止対策になっているのでしょうか。まだ素直には納得できません。

納得できないのは、私がこのHPをはじめる前、派遣スタッフとして一般企業で働いていたという経歴を持っているからで、どうしても弱い立場からの目線になってしまうということは否めません。
でも、あえて・・・。
芸能人を相手に仕事をするテレビ局という華やかな世界で、自分より待遇の良いテレビ局や大きな制作会社の社員と一緒にひとつの番組を作る派遣やフリーのスタッフ。
彼らは、実績を積んでも番組1本を任されることは稀で、むしろ経験を積んでギャラの高い高年齢の人ほど煙たがられる。
仕事を確保するためには、アピールしなくてはならなくて、「もっとこうだったら面白いよなぁ。誰も困らないし・・・」って思うことがあってもおかしくないと想像してしまいます。ましてや、回りは高収入の人ばかりですし、苛立つこともあるでしょう。
そのような鬱憤が蓄積して立場の弱いスタッフが自らを追い込んでしまった時、研修はねつ造・ヤラセを阻止するだけの効力があるのでしょうか。

誰もがねつ造もヤラセもやっちゃいけないと思っているのに、現実には起こしてしまう。
主要メディア各社からの回答の中に、なぜ起きてしまうのかを考えているというものはありません。
私がAさんの話から注目した雇用形態の違いによる待遇面の格差は、テレビ局にとっては大きな問題ではないのかもしれません。
でも、フジテレビのめざましテレビの件で契約を解除されたのは、フリーのディレクター。彼が、ヤラセをしたことは悪い。だけど、どのような気持ちだったのかを想像しながら、とかげのしっぽ切りで問題を終結させただけじゃなかろうか、問題は根本から解決されたのだろうかと、雇用形態について考えています。この点は今後のインタビューで聞く必要があると感じています

    【インタビュー内容 】

  • 雇用形態の格差

    泉 :新聞では現場にいるのは記者だとわかりやすいのですが、テレビには記者がいてAD、ディレクター、プロデューサーとどういう構成になっているのかわかりにくいのですが。

    A  :そうですね。人によってはプロデューサーとディレクターの違いもわからない人がいるでしょうね。

    泉 :では、プロデューサーとディレクターの違いから教えてください。

    A  :私がちゃんとわかっているかどうか・・・。私は制作会社に所属をしていますが、制作会社にもいろいろあるんですよ。完全パケってわかります?

    泉 :完全パッケージですよね。ひとつの番組を完成させたものですよね。

    A  :番組1本請け負うことができるような制作会社と、ほぼ人材派遣に近い制作会社があって、例えば情報系の番組ってのは人を派遣していることが多いんですよね。
    中の一部分の特集企画とかは、完全パケで外注することもあるみたいなんですけど、そういうのがない番組では、テレビ局員も外注のスタッフもみんながテレビ局の中に入って常駐で仕事をしています。
    ゴールデンタイムの時間帯の番組を完全パケで受けるような制作会社だと、テレビ局ではなく自分の会社の中に常駐して、その会社の人たちだけで作るんです。だからその中にプロデューサーがいて、テレビ局のプロデューサーも別にいて、会議で内容を報告して局の方が「うん」と言えば、後は自分たちで全部やっちゃうんです。

    泉 :完パケで制作会社に任されていても、局のプロデューサーの方が、制作会社のプロデューサーより立場は上?

    A  :そりゃそうですよね。外注の場合は、これだけお金がもらえるって決まっていてポンと制作費を渡されちゃうわけだから、裁量権はそこの制作会社のプロデューサーにあるわけですよね。だから、プロデューサーは、お金のことからキャスティングのことから、全て見ることができるわけですよ。
    ただ、局制作の番組で、制作会社の人が中に入ってやるような番組なら、ほぼ局の人しかプロデューサーになれない。
    と言うか、プロデューサーもいろいろで、制作プロデューサーというのがあって、その下に普通のプロデューサーがいる。
    最終的にお金のことまで全部見るプロデューサーのトップがいて、その下にその他番組の内容とかを見るP(プロデューサー)もいて、それでまたチーフディレクターみたいのもいたりするわけで。
    基本的にプロデューサーは、お金のことまで見る人なんですけど、そこのヒエラルキーの中にはなかなか社員じゃない人は入れない。
    例えば、毎日やっている番組だと月曜日の集団、火曜日の集団、水曜日の集団というように、だいたいグループでやってるわけですよ。だから、それぞれのトップが必要だから、私もよくは知らないけど、確か曜日Pというのがいるはずです。
    制作会社や子会社みたいなものに、例えば「火曜日は任せまーす」と任せている場合は、その曜日Pは制作会社の人がやっている場合もあったらしいんです、ただ全体をまとめるトップのPというのは局の人しかいないんです。
    だから、これは私が勝手に思っているだけなのかもしれないけど、番組ひとつ全体を仕切りたいって誰しも思うじゃないですか。そう思うのなら、派遣会社のような小さいところに所属してたんじゃだめなんです。
    完パケを受けるような大きい制作会社とかなら、1本企画を出してそれができればPになることは可能。
    やっぱり、ゴールデンをやっている様な会社の方がギャラもいいと思うんですよね。
    フリーでやっているとしても、ゴールデンの番組をやった方がギャラはいい。
    多分誰も口にはしないけど、テレビの世界の中で序列みたいなものを意識するとしたら、小さい制作会社や派遣のような形で仕事をしている人たちっていうのは、非常に低いところにいると思う。
    ギャラもまーまー普通だし、Pになることは難しいし、番組1本仕切ったり、自分が企画を出して自分の意志でやるというのはなかなか難しいから・・・。
    多分、非常にサラリーマン的にやっている人が多いと思う。これは私の勝手な見方で「そうじゃない」って言われるかもしれないけれど、何となく思うに、クリエイティブな感じかなと言われるとちょっと首をひねるようなところもあるかなぁと。
    それはギャラの問題であるとか、そういう立場の問題、Pになかなかなれない。そりゃ例外もあるのかもしれないけど。

    泉 :テレビ局の社員と外注のスタッフでは、いろいろな面で差があると聞いています。

    A  :それは多分ギャラの問題だと思う。(ちょっとだけ苦笑い)同じことをやってても給料は半分だと思ったらいいと思う。

    泉 :一般の人にとっては、メディアで働く人は高給取りだというイメージを持ってる人もいるかと思うんですけど。

    A  :そんなことないない。わかんないけど、人にもよると思うんですよね。

    泉 :実績とか?

    A  :うん、スクープを取ってきたりする人っていうのは、いいギャラをもらえるんだろうし。
    それにね、ひとつの番組の中に派遣されていろいろな人が来てるけど、それぞれの会社の中でもいろいろあって、結構大手のしっかりした会社もあれば、本当にちっちゃぁーい数十人とか十人ぐらいでやってるようなところもあるわけですよね。
    それで、契約の仕方もそれぞれ違うわけです。

    泉 :ひとつの番組を作るのに、制作会社ってどのくらい入っているものなのですか?

    A  :どうだろう・・・4つ、5つは入ってるかな。3つとか4つとか。

  • ディレクターも取材する
    泉 :ニュースソースを持ってくるのはテレビ局の社員である記者だと聞いていますが、毎日放送されるニュースは局の人だけで作られているんですか?

    A  :間違っているところがあるかもしれないですけど、基本的にニュースに関しては取材に行くのは記者なんですね。それで朝と昼と夕方に流される基本的なストレートニュースは取材部が取材して来たものをやってますよね。
    夕方なんかはすごく膨らませてあるでしょ。ああいうものは外注スタッフがいて、特集分だけを別に作ったりとか、取材部が取材してきた映像を元にして膨らませたりとか、追加取材をして作るんですよね。

    泉 :ディレクターさんでも取材するんですね?

    A  :しますよ。しますします。

    泉 :ディレクターさんのお仕事というのは、仕切ったりとか企画を立てたりなどかなと思っていたのですが、取材もするんですか。

    A  :ニュースの場合だと先に報道の記者が取材してきます。記者クラブで今週はだいたいこんな予定があるということがわかりますよね。そういう予定を元に今日はこれをやろうというのを会議でやってみんなで決めます。
    ネタを決めたらそれぞれ担当を決めて、それをどういう風に作るかっていう構成や取材のポイントを。
    それは新聞や雑誌も一緒でしょうけど、どこで何を取材したら面白いかとか、何を聞いたら面白いかとか考えて構成を立てて・・・。

    泉 :新聞で言うデスクみたいですね。

    A  :うーん、どうだろう、記者と一緒じゃないですか。構成と言ったのは、取材部が取材して来た素材っていうのがあるわけじゃないですか。それをどう組み合わせるか、どれを取るかという取捨選択をするわけですよね。
    北朝鮮や国会のこととかいっぱいある中で、どれを取捨選択してどう並べて、何を強調するかっていうようなことを考えて、プラスアルファ取材に行くとしたらどこに行って何を取ってくるか、カメラマンと一緒に行って撮影してきます。
    それを実際、ナレーションに書いて台本書いて。

    泉 :ナレーションもディレクターが書くんだ。

    A  :書くんです。まぁ、それは記者と一緒ですよね。名前が違うだけで記者もディレクターも基本的には一緒で、ただ記者クラブなどへ入れるか入れないかとか、例えば政治の話だと、政治家とのコンタクトが取りやすいかどうか。それぐらいの違いでやることは一緒なんですよ。

  • 局の記者と外注のディレクター
    泉 :局の記者たちは、一流大学を出たエリートで、それに対して外注のスタッフは記者クラブにも入れない。それは取材をするのにフェアではない?

    A  :そりゃあフェアではないでしょうね。うん、記者クラブを通さなきゃいけないって言うんで、本当は自分で直接聞けば早いんだけど、一回クラブに連絡をしてからやらなきゃいけないから、それはフェアじゃないですよね。

    泉 :一つの番組を一緒に作っているのだから、記者に融通をきかせてもらえるのですか?それともはっきりと分かれて取材するんですか?

    A  :これね、番組によってかなり違ったりするんじゃないかな。あーでもね、クラブにも寄るのかな。警視庁とか絶対行けないでしょうし(きっぱり)、多分。平河クラブなんかも難しいんじゃないかな。わかんないけど。
    でも、「今日はもう一人行きます」と連絡しといてもらって、記者会見に出たこともありますし。
    でもね、記者会見で結構ズバズバ聞いたら、「あんまり言わないでくれ」って報道の方へどこかの新聞社から言われたって。

    泉 :何だか微妙な立場ですね。テレビ局の中で働いているけど、記者クラブに入れなかったりとか。

    A  :だからスキルだけの職人みたいなもんなんでしょうね。

    泉 :すごい実力社会だなって思います。

    A  :んーでもあんまりこんな風に思うと、新しいことをやろうという気持ちがなくなるので良くないと思うんですけどね。
    例えば政治家の取材とか、報道とは関係のないバラエティとか、全然部署が違うわけですけど、そっちからアプローチした方が自由にやれるんじゃないかと思うことはありますよ。
    爆笑問題とかが今TBSの「サンデージャポン」とかやってますけど、すごい鋭い質問をボーンとできるんじゃないかと思うことは非常にありますね。
    ただ問題があった時に、出演する側は局のせいにするわけですよ。(注:これは爆笑問題のことを言ってているのではなく、一般的にテレビ出演する政治家のことを指す)
    何もなければいいんです。利用できれば政治部もバラエティも関係ないんだけど、問題があった時に多分、一括りにして言われるんですよ。

    泉 :ニュース番組でストレートニュースは局がやって、膨らんだ部分の特集は外注のスタッフがやるっていうことでしたけど、ニュース番組じゃなく報道番組にも記者はいるんですか?

    A  :いないいないいない。

    泉 :でも局の人はいるんですよね。

    A  :うん、ただね、局員の中でも記者とそうじゃない人がいる。

    泉 :新聞で言う遊軍みたいなもんですか?

    A  :遊軍って言うかねぇ・・・。
    報道局の中でもいろいろ分かれてるんですよね。私も今の局に常駐して何年か経ちましたけど、局の人とはうちらの番組の中でしか交流ないから。
    言い方の問題なんですけど、ニュースを放送するために取材している記者は、政治部とか社会部とか経済部とかにいて、ニュース以外の番組などは「番組」って言うんです。
    その番組の中には、元社会部にいたり経済部にいたりいろんな部にいた人で、今は番組。ニュースはニュースなんですよ。
    何かね、私もよくわからないけど内勤と外勤っていうのがあるらしくて、内勤の人っていうのは編集だけしてる。
    例えば記者が取材して作ったものでも、次のニュースは時間が短いので尺をちょっと縮めなきゃいけないって時には、その内勤の人が縮めるんじゃないかなぁ。

    泉 :では、報道番組みたいに局の社員と外注の人が混ざって仕事をする時、それぞれの立場はどういう感じなんですか?

    A  :一緒にやってる。

    泉 :対等に?

    A  :机も並べてみんな対等に一緒にやってるんですが、ただプロデューサーとかデスクとかには、最近は外注の人はならない。
    外注の人がチーフディレクターとかをやっていた時期もあったらしいんですよ。でも、今は・・・。て言うか全部の番組がそうかどうかはわからない。
    トップのプロデューサーには絶対なれないですよ。ディレクターはいっぱいいて、ほぼ対等にやっている感じですよね。

  • ワイドショーがなくなってきた
    泉 :報道番組よりちょっとくだけた感じの情報バラエティってありますよね。ああいう番組も同じような感じ?

    A  :だと思うんですけどね。報道番組も以前は「報道局」じゃなくて、いわゆるワイドショーとかをやってる「社情」だったんですよ。社情というのは「社会情報部」
    社会情報部っていう名前をどこの局でも使わなくなってきたんですよ。

    泉 :なんでだろ。

    A  :なんでだろ。
    わかんないけど、ワイドショーのイメージが悪いからでしょうね。昔はよく社情社情って言ってたんだけど、あんまりそういう言い方をしなくなって、社情というのが名前の上では消えて行っちゃった感じ。

    泉 :じゃ社情の時と内部も変わってきているんですね。

    A  :それは、部署が変わったということではなくて、番組自体がどんどんそっちがいいとシフトして行ったからというのもあるんでしょうけど、そうなるにつれて、社員で元々社情にいた人はいなくなって、今はみんな報道経験者ばっかりだと思うんですけどね。

    泉 :報道番組ではなくて、くだけた情報番組で放送される情報の多くは、あまり信憑性がないと言う人もいるようですが。

    A  :元々報道局じゃなかった人も含めてみんなで、視聴率とかウケ狙いをしてないつもりでやってますからね。いわゆる視聴者がニュース番組だと思っているものを見ながら突っ込みいれてたくらいだから。
    「なんでこんなのやるの?意味ないじゃん」って言ってたくらいだから、そこら辺は結構きちっとやってると思うんですけど・・・どうなんですかね、よそはわかんないからなぁ。

    泉 :健康の情報番組とか、「本当にこれ食べてりゃ効くのかよ」って私も思ったりします。(笑)

    A  :あれは嘘じゃないけど、そこだけ取り上げても、ちゃんと考えれば意味がないっていう。害はないけど、本当は効きはしないっていう気が。(二人で笑)
    だから、あんまり毒にも薬にもならないからやってるんだろうなぁって感じ。
    テレビってそういうところがあって、流石に害を及ぼすとまずいけど、害にならないんだったら面白ければいいみたいなところはあるかもしれないですけど。でも、嘘は・・・。

  • テレビの人はインターネットをどう見ているか
    泉 :テレビは新聞や雑誌と違って一過性のものですけど、現場の人にそういう意識はありますか?

    A  :テレビは一瞬だと言っても活字メディアよりも影響力が大きいじゃないですか。今って、ネットを使って録音しながら見てたりするでしょ。それでコピーペーストして2ちゃんねるに貼り付けちゃったりするから。
    前よりそこら辺は気をつけなくちゃいけないと思って、言葉とかすごい慎重ですよ。
    だから一過性だからいいやって思って作ってはいないと思う。番組にもよるとい思いますけどすごい慎重ですよ。作る方はそれでがんじがらめで動けないっていうくらい。

    泉 :テレビ局の中の人は、インターネット上での批判を気にしているんですか?

    A  :んー。ネットに詳しい人っていうのがテレビには少ないんじゃないかという気がしますけどね。
    だって、自民党のブロガー呼んだ懇談会についても、いっぱいテレビカメラが取材に行ってたわけでしょ?ね?カメラがいっぱい来てた割にはニュースでそんなにやってないでしょ。
    だから、あんまりニューバリューを感じてないわけですよ。テレビの世界では多分、後から言われて「へぇ」って思うぐらいの認識なんですよね、ブログとかネットって。

    泉 :私も以前テレビ関係の方とお話した時に、はっきりと言葉では表現しないけど、この人はメディアの中でテレビが絶対的な存在なんだと思っていると感じたんですよね。

    A  :それはどういう意味でかわかんないけど、影響力があるのはテレビが一番ですよね。その分批判もめちゃめちゃ大きいし。

    泉 :私はネットの世界にいて、マスコミ批判もよく見ていますが、取材で記者個人とお話するようになってから、マスコミ批判は現実よりも過熱しているという印象を持っているんです。
    それは、マスコミの内部があまり見えてこないので、ネットはネットで勝手にやってるのかなという気がするんです。だから、マスコミ内部の状況を少しでも明かせればいいなあと思って取材をしているんですけど。

    A  :私はまた立場が違うけど、出てくると返ってまずいんじゃないかな。もっと批判されちゃうと思う。みんながまだ夢を抱ける方がいいと。
    情報しかないから、一般の人は知らないでしょ。
    ネットを見ている人って、ちょっと噂の真相的なものを見たりとか。今だったら「きっこの日記」とかを見てる人たちだけが批判してる感じでしょ。
    自分たちの親とかみたいにネットを全く見ない人たちは全然知らないし。
    (小声で)今回の選挙で小泉さんに入れた人たちって微妙だなぁ・・・。

    泉 :私の回りでもその話よく出ますけど、自民党に投票した人って少ないんですよ。でもふたを開けてみたら、圧倒的に自民党に入れてる人だらけなんですよね。

    A  :(小声で)ちょっと考えている人っていうのは入れてないんですよ。

  • 報道局と番組担当
    泉 :ヤラセがあったという「めざましテレビ」のような情報バラエティと・・・。

    A :確かめざましテレビも報道局ですよね。報道局ってどう言ったらいいのか、システムが局によって違うし私もよくわからないんだけど、取材に出る社会部とか政治部とかが記者クラブに入れるし、記者になってどんどん出ていける所謂報道記者みたいな本当のメインストリームじゃないですかね。
    その他番組に仕上げる人たちがいて、ちょっと報道色の薄いものには外注の人も入ってくるっていう感じだから、やっぱり報道局員の中には、「もういいや」って言う人は別ですけど、社会部とか政治部とか経済部とかにいたいけど、飛ばされたって人は多いみたいですよ、番組には。
    そっちの方が好きな人も中にはいますけどね。
    だから、報道局から番組に来た人と、最初から番組にいた人とは意識が全く違う。最初から番組にいる人は、どう人に見せるかとか、どう噛み砕こうとかということに心を費やすけど、記者さんっていうのは、どう見せるかって言うよりはネタを取ることの方が重視でしょ。
    多分視聴者にとっては、同じニュース番組やバラエティ番組でしかないのかもしれないけど、作ってる方としては全然・・・。
    見せ方とか考えている人は記者の中では少ないですよね。新聞と一緒ですよね。
    私としてはそこら辺で違うというところを見せなければいけないので、同じニュースを見せるにしても編集を丁寧にやるわけですよ。時間がある場合ですけどね。せっかく絵があっても、ニュースなんて急いでしなきゃいけないから、結構適当なんですよ。
    それをちゃんときちんと一番効果があるように作り直す。
    でも、取材の先端にいる方がジャーナリストチックでしょ?そういうところから外されたっていう想いをしている人も、番組の中ではいるみたいですよ。

    泉 :でも、番組の方がニュースよりじっくり伝えられるわけでしょ?

    A  :そうそう、だから本当にその人の嗜好性の問題で、そういう人もいるし。

    泉 :じゃあどっちがジャーナリスティックな番組を作ってるかていうことはずごく難しいですね。それは受け取り側の判断なんですかね。

    A  :そう。番組は時間があるから、考える時間がある分ちゃんとやれるっていうこともあるし。
    ただ、毎日毎日ニュースを取って来てても、その中で長期取材をしてまとめて出せるようなものも中にはあったりとか、ドキュメンタリっぽいものも中にはあるわけじゃないですか。
    地方局も含めてゆっくりじっくり取材してやりますよね。ミニドキュメンタリのようなものは、ほぼ系列局の記者がやるんですけど、たまに外注の人が企画を持っていって通ればやったりすることもあります。
    だから、私の様に制作会社に所属していても、企画を出して通れば可能かもしれない、やろうとしないだけで。
    結構売り込みに行っている人いますよね。

  • VTRをどうつなぐか
    泉 :自分たちの都合のいいように編集してるじゃないかってことがよく言われますけど、当事者としての言い分ってありますか?

    A  :あんまり自分たちの都合のいいってところがよくわからない。

    泉 :視聴者が疑心暗鬼になり過ぎているってこともありますか?

    A  :一個一個のVTRについてじゃないと答えられないと言うか、例えばニュースを見ていて、自分はそのニュースの元の素材を見ていたとしますよね。
    例えば、元々は10分間のイラクの映像素材だとして、それを自分は10分間見てると。でもニュースでは1分半しか流せないから編集するでしょ。
    人が編集したのを見て「なんであそこを使うわけ?」って思うことはあります。ただ、その人が何を考えてそうしたのかって言うのはわからないですよね。
    その人がなんでそうしたか、ミスでやったのか意図的にやったのかっていうのはわからないことで・・・。

    泉 :放送が終わってから反省会はないんですか?

    A  :反省会はしますよ。

    泉 :あそこじゃなくてこっちを映した方が良かったんじゃないとか・・・。

    A :ただね、素材ってその担当者しかほとんど見てないじゃないですか。
    例えば北朝鮮のニュースをあっちでやったりこっちでやったりっていうことありますよね。他の番組ではそこの担当者が多分見てるんでしょうけど、その人はこっちの反省会にはいないし。番組越境しての反省会っていうのはないから。
    多分、デスク会みたいのがあって、問題があった時は「この前この番組でこういうことがありましたけど、こういうことは気をつけましょう」みたいな話が、各番組のデスクが集まってね。

    泉 :デスクっているんですか?

    A  :正式に番組が終わった時ロールで「デスク」と名前が載る人はいないんだけど、一応制作PとPの下に局員で、ディレクターの元締めみたいな人が一人いて。
    例えば、地方局から映像が上がってきた時に「その映像もっとたくさんありませんか?くださーい」とか、例えば政治部に「あの資料ください」とかっていう、いわゆる記者さんたちとの連絡を取ってくれるような立場の人が一応便宜上いるわけですよ。
    そういう人がデスク会っていうのに出て、いろんなことを聞いて。
    プロデューサー会議みたいなものも多分ある。
    番組の最初のネタ会の時に事務連絡みたいな役目をして「こういう注意がありました」みたいな報告があるんです。

  • 視聴者との接点
    泉 :現場では視聴者からのクレームをどんな感じで受け止めるているんですか?

    A :視聴者からのクレームっていうのは、基本的に番組の最中に電話を受けてるんですよ。でも電話をかけて来る人って

    泉 :いつも決まった人?

    A  :変わった人が多くて、同じ人が何度もかけてきたりとか、本当に訳わかんないこと言う人がほとんどで、「そう言われればそうだな」と思うようなことを言う人がたまーにいるくらいなんですよね。
    だから私も2時間くらい話を聞かされたりね。まぁ、何となく流して聞いてるんですけど。
    一応、番組が終わってから出演者やキャスターが集まって反省会をやっているところに、その時間までの今日あった電話っていうのをデスクの人がメモって、「今日はこういうのがありました」っていうのは報告して聞いてはいるみたいですよ。
    あとは、視聴者からの意見っていうのはね、あんまり直接的には電話ぐらいしか来ないから・・・メールとかもあるけど。
    HPももっと更新した方がいいかななんて言ってるんだけど、なかなかそっちにまで手が回らなくて。
    そこに人をひとり立てないと、残るもんだからチェックしなきゃいけないでしょ。そこまで手が回らないんですよ。
    視聴者との接点っていうのは少ないって言えば少ないですよね。まともな視聴者との接点と言うか。
    聞いてないという風に思われるのかもしれないけど、視聴者との接点って、自分の身の回りの人になるんですよ。この前見てどうだったとか。

    泉 :じゃああまり視聴者の声を聞く機会ってないんですね。

    A  :そう、電話ぐらい。あと2ちゃん・・・でも2ちゃんって中傷みたいのが多いからね。

    泉 :中には「おっ!」っていうのがあるでしょ。

    A  :あるけどねぇ・・・。私は2ちゃんを見る方なんだけど、普通スタッフは全然見てない。あまりにもあまりにもなので。
    だからテレビの人にとってネットメディアっていうのは、非常に異世界というか異次元というか、なんかそんな感じで思っている人が多いと思う。

    泉 :誹謗中傷の方が多い世界であるっていうイメージの方が大きいんですかね。

    A  :それは・・・大きいんじゃないですかね。2ちゃんってニュース速報のところを見ると、各ニュースがリストになってるでしょ?それでヤフーとか新聞からのニュースを引っ張ってあるじゃないですか。だから2ちゃんを開くと、訳のわかんない細かいニュースまでババババババっと出てきて、その中に見出しで面白いなって思うのがあると、それの元のソースに行けるわけですよ。
    そういうのがあって私もよく見てたんですけど。
    私が2ちゃん見てるって言うと、既に偏見があるから(笑)「そんなの」とか言われるわけ。「そういうことじゃなくって」って言うんだけど。
    例えば殺人事件なんかあっても、2ちゃんてみんなすごっ、暇なのかどうだかわかんないけど、すごいデータ集めて来て貼り付けてあるでしょ。
    で、裏取りは後でしなきゃいけないんだけど、一応それってとりあえず参考になるわけですよ。うん、だからそういうのでよく開いてたんだけど、もうあんまりね。
    みんなね、2ちゃんねるは信頼してないから、見もしない人が多い。

  • ミスかねつ造か
    泉 :今裏取りの話が出たんですけど、取材対象者が必ずしも真実を語らないことがあるでしょ。例えば、記憶が曖昧だったとか表現を誇張したとか、それをねつ造と取るのかどうなのかってこともありますけど、その情報の裏を取らないのは・・・。

    A  :取材者としてどうかっていうことですよね。

    泉 :いちいち全ての裏を取るのかって言うと、時間も限られているしすごく難しいと思うんですけど・・・一般の人に話を聞く取材ってすごく多いと思うんですけど、実際裏はどういう風に取ってるんですか?取ってるものなんですか?

    A  :取材にもよりますよね。よく事件があって近所の人に聞きに行くでしょ。そういうのに関しては、どうだろう、聞いたら聞きっぱなしですよね。
    それか、なるべくたくさん聞いて、直感でこの人の言っていることに信憑性があるかどうか、怪しいかどうか、使わない方がいいかどうかっていう辺りは、その人の・・・うーん裏って言ってもね。

    泉 :私の場合は、1時間とかそれ以上とか長い時間向き合って話を聞くので、その人が嘘を言っているとは基本的には思えないんですよね。
    だから自分でも知らないうちにねつ造とかしちゃってるのかもってすごくこわいですけど。

    A  :でもそれってねつ造じゃなくて取材のミス・・・。なんでねつ造って言い方になるんですかね。それはただ単に取材ミスっていう言い方にならないですかね。
    それってもしかしたら書く側がねつ造事件にしたいというのもあるんじゃないかな、わかんないけどそれは。
    よくドキュメンタリの手法で、打ち合わせのカメラを回してない時に「こういうのをやるんですよ」っていう話からいろいろ会話をして、回ってない時に言ったことを「今撮れていなかったのでもう一回言ってください」とかね。
    そういうのは全然ある話じゃないですか。その人が言ったことをもう一回言ってもらうのは当然の話で、それまでをだめって言われたらね。
    最近厳しくなってきたのは、例えば国会で誰か答弁してますよね。その時の表情。
    要するにカメラで撮った後に、タイムコードが入っているので何時何分とかわかるんですよ。ちゃんとそれを言っている時の表情を入れるようにする。違うところから持ってきて間にインサートするのは、ちょっと考えた方がいいなという風になってきていると思う。
    以前は平気でやってたと思うんですけど。
    よくね、国会じゃなくてお笑いでも、ダウンタウンのまっちゃんが「俺こんなとこで笑ってないよ」ってよくテレビで文句言ってたんですよ。「編集されて、面白くないと思っているところで笑っているから止めてくれ」とかね。
    それと一緒で、小泉さんがしゃべっている時に、誰かが難しい表情をしているのを入れて「あそこ本当は笑ってたんだよ」って言われたたら、それは作ったことになるわけでしょ。
    だから前よりはみんな気をつけるようになってる。

    泉 :ねつ造やヤラセをしたくないけど、現場の人たちが追い込まれて止むを得ずしてしまうということがあるんじゃないかと勝手に私が想像してるんですけど。
    上司との人間関係で例えば「それはインパクトがないね」と言われちゃうと、ついやってしまうこともあるのかなと思うんですけど、実際に上司から圧力をかけられたりっていうことはあるんですか?

    A  :どうだろう、私は運が良かったのかそういう人に出会ったことはなかったですね。
    今なんて逆に、本当にそういう「無理やりとかしないでくれ」って言われるくらいで。
    無理やりネタとかをテレビで見て、みんなで「何これ」って突っ込みを入れてるぐらいだから。
    だからあんまりそういう状況に接したことがないんで、無責任に「そうかもしれないですね」とは言えないと言うか。

    泉 :じゃあ、あんまりプレッシャーはかけられてないんですね。

    A  :ダメなものはダメ。これ以上取材できないものは、取材できないっていう理由がきちっとあれば。
    例えば、イラクとか北朝鮮の取材なんかは自分たちで行けないので、無理だと言いやすいですよね。コンタクト取れない人たちばっかりだから。
    いわゆる社会部的なネタって少ないてこともあるかもしれない。ブッシュの話とかが多いんで。
    夕方のニュースは奥様向けにしなきゃいけないって感じで、芸能ネタからちょっとやわらかいネタとか、いろんなものをやるでしょ。だから、そっちの人の方が大変な想いをしてるんじゃないですかね。

  • 年齢による危機感
    泉 :テレビ局って建物が大きくて、人がいっぱいいますけど、案外狭い世界の中で仕事してるって感じですね。あまり他の番組の人と交流を持たずにっていう感じなんですね。

    A  :知ってたりする人はいるんですよ。思ったより世界が狭いって言うか、制作会社はたくさんあるけど、たくさんあるって言っても何十とか何百とか。そしたら、だいたいジャンルによって、ここはバラエティをやる会社、ここはニュース系をやる会社とかって何となくあるようなので、はっきりとは私もわかんないけど。
    そういう中で、番組改編の時期なんかで番組が終わると、仕事がなくなっちゃうのでどこかに行かなきゃならないわけですよ。そうすると売り込みがはじまって、別にひとつの局にずっといるわけじゃないし、夕方の番組から昼の番組へ行くとかバラバラになる。
    だから、情報系のものが入った番組というと、今は夕方のニュースも情報番組みたいなものですから、それも含めた中でいくつかの人たちがグルグル回っている状態なんですよね。
    「この前あそこにいましたよね」とか、結構狭い世界なんです。

    泉 :制作会社も大きいところから小さいところまでいっぱいあって、ものすごい競争の世界だって聞いてるんですけど、そういう実感がありますか?

    A  :ない・・・。会社同士の競争も激しいと思うんですけど、私は最初から全部外から見るようにしてるんです。これもどうかと思うけど一歩足を外に向けて・・・踏み込まないというか。
    私はちょっと外から見させてというスタンスでずっと来ているので。
    だから例えば、どこかの制作会社へ入るとして40歳ぐらいまで仕事をすると、現場は若い人が欲しいわけでしょう、どうしてもギャラも安いし。
    そうなると、営業みたいな仕事に回って、突然背広着てね、カバン持ってね、プロデューサーのところに、
    「うちの人間どうでしょう」
    って売り込みに来てたりするような人がいるわけですよ。
    「あの人、この前までディレクターしてなかったっけ」
    みたいな。
    制作会社の社員だったりすると、プロデューサーにもなれないわけでしょ。一応プロデューサーって肩書きだけど、番組1本持たせてもらえるわけじゃなくて、結局人の売り込みに行ったりとか、営業的な仕事をやって行く人もいるわけですよ。

    泉 :優秀なディレクターであれば、会社も人材を確保しておきたいわけですよね。

    A  :営業をやらなきゃいけない人もいれば、ディレクターをそのままやれる人もいるからいろいろなんでしょうけどね。
    ぶっちゃけた話、「この人にはずっとやって欲しい」と言われる人がそんなにたくさんいるわけじゃない。
    逆に40代後半とかになって、ギャラが高くなってくると・・・。
    それに年下の社員が年上の人って使いづらいわけですよ。
    だから自分よりも下の人を入れた方が、やりやすい訳じゃないですか。ま、みんながみんなそう思ってる訳じゃないかもしれないし。
    けど、自分がその立場だったらそうだろうなと思うわけですよ。
    外部スタッフの中でも派遣の人が、一番歳をとっていくことに危機感を感じていると思いますよ。
    だって、社員はジャーナリストじゃなくても、人事に行こうが経理に行こうが食って行けるじゃないですか。
    でも、派遣で働いている人って、ジャーナリストでもなければ、かと言ってギャラもものすごく高いわけでもないし、40代後半ぐらいになると微妙な空気になってくるし。
    普通の会社だったら定年55から60ぐらいでしょ?そういう年齢の人が番組にいるかって言ったらいないですもん。

  • ジャーナリスト意識
    泉 :実績じゃなくてコスト重視?

    A  :実績というか、その中でものすごく素晴らしい人はピンでやっていけるわけですよ。やっていけない人たちっていうのが、やっぱりいっぱいいるんです。
    そこまで物を作ったりとかジャーナリスティックに独自で取材をしようとかってやってる人たちってのはそんなにいないってことですよ。
    だから、ニュース番組をやっている人全てが、本当に世の中が良くなるためにはこういうことをもっと追究しなきゃいけないと思ってるなんて思ったら、それは全然間違いで。
    たまたま自分が今この番組にいて、このネタを与えられたから、これについてはちょっと調べてやろうと。
    私も別にジャーナリストになりたいと思っていたわけではないし、たまたま流れでニュース番組をやる機会があったこともあって、政治をやりたいと思ってやってるんですけど。
    流れに任せていたらそうなったという感じで、こんなことを言ったらちょっと回りの人に怒られるかもしれないけど、私はそんな中でもちゃんとニュースに興味を持っていると言うか、世の中こうなった方がいいと思ってやってる方だと思うわけですよ。
    みんなじゃないけど、そうでない人は多いと思う。

    泉 :社員の人たちは出世の道があると思うんですけど、派遣の人は何を目指してるんでしょう。ひとり立ちしてやって行く信念があったって、それが実現するかどうかはまた別の話なわけですよね。

    A  :今のシステムだと難しいと思うんですよ。だったら、完パケを請け負うようなもっと大きい制作会社に入った方がいい。
    だけどそういう会社では、あまりニュース系はやってない。

    泉 :しかも敷居は高いわけでしょ?そんな大きい会社ってある程度エリートと呼ばれる人たちしか入れないのでは?

    A  :確かに何千人受けに来て5人受かるとか。
    あとね、今ニュース番組をやっているADとかディレクターの人が、本当にニュースをやりたくてテレビの業界に入ったかどうかっていうのが、はっきりわかる人はあまりいない。
    謙虚で言わないのかもしれないけど、本当にドキュメンタリがやりたいのか、それとも本当はバラエティがやりたいけど、会社に入ったらニュースへ行けって言われたからそういうところに行っているのか。ちょっとわからない。
    ADなんかは、『僕はジャーナリスティックなことがやりたくて』っていう感じの子は少ない。

    泉 :ADのイメージって雑務が多くて寝る暇がなくて給料が安くて、ものすごく過酷であると一般の人は思ってるんじゃないかって気がするんですけど、本当にそうならものすごい信念がないと続けていくことは難しいと思うんですけど、モチベーションは何なんでしょう。
    テレビに係わっていたいっていうことなんでしょうか。

    A  :人によっていろいろなんでしょうね。

  • 特権意識はあるのか
    泉 :Aさんご自身も先々の不安はありますか?

    A  :そうですね。私の場合は、そんなに苦しくもなく生活はできるわけですよ。だから、それに安住するっていうことはありますよね。自分の名前ひとつで何かできるようにしようとは思ってはいるんだけど、今の番組の中での仕事を日々やっていると、なかなかそっちにまで手が回らなくて、一歩進めないなっていう・・・。
    例えば番組にいても、企画を出して、やれる機会というのも本当に少ないんですけど、出してみるとかね。
    それで本当にその企画が成功すれば、例えばこの人には1本大きいものが任せられると認められて、例えば自分で会社を作るとか、ひとりでやることはできるかもしれないですね。
    ただ、なかなかそこまでやる人は少ないです。例えば森達也さんとかは、自分で絵も撮ってるけど、ああいう人はすごく少ないじゃないですか。
    あと、バラエティとかで、ある制作会社にいてディレクターとして活躍して、そういう人が分かれて会社を作るということはありますけど。

    泉 :例えば独立して会社を作ったとしたって、相当の実力がないとなかなか仕事をもらえないのが現実なわけですよね。

    A  :自分ひとりになっちゃったらね。だから派遣会社にいるわけですよ。例えばそこで切られたとしても、会社が別の局の別の番組に売り込んでくれたりとか、自分ひとりの力ではできないと思ってる人は所属してお願いするわけです。

    泉 :私も一般の企業で派遣社員をしていたのでわかるんですけど、テレビ業界も同じで年齢が行くとそれだけ仕事も少いわけですか。

    A  :わかんないけど、でも結構大変じゃないかなぁと思うんですけどね、想像するに。

    泉 :実力だけでもないですね。

    A  :プロデューサーの人柄にもよると思うんですけど、スパっと切れる人と、「今まで付き合ってきたんだからずっと使ってあげようよ」と言う人とかいろいろあって、実力社会だけでもないわけですよね。
    意外とキレ者ばかりが集まっている世界でもないとういことですよ。うん・・・ぶっちゃけた話というか。

    泉 :プロデューサーとの人間関係を作るために、手柄を立てたくてヤラセのようなことをやってしまったりということは現実には考えられますか?

    A  :私は考えられない。って言うかそういう風に思っている人が私の回りにいないって言うか。
    個人的に愚の骨頂と思っているから。落ちたくないって言うの?そこまでしてこの仕事をしてなくてもいいだろと思っているから。
    だから私一歩引いてるんですよね。

    泉 :Aさんみたいに考えている人は異質なんですか?

    A  :わからない。みんなあんまり言わないから。かじりつきたいってわけでもないんだろうけど、ただホラこういう仕事って潰し効かないでしょう。厳しいんじゃないですか。
    だからやっぱりそこにいるしかない。その中で何とかして行くしかない。

    泉 :テレビ局の社員は別としても、傍で思っているよりは大変ですよね。大きい制作会社の人もテレビ局の社員に近いのかもしれないけど、ちっちゃい制作会社とか派遣の人なんかは、かなり弱い立場ですよね。

    A  :だからよく言われる労働組合がそういう人たちにはないわけでしょ。組合あっても意味ないですけどね。
    だから、本当に文句が言いたくても言えないというよりは、もうそういうものになっちゃってるのかな、わかんないけど。

    泉 :でも、報道の仕事をしていれば発言することができて、力を持っていると思われがちですけど、そういう力があるとは思えないんですけど。
    特権を持っているという実感はありますか?

    A  :外注の人はないでしょうね。
    特権と言うよりは、中にいれば人が見えない映像とかが見れるでしょ。ニュースでは一部でしか出てこないことが、全部見れる、それでもロイターとかAPとかの外信なんかは全部見れませんよ。それでも人よりは多く見ることがわけですよ。
    それが自分の趣味じゃないけど、人よりもちょっとはいろんなことをしてるかなという特権。
    それを特権と言うのか。たまたま機会には恵まれるなということで、それが面白いからやっているということろはありますよね。

    泉 :世間が思っているようなメディアだから力があるじゃないかって言う・・・。

    A  :結果的に影響力は大きいから、持っていることと同等になっちゃう。自分がそう思ってなくても結果影響力があったら・・・うん。

    泉 :現場で影響力を持っていると自覚をしている人は少ない?

    A  :高い給料だってもらってないし、何も権限ないし・・・って、それが危ないんでしょうね。
    そうやって作ったものが、たまたまものすごく影響力があった場合に、誰に責任があるの?みたいな。責任の所在がはっきりしないとかね。

    泉 :責任の所在がはっきりしない場合に、局が傷つきたくないからって、外注の人が責任をかぶるということはありますか?

    A  :私の回りではない。

  • 研修
    泉 :ねつ造・やらせに対する具体的な再発防止策を教えてくださいという質問状を各主要メディアに出したんですけど、ほとんどの社が社員の心に働きかける研修をしますという回答だったんです。
    ある制作会社では、大手のテレビ局と協力し合って研修を行ってますとおっしゃってたんですけど、研修なんてあります?

    A  :ありましたよ。例えば、報道の結構ベテランの人が来てお話をしたりとか、問題があった番組のビデオを見せて、『どこが問題だと思います?』って話をしたりとか。
    制作現場だけじゃなくて、他の部署からも何人か来た会があって、それでグループを作ってそれぞれディスカッションしたりということが1回あった。

    泉 :それはテレビ局の社員も外注の人もみんななんだ。

    A  :全員が出たわけじゃないんですけどね。交流会みたいのは全員出なさいということはあるんですけど、ディスカッションみたいなのは「じゃ今回は誰が行く?」とか。

    泉 :じゃあ、研修はかなり頻繁に行われているんですね。

    A  :去年なんかは特にかなりあったと思いますよ。

    泉 :その研修は、実際現場の仕事に活かせるものですか?次元が違う話じゃないの?って思ってしまうんですけど。

    A  :うん、例えば漢字の表があって、テロップで漢字の使い方を間違えるじゃないですか。そういう例が100個くらい書いてあって、
    「一応やってみてください」
    なんて言わたりして。その後その表を持ち帰って、
    「この漢字間違いやすいから気をつけてね」
    とかね。そういうのは持っておけば役には立つでしょうけど。でもまぁ、その後いちいち見ているかと言われれば・・・。その都度チェックはきちっとしてるんで。
    そういうことをやってるんだっていう意識を持つっていうことぐらいですかね。会社が、それぐらい気をつけろっていう状況があるってことを各ディレクターに植え付けるために一応やるっていう。
    だから、失敗したらやばいよっていう風に思わせるための。

    泉 :研修はかなり効果的なんですね。

    A  :ええ、やらないよりはね。
    「みんな行ってください」って言われて、ちゃんと名前書かされて話を聞きます。

< 追記 >
インタビューさせていただいたAさんより、内容に相違があるとご指摘いただきましたので、訂正します

  • 訂正前
    ニュース番組の中でも内容を膨らませている特集は、制作会社の人たちが作っているそうです。
    そのようなニュース番組を現場では「ニュース」と呼び、それに対して報道番組や情報バラエティは「番組」と呼んで区別されているそうです。
    制作会社の人は、ニュースの特集記事と番組を作ります。
    Aさんが携わるのは「番組」で、配属先は制作会社ですが、局員と一緒にデスクを並べ、ほぼ対等に仕事をしていると言います。

  • 訂正後
    ニュース番組の中でも内容を膨らませている特集は、テレビ局の社員の人と制作会社の人たちが一緒に作っているそうです。
    そのようなニュース番組を現場では「ニュース」と呼び、それに対して報道番組や情報バラエティは「番組」と呼んで区別されているそうです。
    制作会社の人は、ニュースの特集記事と番組を作ります。
    Aさんが携わるのは「番組」で、制作会社に所属し配属先は局制作の番組で、局員と一緒にデスクを並べ、ほぼ対等に仕事をしていると言います。
  • 訂正前
    言い方の問題なんですけど、ニュースを放送するために取材している記者は、政治部とか社会部とか経済部とかにいて、報道番組などは「番組」って言うんです。

  • 訂正後
    言い方の問題なんですけど、ニュースを放送するために取材している記者は、政治部とか社会部とか経済部とかにいて、ニュース以外の番組などは「番組」って言うんです。
  • <文責/泉 あい>
    GripForum - 記者クラブの表と裏スレッド

    |

    « 民主党本部へご挨拶 | トップページ | 記者クラブの表と裏 【取材記26-6/報道番組制作の現場〜テレビ局ディレクターへのインタビュー »

    コメント

    はじめまして。
    この度ご縁がありまして、JANJANの記事に西山様のコメントをいただきました。
    そして泉あい様のご活動のことをお聞きして過去ログも拝見。
    すばらしいご活動と感じ入りました。
    リンクさせて頂きましたのでよろしくお願い申し上げます。

    投稿: 椿 伊津子 | 2005年10月15日 (土) 21時26分

    こんにちわ。いつも精力的な活動に頭が下がります。泉さんの記事は本当にエネルギーがあって、読んでる方も、いい意味で体力がいります。TBさせていただきました、よろしくです。
    ちなみに明日は、エアメサイヤとラインクラフトの2頭軸マルチで三連単中穴を狙いますからぁ〜。

    投稿: 踊る新聞屋−。 | 2005年10月16日 (日) 01時43分

    椿さん
    JANJANの記事拝見しました(http://www.janjan.jp/living/0510/0510103605/1.php?page=2&action=table#bbs)

    猫に足の指を噛み千切られたという話を聞いた時、私も耳を疑いました
    続報があるのかと待っているのですが、その後の警察の捜査はどうなったのでしょう

    糖尿病の私は、椿さんが取材なさった獣医師の言葉がひっかかりました
    糖尿病だと猫に足を食われる可能性があるってことですか??

    こちらこそこれからもよろしくお願いします

    投稿: ぁぃ | 2005年10月16日 (日) 03時05分

    この記事へのコメントは終了しました。

    « 民主党本部へご挨拶 | トップページ | 記者クラブの表と裏 【取材記26-6/報道番組制作の現場〜テレビ局ディレクターへのインタビュー »