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2005年9月19日 (月)

記者クラブの表と裏 【取材記26-3/回答内容】 

9月13日、送ったねつ造・ヤラセに対する具体的な再発防止策について主要メディアに質問状を送りました。
全社の回答が届きましたので、内容をご報告します。

私が提出した質問状に書いたものは、次の通りです。

【目的】
朝日新聞のねつ造にはじまり、フジテレビのやらせ、選挙での誤報と大手メディアによる不祥事が続いています。メディアと言えども、それを動かしているのは人であり、間違いを起こすのは当然のこと。では、組織として具体的にどのように再発防止に努めているのか。主要メディアの回答を比較し、各社の姿勢を見る。

【質問】
ねつ造やヤラセに対する具体的な再発防止策を教えてください。
社員教育、社内規定・罰則、チェック機能、等々できるだけ具体的にご回答くださいませ。

【各社からの回答】

    テレビ局からの回答(回答日時順)

    <フジテレビ 9/13>
    多忙であるため文書にしている時間がないので、電話でのインタビューということで、録音を許可していただきました。

    フジテレビ :再発防止策と書いてあるんですけど、ひとつはチェック態勢の強化ということになると思うんですよ。
    ねつ造やらせと質問状に書いてありますけれど、その他に放送物として問題があると思うものっていくつかあります。SEXの描写であるとか、過度な暴力表現であるとか差別とか、特定の個人や団体を誹謗中傷するものとか、いろいろ放送したらまずいよねという種類のものは沢山あるわけですよね。
    それらのほとんどは、放送前に複数の目でチェックすると、ある程度わかるわけですよ。例えば性的な描写がちょっとひどいなというのは、画面でも音声にも表れている。
    暴力もそう、「こういうのはちょっとまずいんじゃないの?」とチェックできるわけです。
    だけど、いわゆる過剰演出とかヤラセみたいなものは、実は作品としては違和感があまりないわけですよ。例えば心温まる話があって、そういうVTRが放送前に上がって来ますよね。それを見て「いい話だな」ということになるわけですけども、実はその影に過剰演出みたいなものがあったとか、現場で依頼をしていたとか、そういうものは水面下になっちゃう。
    だから、実はチェックをするということが非常に難しい。
    放送してはいけないものが沢山あるんですけど、その中でもチェックをするものがものすごく難しい種類のものであるということを、先ず最初に申し上げておきます。

    今回問題になっているような種類の番組というのは、いろんな人に取材をして番組を作るわけですけど、そういう種類の番組ってものすごく沢山あるわけです。実際局の人間が、沢山取材を受けた人のご住所や電話番号をつきとめて「本当に正当な取材でしたか」と言うことは、実質的には無理に等しいんですよ。
    ものすごく沢山のプログラムがありますから、どう考えるかというと、作り手というのは社内の制作スタッフもいるし、社外で制作をお願いしている人もいるんですけれど、そういう人たちの心の問題ということに尽きると思うんですね。
    作り手というのは、自分たちが作った作品が、特にテレビっていうのは沢山の人が接しますから、すごく影響力があるんだと。それのみならず、そこで倫理的に踏み外してはいけないことだということのそれぞれのガイドラインというのはもちろんあるんでしょうけど、それをあるレベル以上に達していないと、こういう問題というのは起きやすいわけですよね。
    だから、非常に地味な作業なんですけど、折りに触れて作り手に対してそういうお話を局として発信し続けることしか、多分ないんじゃないかなって思いますね。
    地道ですけど、それが一番効果のある再発防止策じゃないかなって思いますけどね。

    泉 :実際に今も行われているのでしょうか
    フジテレビ :はい、折りに触れやっております。
    いろいろな各制作セクションでいろいろな会議が定期的にありますので、そういう時に上長が話をしたり、年度とか年末とか年始とかエポックな会議もありますので、そういう時に話をします。上長というのは、制作で言うと制作室長、ドキュメンタリであればドキュメンタリの室長とか局長とか、簡単に言うと偉い人って言うのかな。

    泉 :フジテレビには、外部の制作会社が沢山入っていると聞いておりますが
    フジテレビ :ええ。フジテレビの作品というのは、社内で制作しているものもございますし、外に完全に発注しているものもございますし、番組の一部を社外に委託しているものなど、いろいろな形があるんですよ。それはもう千差万別なんですけれども。

    泉 :外へ発注している制作会社へも、同じような働きかけはなされているのですか?
    フジテレビ :もちろんそうですね。そういうことを折りに触れ、注意を喚起したりはしています。
    ただ難しいのは、ある事件(ねつ造・やらせ)が起きますよね、そうすると、起こったことを事例に引いて、「こういうことはまずいですよ」と言うわけですが、同じことが2度起こるということはなかなかないわけで、「こういうことはやっぱりまずいな」と皆思うけど、起きるパターンというのはそれぞれ違うわけですよね。
    その人のレベルが、こんなことはやっちゃいけないんだと思って留まっちゃうか、それともある事件(ねつ造・ヤラセ)が起こった時その背景にあることまできちっと認識して、自分の総合的レベルが上がってくれるかどうかということが、非常に大きな問題だと思いますし、そういうことっていうのがポイントだと思いますね。

    泉 :ねつ造やヤラセについての規約は実際にはありますか
    フジテレビ :レベルというのがその時その時で違って、非常に重篤なものから、そうでないものまでいろいろありますよね。だから、その時の罰則は、パターンとしてこうなんだというものはないですが、社内で懲罰委員会のようなものが開かれまして、この事件に関してどういう処分をするかは、その時その時で決めていきます。

    泉 :研修を定めたものもない?
    フジテレビ :社内の人間に関しては、いろんな節目で研修があるんですね。管理職になる時とか、上級管理職になる時、中級管理職になる時とか。そういう時の研修に、このようなものは含まれますよね。

    <テレビ朝日 9/13 メールでの回答>

    私たちは、社会人として法と秩序を守ることはもとより、放送人として良識に基づく、
    より高い職業倫理とこれまで以上に公正で透明性の高い誠実な企業活動を行うことが求められています。
    そのことを社員一人一人が自覚・実践しています。

    <TBS 9/14 FAXでの回答>

    ご質問への回答

    まず、はじめに、ご指摘の、朝日新聞、フジテレビ等の問題はそれぞれ個々の事案でもあり、言及は控えさせていただきます。

    弊社は、TBS放送基準で表明しているとおり、社会的責任と公共的使命を認識し、メディアの特性を十分に活用して文化の普及と向上に努め、平和で民主的な世界、より良い社会環境、地球環境の実現と公共の福祉に貢献することを使命としております。
    また、社会の良識や良俗に反する放送は行わない、としております。

    TBSでは、社内教育や研修、さらに日々の指導をとおしてこの基準遵守を徹底するよう努めております。

    なお、社内規定等につきましては、公表しておりませんので、控えさせていただきます。

    以上

    <日本テレビ 9/16 FAXでの回答>

    9月13日付の貴殿からのご質問につきましては、回答を差し控えさせていただきます。

    以上、よろしくお願いいたします。

    <NHK 9/16 FAXでの回答>

    いただいたご質問について以下のとおり、お答え致します。

     放送が国民や視聴者から信頼されるためには、放送に関わる者すべてに放送人としての倫理が強く求められています。いわゆる「ねつ造」や「やらせ」が論外であるのはもちろんであり、演出や表現放送に行き過ぎがないよう、一人一人の職員の放送倫理を確立することが、何より重要であると考えています。
     こうした観点にたって、NHKは、日本民間放送連盟と共同で、「放送倫理基本綱領」を制定しています。部内には、放送の責任者等で構成する「放送倫理委員会」を設置し、毎月、会合を開いて、取材の方法や制作手法に問題がなかったかどうかを検証するとともに、放送現場の指導にあたっています。
     また、NHKには国内番組基準がありますが、この基準を具体的に解説した「番組基準ハンドブック」や、様々な問題に対処する上でより所となる考え方を示した「放送ガイドライン」を作成し、全職員に配布しています。
     あわせて職員研修にも積極的に取り組み、その際にはハンドブックなどを活用するとともに、最新のリーダーや管理職にも、様々な研修を実施しています。
     さらに取材・制作の現場では、取材・制作者の上にたつデスクや副部長、チーフ・プロデューサーが複数の目で、映像や原稿、文字テロップなどの内容をチェックするなどして、日々の放送にと取り組んでいます。

    以上



    新聞社からの回答(回答日時順)

    <朝日新聞 9/13> はじめに「質問状を送らせてください」ということでFAXで提出。その後FAXの受信確認のため電話をしたところ、別の担当者へつながれ、その場で質問を読まれ、すぐに電話での回答をいただいた。そのため、要約して掲載します。

    朝日新聞 :うちの新聞は、かなりご覧いただいておりますか?
    泉 :いえ、申し訳ありません、読んでいません。

    朝日新聞 :いかに信頼される新聞を作るかということで、長野を件をきっかけとしまして委員会を作って再発防止策等の取り組みをはじめておりまして、その結果については、紙面で逐一ご報告しますということで、一面に社告を載せています。
    泉 :具体的な再発防止策も書いてありますか?
    朝日新聞 :8/31の朝刊に今後どういう取り組みをしますよということが書いてあります。
    再発防止策の中身については、この記事には書いてないですよ。今検討中なんですよ。結果が出た段階で記事に載せます。
    泉 :今検討中であることはわかりますが、実際に毎日、新聞は発行されているわけですよね。現状がどうなっているのですか。
    朝日新聞 :先ずは記事を読んでいただけないでしょうか。

    一旦電話を切り、インターネット上で記事を確認し、8月31日9月8日の記事を読み、再度電話。
    泉 :9月8日の記事に、「『信頼される報道のために』委員会を設置し、取材現場の実態や問題点を再点検するとともに、記者教育、取材方法を多角的に見直すことを決めた。また、今回の報道を検証し、その結果を随時、記事にしていくことにしている。 」とありますが、検証を記事にするというのは、わかります。
    現場で何が行われていたのか、何が悪かったのかを載せるということだと思うんですけど、それに加えて具体的な再発防止策も記事として紙面に報告してくださるということでよろしいですか?
    朝日新聞 :防止策が具体的にどうなるのかは、今はまだわからないが、対象にはなると思いますね。
    泉 :それは、朝日新聞の紙面で具体的な再発防止策について回答してくださるということで、読者に報告してよろしいですか?
    朝日新聞 :ええ、結構です。

    9/15の記事

    <毎日新聞 9/16 メールでの回答>

    回答いたします

    ご質問に対して、以下の通り山田孝男・東京本社編集局次長の回答をお送りいたします。ご査収下さい。

     朝日の検証記事を読んで感じたのは、組織的な取材に基づいて1本の記事をまとめる作業が制度化された場合、責任の所在があいまいになりがちだということです。編集のデジタル化が進み、紙に印刷された記事をチェックする機会が減っていることも重要なポイントだと思いました。
     新聞づくりはすぐれて人間的な営みです。取材相手と記者の間はもちろん、取材記者同士、また取材記者と編集記者の間も、お互いの顔を見ながら肉声で十分なコミュニケーションをとることが基本中の基本です。印刷された記事、またはネット配信される前のモニターを筆者があらかじめチェックするという作業も欠かせません。
     毎日新聞のねつ造防止策は何かというご質問にお答えすれば、人間が組織や機械の中に埋没しない新聞づくりに徹するということに尽きます。記者教育や社内規定にご関心がおありのようですが、新聞社が「ねつ造をいかに防ぐか」の観点から記者教育や罰則強化に取り組むのは、警察が「いかに盗みをさせないか」という関心から警官教育を練り、内規を設けるのと同じくらい奇妙なことではないでしょうか。「ねつ造する記者」や「盗みを働く警官」の存在を当然の前提とし、マニュアルをもって矯正するような対応は、職業倫理の根幹を蝕む倒錯であると私どもは考えます。

    <了>

    ・追記
    毎日新聞の紙面上でも同じ内容の回答をされています。→毎日新聞WEB

    <読売新聞 9/17 メールにて回答>

    「報道において、ねつ造、やらせは決してあってはならないことだと考えており、朝日新聞長野支局のねつ造問題が起きる以前から、社内では厳しいチェック体制を整えています。一方で、今回のねつ造問題は決して対岸の火事ではないと受け止めており、当社でも同様のことが起きないよう記者への指導の徹底を図っています。なお、具体的な社員教育、チェック方法及び社内規定は、当社独自のものであり、公表できません」

     以上

<文責/泉 あい>
GripForum - 記者クラブの表と裏スレッド

*変更
9/21、hal* さんのコメントを参考に各社の回答をテレビと新聞で分けて表示するように変更しました。

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コメント

各紙、各局の上記のコメントを見る限りでは、捏造・ヤラセのできる範囲での対策はしているようにも思えますが、それでも、捏造・ヤラセが減らないのは制作サイドの「倫理観」の問題なのでしょうか?
もちろん、購読者・視聴者という対象を満足させる内容を作り上げる義務はあるのでしょうが、やりすぎ・行きすぎという線引きが曖昧で難しいというのも分かる気はします。しかし、バラエティでのヤラセはある程度容認される部分もあるでしょうが、報道に関しては絶対に認めてはいけないことだと僕は思います。
報道の役割は、「真実を真実のまま客観的に国民に知らせること」であり、そこには不要のものであると思っています。
最後に、疑問点があります。
最近、報道特集に「ボッタクリ・詐欺」等が取り上げられますが、何故こういう報道をする際に明らかに「ボッタクリ・詐欺」をしている会社があても、モザイクを入れたりして実名報道をしないのでしょうか?新たな被害者を出さないためにもハッキリと実名報道をしたほうが良いのではないでしょうか?
もっとも、そういう輩はゴキブリのように次から次へと沸いてでてくるのでしょうが、だからこそ、絶滅させるためにも報道の力というものを必要としているのではないでしょうか?
教えてください。

投稿: ショウ | 2005年9月20日 (火) 08時33分

ショウさん、こん○○は。

>制作サイドの「倫理観」の問題なのでしょうか?
制作サイドが心の問題としていてもそのトップが視聴率至上主義では視聴率を取る為に現場がヤラセをしてしまうとも思えます。
かと言って視聴者がヤラセをやった番組に制裁を加えるのも難しいし。 NHKだと視聴者は懐を痛めて見ているから厳しいところもあるでしょうけど、民放だとねぇ。
後はスポンサーが厳しく見ていくしか無いんではないでしょうか。

投稿: アン | 2005年9月20日 (火) 11時16分

フジテレビが比較的に丁寧に答える中で、外注問題を取り上げているのは、やはり「めざましテレビ」のやらせ問題の渦中にいたからでしょうね。

>いわゆる過剰演出とかヤラセみたいなものは、実は作品としては違和感があまりないわけですよ。例えば心温まる話があって、そういうVTRが放送前に上がって来ますよね。それを見て「いい話だな」ということになるわけですけども、実はその影に過剰演出みたいなものがあったとか、現場で依頼をしていたとか、そういうものは水面下になっちゃう。
>だから、実はチェックをするということが非常に難しい。

苦しさを感じるけれども、局としては正直なところなんだろうな、と思います。

そして朝日新聞
>うちの新聞は、かなりご覧いただいておりますか?

いきなりですよね!
あいさんが、その場の空気に迎合してYesと答えていたら、捏造記者と同じ迷路に踏み込んでいた……危ない瞬間でした。

朝日って、その気もなく相手を追い詰めるような質問を発する企業体質みたいなものがあるんでしょうかね? 社員に対しても。
なんか危うさが拭えない、風通しが悪い、や〜な印象を受けました。

投稿: 美也子 | 2005年9月20日 (火) 13時03分

こうして並べて見ると、新聞とテレビが同等に並んでいるのはちょっと分かり難いかも知れませんね。取り組むべき問題の本質は同じでしょうけど具体的性質が違っていますので。
このページで得をしているのはやっぱりフジテレビだと思います。
他社の社内規定を理由も説明せず一部たりとも「公表できない」という姿勢はちょっと意味がわかりませんでした。
もし良い取り組みをしてるならどんどんアピールすればいいのにと。

投稿: hal* | 2005年9月21日 (水) 02時24分

テレビ朝日に聞きたいのは、もしオフィストゥーワンみたいな多数の番組を抱えている所が、問題を起した時に「ばっさり」行けるのかということですね。

投稿: 某S | 2005年9月21日 (水) 13時39分

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