言うか言わないか
公園には池があり、その池には「釣り禁止」と書かれた看板があちこちに立てられていますが、釣りをしている人の姿をよく見かけます。私には「いつものことだ」と気にも留めていなかったことが、彼女には許すことが出来ず、黙ったまま通り過ぎるわけには行かないのです。釣りをしている若者を度々目撃し、
「ここは釣りしちゃいけないんだょ〜。」
と軽く注意していたそうですが、ある日口論になりました。
「つばきをひっかけられて『クソババぁ』って言われてね。みんなは見て見ぬ振りするのよ。釣りをしちゃいけないのはみんな知っていて、釣りをしている人がいることも気づいてるわけ。言うか言わないかなのよね。」
口論中ほとんどの人が黙って通り過ぎる中、
「あなたが言ってることが正しい」
と言ってくれる男性もいたそうなのですが、立ち止まるわけではなく、言いながら通り過ぎるだけ。そのうち若者は、彼女に拳を振りかざしたそうです。
「釣りはいけないと思うの。天蚕糸(釣り糸)がハトの足に絡まって歩けなくなっているのよ。」
と、釣りをすることがなぜ悪いのかを必死に訴える彼女に、鳥好きの私も共感します。私自身、結婚している時は主人とよく沢釣りを楽しみましたが、帰る際には、糸が落ちていないか点検して帰路に着いたものです。ただ、自分で自分の始末はするものの、他人のことまで気にしたことはありません。
「禁止されているのに釣りをする事は悪い」と強く口調で話す彼女でしたが、数秒後には弱い面を出しました。
「3ヶ月か前くらいから、水質汚染っていう理由で『鳥や鯉にエサを与えてはいけません』って書かれちゃったのよ。だけどね、あそこに見えるアヒルは骨折しちゃって動けなかったの。かわいそうだと思わない?管理事務所に『何とかしてください』と言っても自然淘汰だって言うの。誰もいない時はこっそりパンをあげるんだけど、ちっちゃい子供に見つかって、注意されたりなんかもするのよ。私は偽善者なのかなぁってジレンマに陥って、のた打ち回ることがあるよ。」
彼女が「いけないよ」と注意する釣りも、彼女が行うエサやりも、公園では禁止されていますが、誰かを注意しようなんて考えたことのない私は、彼女を偽善者だと一概に言い切ることはできません。ルールを守り、破る人を見かけたら注意するのが、良識のある人だとはわかっているのですが、そんな勇気もないんです。トラブルに巻き込まれるのは嫌だし、そんな時間もない。スマートに生きていたいとも思います。昔は地域で子供を育てたという話を聞くと共感するのに、他人を注意することを放棄している私です。
彼女と別れてからずっと考えています。本当はルールを守り他人を注意をするのが正しいのでしょうけど、現実には他人を注意することは、なかなかできません。
禁止事項を破る人。
禁止事項を自ら破りながら、他人をも注意する人。
禁止事項は守るけど、守らない他人を注意せず黙って通り過ぎる人。
今の社会の等身大の正しさってどれなんでしょうか・・・
<文責/泉 あい>
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コメント
ルールはルールを守る人に対して存在するのであって、守らない人は対象に入っていないと思うべき。 しかし、禁止事項自体にも問題もああると思う。
管理しようとする側は何でも禁止にしたがる。その方が管理しやすし、何か起こったとき、新聞などで管理責任を問うからだ。 新聞は金儲けで大騒ぎするだけだが、それを利用して管理者は何でも禁止にしてゆく。(新聞は金儲けにならない事は重大なことであっても書かない。 その例は軍人恩給だ。)
お酒、タバコ、シードベルトなども個人の問題とすべきだ。 一人殺すも二人殺すも同じ、ということで、身近な法律違反は法律の軽視に繋がる。
投稿: ntaiti | 2005年8月 6日 (土) 11時50分
確かにどうしてこれが禁止事項なの?って思うことってありますね
確かなデータに基づいているのなら納得できますけど・・・
そういう意味では、神奈川県の条例には興味津々でいます
投稿: ぁぃ | 2005年8月 6日 (土) 17時46分