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2005年7月19日 (火)

公園に集う人:旅を絵にする

Goshi3 7月18日

梅雨が明けた東京は、海の日にふさわしい真夏日で、私は海ではなく吉祥寺にいました
一日電話取材をするつもりでしたが、休日であるために取材には至らず、エントリーを上げるための材料を探し求めて
井の頭公園へ続く人気のストリートを歩くと、道幅いっぱいに人にが溢れていて、余計に暑いと感じます
最近井の頭公園へ集まっているというアーティストの人たちに会ってきました

Rondo 駅方向の坂道を下って公園に入ると、すぐに人だかりが見えてきます
その中心にいるのは、バルーンアートをやるのかと思いきや、手術の時にでも使いそうなビニール手袋を頭にかぶって膨らます大道芸人・ロンド
その向こうには、サザンを歌う優等生っぽい女性と優しくピアノを奏でるヒゲの男性
ギターの弾き語りをする2人組の回りに輪を作る女性たち
ビニール傘に絵を描いている男性
明るい声で叫びまくってアピールする人や職人気質で黙々と筆を走らせる人など、様々な形で表現をしている人たちの姿がありました

Hitotachi

私が足を止めたのは、可憐で繊細な風景画たち
よく見ると世界地図が置いてあって、「自分が行ってきた国の絵を描いています」とあり、その前に座っているのは年配の女性でした
若者たちに混じって、私の母よりも少し年を取っていそうな女性の姿を見つけ、『どうかこの女性がこの素敵な絵を描いた主でありますように」と願い、声をかけました

「この絵はお母さんが描かれたんですか?」
「そう、私が描いたんですよ、お母さんがね(笑)」
人懐こい関西弁の女性は、五師まりさん、60歳
40歳を過ぎてから日本国内を旅し、「やっぱり外も知らなきゃね」と、最初はピースボートに乗って海外へ飛び出しました
そして、50歳を過ぎてから精力的に海外旅行をしはじめ、その数ナント62ヵ国!!
海外旅行経験なしの私は脱帽です

小さい頃から画家志望だったまりさんは、大阪のご出身
25歳で上京しコピーライターをしますが、旅好きが高じてトラベルライターへ転向なさったそうです
金子光晴さんの弟子になり詩の勉強をなさったこともありと、絵よりは文字の世界で生計を立てていらっしゃったのですが、稼いだお金はみんな旅行へつぎ込んでいるとか
今は、普段は原稿を書きながら、時々井の頭公園でご自分の絵を売っているそうです

まりさんは、非常に封建的な家庭に育ったとかで、日本で暮らすことに息苦しさを感じ、日本を脱出しどこか暮らせる場所はないかと探すことも旅の目的のひとつ
もうひとつの目的は、女性解放運動や反戦運動をしていらっしゃることもあり、世界の女性がどのように生きているだろうかを調べに行くこと
例えば「世界の女性の中で働いている人は何%ぐらいいるだろう」というデータは、先進国のものなら渋谷の東京ウィメンズプラザに置いてあるそうですが、発展途上国のデータはないのだそうです
だったら自分で直接調べてみようと10ヵ国を調べて回ったと言うのです
「第三世界、つまり発展途上国はこれからどうなるのか知りたかったもんですから」
とケロっとおっしゃいますが、危険はなかったのでしょうか
「偶然遭わなかったということもありますけど、人が思う程危険なところはないんじゃないですか
一番はパリのスリ!
むしろ、発展途上国のアフリカなんかに行くと安全なんですよ
日本人はやたらヨーロッパに行きたがるけど、アフリカの人は純情でスレてないから、むしろ反対に安全
またねぇ、ケニアのお料理のおいしいことね
あそこは動物がいっぱいいますから、素材がいい!
四国ぐらいの大きさで公園て言うてるんですよ
その公園に動物がいっぱいいてて、ほんで車に乗ってずっとウォッチングをするんです
(遠くを見つめて真っ直ぐに指を差し)緑の地平線が見えるんですけど、それが素晴らしい・・・気絶しそうな美しい風景なんです・・・(うっとり)
にわとりなんかそこに跳ね回ってるから、卵なんか口の中へ入れたら、活きが良くてパァーって弾けるんですよ!!
だからチキンもモーレツにおいしいわけですよね
ウガンダやタンザニアだと観光客の受け入れ態勢があまりできてないんですけど、ケニアだと政府が力を入れていて、整ってるです
素晴らしいロッジがあるしね
だからケニアが好きって言う人は、結構多いですよ
野生動物もいっぱい見ましたよ
(回りを指差して)こんな風に、人間がいるみたいに動物がいるんやもん
ひとつの木にサルが50匹ぐらいいるんですよ(笑)
そこからまたしばらく行くとさ、ライオンがそこで寝そべっちゃって、象の親子が5頭ぐらいかたまっていたりとかさ
ついこないだまでは、ハンターしてもよかった所だったけど、今は動物が地球上で減っているので、ハンターを止めさせてウィッチングに変えたの」

どうやらまりさんは、歴史的に不幸な経験をしている場所に惹かれていらっしゃるようです
日本国内では、
「社会情勢的にあまり良い待遇を受けていない沖縄が好き」
とおっしゃるし、海外でもケニアをはじめとするアフリカや東南アジアの話題が多い
もっともっと深いお話を聞きたいのだけれど、暑さのためか、ため息混じりの会話になってきました
「キリマジャロは富士山とよく似てるんですよ
すごいきれいですよ・・・これいかが?買いませんか?」

『キリマンジャロってタンザニアじゃなかったっけ?ケニアからも見えるのか?』と思いながらも、私は、まりさんの商人魂に押され気味
結局、B5サイズを1枚と、ハガキサイズを4枚購入しました
絵を選んでいる間も、「イスラム教を信仰している地域の女性は、随分虐げられているように見えますが」と話してみると、外から見るのと内とでは違うという話をしてくださいました
妻を4人持ってもいいというのは、男性が女性を経済的に面倒をみるという経済的背景があってのことで、男性が上に立っているという印象は、イスラム以外の者が長い歴史の中で、勝手に持ったものだそうです
一口にイスラム教と言っても中近東のように厳しい所もあれば、モロッコやシンガポールのように頭に布を巻いていない女性が大勢いる所もあるそうで、
「日本の仏教と同じよ」
とおっしゃっていました

アフリカで行われている割礼に関しても、私はとても興味があることで、世界中で割礼を止めようという動きは強まっているとまりさんから聞きました
でも、やっぱり自分の目で見てみたい
未だに自分の意志を無視されて、割礼を受け、それでも笑顔で生きようとする女性の姿を見てみたいのです

まりさんの絵は、どれを取ってもハッピーだと私は感じます
ケニアのヤシの木の向こうに見える夕焼けのビーチは、高級リゾート
花が咲き乱れ太陽が降り注ぐ石畳のギリシャ
これから日本へ運ばれるために、アラスカの市場へ上がった大きなサーモン
そこに人の姿は描かれていませんが、きっとそこには、穏やかだったり活気に満ち溢れた表情をした人たちがいるのだろうと想像できるのです
その笑顔をいつかこの目で見てみたい
世界中の人たちの笑顔を、そして涙を追いかけてみたい
井の頭公園の木陰に置かれたまりさんの絵に出会って、その絵の裏側と10年先の自分を想像している38歳9ヶ月の私です

<文責/泉 あい>

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コメント

まりさん、きっと素敵な方なんでしょうね。
なんだかお顔を想像しながら読んでしまいました。
「割礼」のことははじめて知りました。
同じ女性としてショックですね。

あいさんのブログで、知らないことを知ることができたり、考えるきっかけになることが多く、勉強になります。
暑いですが、お体に気をつけてがんばってくださいね。
応援しています。
それから、この前のカッタ君のコメントは私です。
名前を書くのを忘れました。
大変失礼しました。

投稿: えみーゆ | 2005年7月20日 (水) 17時11分

割礼は、テレビでも時々取り上げていて、そのシーンは直視できません
日本では、アフリカで起きている問題、特に内戦の報道は、あまりされていないと感じ、そんな時に伝えることの大切さを実感しています

いつか私も、誰も知らない隠れた大問題とか、人知れずものすごくがんばっちゃってる人をお伝えしたい
それが私の夢です

投稿: ぁぃ | 2005年7月20日 (水) 22時12分

この記事へのコメントは終了しました。

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