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2005年7月15日 (金)

アニマルセラピ− 【取材記6/障害者と乗馬】 

Tader5 7月10日取材

東京障害者乗馬協会さんが主催する「木曽馬乗馬会」へ行ってきました
日本障害者乗馬協会へ加盟している東京障害者乗馬協会は、1995年の3月に設立され、活動主旨を「障害者が乗馬を通じて、レクリエーション、健康の維持、機能回復、幅広い交流を図る機会を推進する事を目的とする」としています
富士山を見ながら乗馬ができる牧場は、山梨県南都留郡の紅葉台木曽馬牧場
この牧場の木曽馬という種類の馬が背が低くて障害者をサポ−トしやすいということで、毎月2回の乗馬会が開催されています
ちょうどこの日、黒沼道子コーチ(顧問)がいらっしゃっていて、内容の濃い充実したレッスンが行われました

乗り手として乗馬をする障害者の方は、9人
身体障害をお持ちの方と知的障害をお持ちの方、どちらもいらっしゃいます
姿勢をまっすぐに保つこともできない重度の障害をお持ちの方や、難聴、視野障害など、いろいろな方がいらっしゃいました
それを支えるボランティアは、そのほぼ2倍の人数で、その中には理学療法士の方や女子高生など、その人材は豊富です

準備運動をして乗馬がはじまると、乗馬のクオリティ−の高さに驚かされました
競技会へ出場することが目標という方もいらっしゃって、自分で手綱を握り馬を操る方が何人もいらっしゃいます
そのような先輩の騎乗を目の前で見ることは、初心者の方には大きな目標になっているようです

この日2回目の参加だという脳性マヒで重度の障害をお持ちの男性Aさん(33)は、ボランティアの方にサポ−トされながら馬の背中に乗るまでは、困惑したような表情を浮かべていらっしゃいました
姿勢を真っ直ぐに保つことが難しいAさんは、左右からボランティアの人にしっかりと支えられコ−チに声をかけられると、ゆっくりと背筋を伸ばすことができます
そして、馬が歩き始めると、見ている人が歓声を上げるほどのいい笑顔
「家ではあんな表情見せたことないんですよ」
とお母さんもうれしそう
「やらないよりはやってみてダメだとわかった方がいい」
というお母さんの言葉を重く感じます

乗馬が生活の中心になっているという方もいらっしゃいました
視野障害をお持ちの女性Bさん(41)です
Bさんは、30歳を過ぎてから自分の目の病気を知り、徐々に病気が進行していて、視野の中のある部分しか見えないそうです
以前は普通に見ていたものがだんだんと見えなくなっていく恐怖を、どう乗り越えられたのか聞いてみました
「乗馬では高さがこわいというよりも、馬が突然走り出した時に視野がないので、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうのがこわいですね
病気のことは、今はこわくないんですけど、こわくなりはじめるとすごくこわくなる
途中からそういうことになって、日々見えなくなることを感じていて、自分の中では、嫌なことでこわいことなわけです
それはそれで消化はしてるんですよ
だけど、嫌なことは嫌で例えば『あ、またこれが見えなくなっちゃった』と思うこともあって・・・
それに対するプラスアルファになるような楽しみということで、乗馬は自分の中でかなりウェイトが大きいかなあって思いますね
特に私は馬を持ってて、自分の馬のことをよく考えてます
馬ってかわいい〜♪」
Bさんの表情に影など見られず、終始笑顔でお話してくださる姿に余裕さえ感じられます
不安はいくらでも大きくなるもの
その不安を大きいものにするか、最小限に留まらせるかは、本人の考え方ひとつだと思います
病気への不安と闘いながら、乗馬に生きがいを見出せたことで、Bさんは毅然と前を向いていられるのかもしれません

元々競馬が好きだったBさんは、彼氏と一緒に乗馬をはじめましたが、先に「馬に乗りたい」と言い出したのは、彼氏ではなくBさんだったそうです
彼氏は、
「乗馬は彼女がどうしてもやりたいと言うから、『付き添いでなら行くけど』と言ってたんですよ
一度体験乗馬をやったら、逆に僕の方がはまっちゃった(笑)
はまった理由は、相手が生き物だということかな
馬は力ずくで支配できない
自分の馬でも、毎日会えるわけじゃないから、余計に会いたいって気持ちになるんです
自分の馬はかわい〜い♪
遠くから自分の足音がしたら、耳をこっちを向けてちゃんと認識してくれている
それがあるから、1週間忙しくてもがんばって仕事できるかなと思います」
と、今ではカップルで1頭の馬(元競走馬)のオ−ナ−さんになられて、愛情を注がれているようです

それにしても、自分で馬を持つなんて、お金持ちにしかできないことだというイメ−ジを私は持っていました
「馬を維持するには、月に14万から15万円ぐらいかかります
特に目が悪いから、普通の乗馬クラブで騎乗料を払って、他の方たちと何頭か一緒に乗るというのは無理になっちゃったんですよね
見えないから、同じ馬場の中に他の馬がいるとこわいんです
だからどうしても個人レッスンになっちゃうんですよ
個人レッスンだと騎乗料がかかるから、月に8回も行くんだったら、私の中では負担でもないし
お化粧品や洋服を買う楽しみがなくなって来ちゃうわけだから、自分の馬を持ってもいいかなぁって」

Bさんは、長身でスタイル抜群、色白で美肌のかなりの美人です
お化粧品や洋服を楽しむことができないつらさは、女性としてのアイデンティティ−を欠いてしまうと言っていいと思います
「つまんないよね
見えないから・・・そう考えたら、馬に集中してもいいのかな」
こう語る瞬間だけ、彼女の表情が曇りました

ご自分の馬がいる乗馬クラブで週末のほとんどを過ごしながら、なぜ障害者乗馬協会の乗馬会に参加なさっているのかも聞いてみました
「去年は、資格を取るための勉強で1回も来れなかったり、ここへの出席の成績はあまり良くないですよ
でも、基本はここかなと思います
一般的な大会も出れないことはないけれども、それにはいろんな人の力が必要になる
でも、ここはノウハウがあるし、一般の人の大会に出るよりも障害者の大会に出たいと思う
これから大会に出たいなと思って目指してるんです♪」
サポ−トしてくれる基盤が整っている障害者乗馬協会なら実績もあり、競技会に参加するという自分の目標を持つことができるのでしょう

Bさんは、
「自分のために気持ちをプラス2ぐらいに持って行くには、何かいろいろやらないと、きれい事じゃないじゃないですか」
と言います
どんなにこわくても、人は生きていかなければなりません
目が見えないことから逃げることは、生きることを諦めることに等しいのだと思います
病気に自分の人生を邪魔されたくはないし、自分らしく生きたいと考え、そのために乗馬は、Bさんの中で大きな柱になっていると言います
「障害者の人って結構いろいろなことをやっている人が多いんですよ
全く家に閉じこもっちゃっているか、アクティブにやるかどっちかなんですよ
知り合う人は、外に出てるタイプの人ばかりだから、ゴルフをやっているとかスキ−をやっているとか、たくさんいらっしゃるけれども、私の中では馬がいちばん!
乗って楽しいのもあるし、面倒をみて楽しいのもある(笑)
馬って第六感じゃないけど、例えば私が目が悪いことをわかっているという気がするんですよ
結構やんちゃな子でも気を使ってくれていると思う」

馬の優しさについて語るBさんに共感しながらも、私は『全く家に閉じこもっちゃっているか』という言葉に引っかかっていました
生きがいや楽しみを見つけられる人ばかりではなく、家の中に閉じこもっている障害者の方もいらっしゃるという現実は、私自身見ようとしなかったことだと気づいたのです
Bさんは病気がわかってから、今のようにふっきれるまで、内にこもるということはなかったのか聞いてみました
「こもりはしませんでしたけど、夜寝る前に『うぇ〜ん』って泣いたり(笑)
ふっきれないってわかったからふっきれたのかなぁ
現実を受け止めたくないと思う自分がいて当たり前と思えるようになったんです
競走馬では『折り合いをつける』とよく言いますけど、自分との折り合いをつけ方が日々上手になってくるのかな
特に、サラブレッドって人間に作られていて、競走なんかしたくないけど仕方なくしてて、一生懸命やって怪我をしちゃったり・・・
それがかわいそうと言っても、そしたらサラブレッドは生きていけない、ちょっとパラドックスみたいな
矛盾がある中で頑張っている馬と、もしかしたらいい人生じゃないかもしれないけどその中で頑張っている自分を一緒に考えたりしてるかもしれない」

「こんな風に言えるのは彼氏の支えが大きいですか?」という私の問いに、
「そうですね」
と頬を赤く染めて言うBさん
そばに寄り添う彼氏も照れながら、
「落ち込む時はどんどん落ち込んでいるようだけど、それは仕方のないもんだと考え方を変えて、彼女も前向きにがんばっているかなと思う
一緒にいてもわからない部分はいっぱいあるから、どうしてもつい怒ったりしちゃって、自分でもいけないなと反省してる・・・
できないことをやってあげたいと思うし、できることをやらせてあげたいとも思う
本当に何もできなくなると困っちゃうから、無理してやらせてるというところもあるんですよ
彼女が乗馬をはじめてから変わったと思うのは、目標ができたこと
彼女の中に、乗馬という支えが今は出来ているのかなと思う」
と言います
それに対しBさんは、
「今に見えなくなってみろ、わかるぞ(笑)」
と小悪魔のようにかわいく反撃した後で言いました
「世の中ってどうにもならないことってあるのかなとわかったんですよね
今までは何でもどうにかしようと思ってやってきた
どうにかしなきゃいけないし、みんなもそうやって頑張ってるし、できないってことはあまり素敵なことじゃないって思ってたけど、それがどうにもならないこともあるんだなって思ったら楽になりました
どうにもならないこともあるけど、どうにかなることだってあるし、今はどうにもならなくても、先でどうにかなることもあるかもしれない
今どうにかなることも、先はどうにもならないかもしれないじゃない
それは、誰にでも来ることだなって思う
1週間ぶりとか1ヶ月ぶりに行ったところで、こないだは見えていたのに今日は見えなくなっていると、胸がすごく苦しくなっちゃう
それはそれで仕方ないし、胸が痛む自分は自然だし
何もない女性でも、老化がすごく気になるかもしれないし、みんななりたくない自分と闘っているということに関しては同じなのかなと思う
私にとって目が見えない不安は、お年寄りにとっては、人生の不安だったりして、病気じゃなくても『あと10年生きられるかしら』って思いながら生きているのかもしれない」

乗馬療法の効果は、身体的にも精神的にも様々なものがあるようです
しかし、私はここに集まる人たちの笑顔を見て、「効果」という簡単な言葉では語りつくせないほど大きなものを乗り手に与えていると感じました
その笑顔を見る反面で、このような場所へ出向くことなく、部屋へ閉じこもっている障害者の存在も知りました
体の障害は、その人の心へも大きな障害をもたらす場合もあります
人に心を開くことができなくても、言葉を発しない動物になら心を開くことができるかもしれません
乗馬療法は、障害者にとっていろいろな可能性を見出すためのひとつの手段になり得るのではないかと思います

しかしながら、「手放しで乗馬療法を推薦してはならない」とコ−チはおっしゃいます
「障害者乗馬は、家族・馬を扱える人・障害を客観的に判断きる人が三位一体になっていなければならない
日本では、障害者乗馬についていいことばかりを言っている
海外では、馬に乗ることがどういうことなのか、人を怪我させることがどういうことなのかをしっかりと理解しているので、手放しでいいとは言わない」
と、安易に乗馬を勧めることによって、危険性を認識せず気軽に乗馬をしてしまうことを危惧していらっしゃいます
例えば、馬は感情のある動物ですから、今日乗れる馬、今乗れる馬を見極められる人がいること
そして、その日の乗り手の体調や症状を聞いて、医療的な裏づけで、乗馬していいかどうかを判断できる人がいること
時には、乗馬をしてはダメだと言える権限を持った人が必要なのだと知りました
健康な人でも、馬から落ちれば障害者になる危険性があるという点で「馬は危険物」だとコ−チはおっしゃいます
馬が何かに驚いて突然走り出した時、『こわいから』と言ってすぐには止められない
それだけ危険性のあるスポ−ツだということを認識して、馬に乗ってから下りるまでは自己責任(または家族の責任)により自分の意志で乗るのだと了解していなければならないということなのです

私は正直、乗馬が障害をお持ちの方の人生にこんなにも深く係わっているとは想像していませんでした
人は、本気で生きたいと思っている、生きていることを実感したいと思っているのだと強く感じています
そのような人たちにとって、馬と触れ合うことは楽しみであり、乗馬は目標にもなります
でも、少々ハ−ドルの高いと感じる障害者の方もいらっしゃるようです
そのような人たちをもっと気軽に、動物たちが救う手助けができないものか、引き続き取材をしていきたいと思います


    【参加者へのインタビュ−】

  • 会長さん 下肢機能不全(グレード2) 男性

    いろいろな大会への参加経験があり、2000年のシドニ−オリンピックにも出場なさっている

    いつも乗らないけど責任上、乗馬会へは毎回参加しています
    乗り始めて24、5年になりますかね
    きっかけは西部劇です
    子供の頃に見ていた西部劇の世界を自分でやりたくて
    一緒に乗馬をやっていた人が、障害者乗馬を全国的な組織でやりはじめて、ひょんなことで、ここでやっているから来てみないかということで、見学しに来て、それがきっかけで今日まで来ちゃったんですけどね

    普段は松葉杖を使っているんですが、最近は車いすに乗ることが多くなりました
    落馬したことが大きな原因かなと思うんですけど・・・
    背中にでっぱりがあって、ここをぶつけると下半身がしびれるんですよ
    最悪な落馬を2回やってまして、背中から落ちておしりをド−ン
    その2回の中で最悪なのが、7年前でした
    ロサンゼルスの国際大会に出た時に練習中にやりまして、大会には出たんですけど、一晩中うなっていたらしいです
    翌日、松葉杖で歩くのが大変でしたけどね
    女房が落馬した瞬間を見ていて、落ちた時に「バチ−ン」と音がしたと言っていました
    悪くしたら死んだ、そうじゃなければ完璧に車椅子だと女房は思っていたらしいんですけど、まだ松葉杖で歩いてますからね

    ある時期、馬が好きなんじゃなくて乗ることが好きなんじゃないかなと自分自身思ったことがあるんですけど、やっぱり馬も好きなんだという気になりました
    乗った時の馬とのコンタクトが楽しいんですよ
    お互いに意志を通じ合って、こっちの気持を伝えて動かすというところ
    我々障害者というのは、普通の人たちとバランスから何から違うでしょ
    重心が違うし、普通は脚を使って馬を前に出す、坐骨で押す、それが普通のやり方なんだけれども、障害者だと全然違うわけですよ
    そうすると、普段私が乗っている馬は普通のでかい馬なんですけど、普通の人も乗せているんです
    だから、私を乗せた時にはいつでも、『何をしたらいいんだい』という感じで、馬が戸惑っていますね
    馬場を1周2周している間にだんだんわかってくれて、受け入れてくれて、後は思いのままという感じになります
    そうなった時の楽しさというのが忘れられないわけなんですよ

    最初は何が何だかわからずにしごかれてました
    先ずは、アメリカから入ってきたウェスタンの乗馬クラブへ飛び込んだんです
    障害者は私ひとりだったけど、もちろんその当時は障害者乗馬のしの字もなかった時代で、普通の人たちの中で部班運動(何頭もつながって馬を動かす)をやらされて、ガンガンしごかれてましてね
    その時使っていた鞍というのが、ウエスタン鞍というアメリカの鞍で、カウボ−イが作業の時に使うものなんですけど、かたいんですよ
    早足なんかするとガンガンぶつかるので、お尻がズル剥けになるんです
    血の混ざった体液でズボンがびしゃびしゃになっちゃう
    考えて、タオルをたたんでお尻の下へ入れると、タオルが体液でべちゃべちゃになって体温で乾いてバリバリになっちゃったりして(笑)
    それでも乗りたかったですね
    だんだん工夫を重ねて、スポンジをキルティングに挟んで縫ってサポ−タ−に縫いつけてなんていろいろやってみてひとつに落ち着きましたけどね
    それは、オリジナルです(笑)
    人によっては、血が染み出してジ−パンが赤くなっている人もいますよ

    それを乗り越えてきたからここまで来れたんだと思うんですけど、乗り越えられるだけの想いがあったんでしょうね
    これだけ大きな動物を相手にしてやるスポ−ツって乗馬だけじゃないですか

    お尻をぶつけた2度の落馬の他にも、落馬で骨折2回してますし・・・
    私、生まれつき足の感覚がないんですよ
    場所によって辛うじて感覚のあるところもあるんですけど、全体的に感覚がないと言っていいくらいなんです
    それで筋肉が発達してないでしょ
    折れたのがわからないわけですよ
    翌日一日中歩き回って、「なんか痛い・・・おかしいな」と思う
    私の足は、足関節固定術で動かないようになってるはずなのに、動いたので左の足首が折れてるとわかったんです
    右の足首も折ってるんですけど、それは酔って転んだんです(笑)
    この時は左の経験があったので「動いた、折れてる」とわかりました

    あと左肘も骨折しました
    眉のところにぷつっと傷跡があるでしょ
    これは山の中で走っていて顔から落ちて、コンクリ−トをぶっ壊したような尖った石がゴロゴロしているところに顔から落っこちちゃったんですよ

    Q.それだけ怪我をしてこわくないですか?また落ちるかもと思わないのですか?
    A.左足首を骨折した時は、ウエスタンの大会で競技に出てたんですよ
    あることで馬が驚いて、突然後ろ足で蹴り上げて走り出しちゃって落ちました
    その時はこわくて、1年ぐらいですかね・・・乗れなかったです
    久しぶりに乗りに行った時に、偶然障害乗馬をはじめた人としばらくぶりに会って、来てみないかということでここに来てみた
    ここの馬は小さいでしょ
    「あっ、これなら行けそうだな」と、ここで精神的なリハビリをやったんです
    今でもこわいですけどね
    こわさというのは残っているのか、あるいは馬がよくわかってきたために馬のこわさを認識するようになったのか、どっちかはわからないですけどね
    馬を知れば知るほど馬のこわさはわかってきましたからね

    Q.乗馬はライフワ−クですね
    A.ところが、シドニ−のパラリンピックで燃え尽きちゃったんですよね
    終ってから何にもやる気が出なくなっちゃって
    気力・体力・財力を使い果たした(笑)
    その後、男の更年期障害に移行しちゃているようなんですよ
    そのまま気力が萎えた状態で、更年期で萎えっぱなしで・・・
    月に1回は乗りたいと思っているんですけどね

    Q.東京障害者乗馬協会の課題はありますか?
    A.いくつもあるけど、ひとつ思いつくのは、小さいこどもたちが多いので、乗るのを待つ間に飽きさせないこと
    あと金銭的な問題ですよね
    今年の全国大会は、九州の大分なんですよ
    向こうの馬を借りるということもできるんだけど、どういう馬なのか知らない馬を借りるのは不安
    だいたい乗馬クラブの人たちは、「この馬はいい馬ですよ、おとなしいですよ」としか言いませんからね
    実際乗ってみたらそうじゃなかったという例が多いので、ここの馬を持って行って、乗り慣れていて安全な馬を使いたい
    馬運車で運びますから、燃料費であるとか高速代であるとか人件費、借場料とかいろいろお金がかかるんですよ
    コ−チも馬がきちっとわかる人でないと困るわけですからお金がかかる
    特に今年は飛行機を使って行かなきゃならないから、今の状態ははっきり言ってキツキツで、今年は何とかなった、でも来年はわからないという毎年綱渡りです

    Q.スポンサ−になってくれる企業はないのでしょうか?スペシャルオリンピックスも資金面では困ってましたが
    A.スペシャルオリンピックスは、司会に西田ひかるさんなどタレントを使ってあれだけの開会式ができるわけですから、アピ−ル度が高いんですよ
    こっちはそうは行かないんで・・・
    補助金担当係を決めましてね、いろいろな協会が公募しているのをアンテナ張っていて、例えばNHKが補助金公募していると、そういうところに応募する

    Q.ボランティアさんは大勢いらっしゃいますね
    A.ボランティアは、ちょっとお休み中かなと思う人たちを含めると100人以上はいるんじゃないですかね

  • 現場監督さん 右半身機能不全(グレード3) 女性

    <ボランティアについて>
    うちに来てくださるボランティアさんは、クオリティが高いんですよ
    それは胸を張って言えます
    どんな重度の障害を持った人が来ても、ボランティアさんは驚かない
    素晴らしいですよ

    <障害者のお子さんをお持ちの親御さんいついて>
    障害を持っている子の親って、何かを見つけてやりたいと思っている
    障害者は、何かをしようと思っても、あそこじゃだめだとかこわがってだめだとかで、できないことが多いから
    何かをさせてやりたくて、何かをした時にこどもの笑顔とか表情とか感想が良ければ親は結構がんばれる
    「ここへ来てあの子の笑顔をはじめて見た」という人もいるし、そういうのを見ると親もがんばって続いちゃう
    やれる環境があって、その中で本人が笑えるものを探している親が多いんですよ
    うちに来れば安全だと私は胸を張って言える
    「先ず乗ってみましょうよ
    乗ってみて本人が不快感を感じたり、お母さんが危ないと感じたら止めようよ」
    止めるのも重要なことだからね

    <牧場について>
    障害者がいてボランティアがいれば障害者乗馬ができるかというとそうではなくて、場所と馬がなくてはならない
    最初は、定着した場所がなくて、ジプシ−のように転々としていたんですよ
    あそこに「障害者を乗せてもいいよ」と言ってくれている牧場があるから行ってみようかと、3箇所くらい転々としました
    ある時、ボランティアの人が、
    『自分の馬がいる牧場があるから行ってみない?」
    と連れて行ってくれたら、馬が和種(日本古来の在来種)だからちっちゃくて・・・
    馬が日本人のような顔をしてるのよ!顔が丸くて足が短くて(笑)
    その時の会長が、
    「ここいいね、定着させてくれる?」
    という話になって、
    「とりあえずやってみようか」
    と、牧場長さんが馬を私たち用に作ってくれるんですよ
    何があってもビクつかない馬、声を発しても車いすが近づいても平気
    馬は、下からシュルシュルと近づいてくるものをとてもこわがるから、サラブレッドなら車いすが近づいたら騒ぎまくるでしょうね
    杖や松葉杖も平気
    多少乗り手が暴れても、馬は「はい、わかりました」とじっとしている
    牧場と馬には、本当に感謝しています
    牧場長も大事なスタッフだと思っていて、会長の次に偉いくらい(笑)

  • 牧場長さん 笠を被った男性

    <木曽馬について>
    こういう馬がなかなかいないからね
    障害乗馬って馬の問題なのよ
    大きい声を出してもびっくりしないとか、大きさがいいとか
    背が低いとサポ−トしやすいということもあるでしょ

    Q.どんな調教をしてるのですか?
    A.それは調教じゃなくて馬の理解力!

    Q.どうやって馬の理解力を引き出すのですか?
    A.血
    血統から判断力のある馬を探すの
    誰が乗っても馬がちゃんと判断してるわけ
    大きな声が聞こえたら、誰が出したのか、どういう状況で出したのかということを馬が判断できる
    (大きい馬を指して)こいつらはできないから
    普通の時はできますよ
    何かトラブルがあった時、例えば、車が突然クラクション鳴らしたとか、1頭がすべって他の馬にタッチしたとか、環境の変化があるとするでしょ
    そういう時に、障害者乗馬に使っている木曽馬たちは『何やってるんだ』と考えるけど、こいつら(大きい馬)は『え−−−??』とパニックになっちゃうんですよ
    そこら辺のところの知的なレベルが違う
    簡単に言うと、はじめて通る道で水溜りがあって木が1本倒れていたとする
    これを歩いて越えられるのか、飛ばないと越えられないのか、避けなきゃいけないかを判断しなければならない
    人が馬に乗っていてそれを見た時、『こういう風にすればいいよ』と思った判断と同じ判断をしてくれる馬がいいんですよ
    木曽馬は、判断力のレベルが人間に近いから、安心して乗馬ができる
    日本にこういう馬はいっぱいいるんだよ
    みんな潰してるんだ、食っちまってる、刺身になっちゃう
    だから、こういう馬を探してきてる
    同じタイプでも障害者乗馬に向いてる馬と向いてない馬がいるんだよ
    ドキドキが優先しちゃって『うわぁ〜』となる馬もいるし、平気に普通に乗れる馬もいて、レベルにはそれぞれ差があるんだけど、はじめての人が乗っても大丈夫な馬にしようとか、障害者が乗っても大丈夫な馬にしようとすると、だんだん狭まってくるじゃないですか
    狭まってきたラインの中の馬をこういう風にして使ってあげると、ちゃんと使える
    同じ種類の馬を持ってきても同じ効果が出るとは限らないから、それを使いながら判断してあげなきゃいけない
    こいつら(障害者乗馬に使っている馬)こんなにトロっとしてるけど、流鏑馬(やぶさめ)でも何でも走るよ
    そういうことを要求すれば、それだけのことをちゃんとすることができる
    それが普通の馬と違うところで、障害者乗馬には比較的安心して使えるんですよ

    Q.どうして木曽馬にはそのような能力が備わっているのですか?
    A.こいつら(障害者乗馬に使っている木曽馬)は、人間が飼って血統をつないでいるわけ
    お年寄りとか女・子供とかが、飼える条件の中で生きているの
    どさんことかは、山の中に入って行って、冬になると自然の中に投げちゃって、馬は勝手に生きているわけだ
    そういうことを繰り返しながらやっているから、どさんこは血をつなぐことを野生の流れの中で勝手にやってる
    常に人間が係わっていないから、『この子はお利口だよね』という人間にとって良い感覚がなくなる
    どさんこだって使えるけど、人間の感覚にいいかどうかはわからない
    そういうところで、この木曽馬の系統の馬は、生活の中で淘汰されているから比較的安定している

    Q.競走馬も人間によって作られた馬ですけど?
    A.競走馬も人間に作られているけど、目的が違うから
    走ればいいだけだから、人間の言うことを聞いたり判断力というのは走るためには邪魔でしょ
    コ−スはきれいになっているんだから、あとは馬が興奮して走ればいいんだよ
    早く走るということは興奮の度合いだし、こわいから早く逃げるということじゃないですか
    こいつら(木曽馬)は丸い人格をうまく育てられているわけ
    こっちの大きい馬のような馬車馬の血統は、臆病なの
    馬車みたいに重いものを引くなんて、利口だったら『こんなに重たいものなんか引けるかよ』と思っちゃうでしょ
    木曽馬も思っちゃうんだけど、引かないのよ
    馬車馬は、長い手綱でペンペンてされるとスタ−トするわけ
    判断しなくても反応してる
    だから判断のレベルが低いの
    そういう風にして、人間が馬を作っちゃうんだよね
    アジアの方の馬は、ひとつひとつ丸い人格みたいなものを要求されながらずっと来ているから、精神的に安定している馬が多い
    絶対とは言えないよ
    こいつら(木曽馬)に判断力がなければ、肉になっちゃうわけだ
    だからうちのような牧場で使っていると生きていけるわけ
    そういうのを作っていかないと種が滅びちゃうじゃん
    日本の在来種を和種っていうんだけど、そういう状況になっているから、適正にあるものを使ってあげてる方法論で組み上げていかないと続いていかないわけ
    社会では、ここ以外ほとんど木曽馬はいらないんだよ

    Q.木曽馬を使っていて問題点はありませんか?
    A.あるある
    近親交配になっちゃってるから、バランスがちょっと崩れてきている
    だからできるだけ新しい交配をするんですけど、そうすると能力が下がっちゃう
    どさんこと木曽馬を合わせると、非常に運動能力は高くなるんだけれども、その分だけ判断力はちょっと下がる
    そういうところではちょっと問題があるかなぁ

    Q.馬が年を取るとどうなるんですか?
    A.80%ぐらい(20歳くらいまで)使ったら、観光で見せるだけとか大学の研究所など、もっと楽な仕事ができるところからの需要がある
    馬は使えば長生きするんだよ
    使わないとすぐ弱っちゃう

  • 聴覚障害 12歳 女性

    付き添いである母に手話で授業の内容を伝えてもらい、普通の学校に通っている
    とにかく馬が大好きで、乗馬をしていない間も、一頭一頭全ての馬にブラシをかけていた
    母との会話では、ほとんど手話を使わず、母の理解し合えるまで、何度も優しく繰り返し話している姿が印象的だった

    <母のコメント>
    明るい性格だから、普通の学校に行ってるけど、これが珍しいことにいじめられたことがないんですよ
    だから中学校もそのまま上がりたいということで、普通の中学に通っているんです
    今は特別支援教育で、割と親が行かせたいと望めば、昔ほどは難しくなく通うことができるんですよ
    しかも、小学校6年間通ってたという実績があるから、すんなり受け入れられました
    だから、あの子は稀に見る環境の中で暮らしてきたんじゃないかなぁ
    普通なら、いじめられたとか、相手の言っていることがわからなくて自分だけ疎外された想いを持っていらっしゃるとよく聞きます
    私もそれをずっと心配してたんですけど、それはなかったんですね
    あの人の性格があんな風に明るいからか、そういうのがなかったから明るく育ったのか、どっちなのかなと思います
    聞こえないと相手が何を言ってるかわからないので、警戒した感じになる子が多いけど、そういうところはないですね

    Q.学校では、お友達とどのような方法でコミュニケ−ションを取っているのですか?
    A.小学校の6年間一緒だった子で、指文字が使える子がいるので、友達同士は指文字でコミュニケ−ション取ってます

    Q.母として大変だと感じることはどんなことですか?
    A.生まれつき聞こえないので、本人としてはそういうものだからと不便を感じていないんです
    親としては、意志疎通ができないというのが、どの親御さんも最初の悩みじゃないかなと思うんですよ
    こっちの言っていることが向こうもわからない状態でいる時期がいちばんつらかったですね
    書いたものが読めて、それが理解できるようになってきて、やっと意思疎通ができるようになった
    『待ってて』がわかってもらえなくて苦労しましたね
    トイレに行くと、私がいなくなるから泣いちゃうんですよ
    だから、トイレの鍵が閉められない(笑)

  • 脳性マヒによる体幹機能障害 中2 女性

    以前通っていた養護学校のバスの運転手さんの紹介で乗馬をはじめ、この日もその運転手さんと一緒
    「娘のようにかわいがってもらっています」とお母さんも感謝

    <本人のコメント>
    軽歩(2拍子で歩く)は経験済みなので、早く自分で馬を操れるようになりたい

    <母のコメント>
    娘は、乗馬をはじめてから積極性が出て、体の面では、馬に乗ることで股関節が広がりましたね
    はじめは普通の乗馬クラブへ行ってみたけど、高くてお金が続きませんでした
    今日はお天気が心配だったけど、本人が晴れやかな表情をしているから、来てよかったぁ

  • 多発性神経炎 43歳 男性

    カヌ−もやってたけど、手の力がなくなってきて、一緒に行く仲間もいなくなってしまったので、今は乗馬だけです
    体を動かさないと、筋力や体力が落ちてしまうので
    かと言って普通のスポ−ツは難しいし

    動物は好き、気持ちはわかんないですけど(笑)

    自分の病気は、徐々に進行しているので、不安は自分の中で消化しています
    自分の中にあきらめはないので、どこかで治るかもしれないと思っています
    加齢と共に体力は落ちますから、体力や筋力が落ちないように乗馬をしてます
    将来的にいい薬ができた時に、その薬が効く体力を保っていないと

    病気がわかった時、不安はあったけどひきこもりはなかったですね(笑)
    生活がかかっているし、働かないと食べては行けないし
    落ち込んでる場合じゃない
    楽しく生きて行きましょう

  • 四肢痙性マヒ 34歳 男性 

    乗馬ははじめて5、6年になります
    それまでスポ−ツは何もしてない
    競馬が好きだからはじめました
    はじめて競馬場に行ったのはメジロパ−マ−の宝塚記念だったんよ
    そこから競馬にはまって、馬券も当たらないから馬に乗ろうかなって(笑)
    乗馬は運動神経いらないもん

    Q.体の調子は良くなっていますか?
    A.うん、疲れるだけ
    ほとんど閉じこもりやから

    Q.閉じこもりなのに乗馬をはじめるなんて決心はいらなかったですか?
    A.いらな〜い
    ただ馬の乗りたかっただけ
    な〜んも考えてないの(笑)
    どやろ・・・まぁ暇つぶしにはいいかな(笑)
    嫌いじゃないし、遊びだから
    何が面白いんやろな・・・馬が好きなんちゃうかな
    だって、自分が動かんでも馬が動いてくれるし、他のスポ−ツより楽やん
    他のスポ−ツは自分で動かなあかんやん、そこが大きな違いかな

<文責/泉 あい>
GripForum - アニマルセラピ−スレッド

追記 「GripForum」へたくさん画像をUPしていますので、そちらの方もご覧ください

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