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2005年6月27日 (月)

拉致被害者の家族会座り込み

Retu 6月25日取材

6月24・25・26日の3日間、北朝鮮による拉致被害者の家族会の方が座り込みをなさっているという報道を知って、首相官邸のそばへ行ってきました
家族会のメンバ−の方もかなり高齢になっていらっしゃいます
昨日も今日も東京の気温は30度を超え、この炎天下の中での座り込みは、高齢者でなくともつらいでしょう
ふとそう思った私は、居ても立ってもいられず、国会議事堂へ走りました

現場は風はあるものの、陽射しは強く、ほんの少し日向に立っているだけで、じりじりと肌が焼け火照ってきます
座り込みに参加している人たちのほとんどは、帽子を深くかぶり塀にもたれて座っていました
氷が解けてしまった袋を破り手にかけている人や、じっと本を読んでいる人、団扇であおぐ人、うつむいて動かない人
それぞれ自由なようですが、どことなく厳粛な空気が漂っており、夏の日差しには似合わない光景だと感じました

それぞれの胸や腕にはブル−リボンがつけられ、青い字で「拉致被害者 経済制裁」と書かれたチラシを手に持ち、通り過ぎる人々にアピ−ルするかのようにその紙をかざす賛同者
座り込みの列は長く、こんなに多くの賛同者がいらっしゃるのかと驚かされました
拉致被害者のご家族がいらっしゃる辺りは、マスコミなのか、座り込みの人なのか、通りすがりの人なのかわかならい人だかりができています
私が聞いた範囲では、東京都全域や埼玉からみえた方が多かったのですが、そばにあった駐車場には「宮城」と書かれた車もありましたし、京都からもいらっしゃっているようでした
中には車椅子で参加なさっている人、盲導犬を同伴して座り込みをなさっている方もいらっしゃいます
ご自分は地面に直接座りながら、盲導犬には敷き物を敷いた上にアイスノンを置いてあげていた青年
その同伴者が盲導犬だけだったので、気になってしばらく観察してしまいました

同伴者、盲導犬エコ−は、真っ黒い毛皮が美しい大きなラブラド−ルレトリバ−です
エコ−は、ご主人の大介さんが立ってハ−ネスを掴んでいると、いつ合図を出されてもいいように準備をしているように見えました
私たちが雑談していると、「休んでいいのかなぁ・・・」という表情でゆっくり座り、ご主人がちょっとでも動くとすぐにすくっと立ち上がります
真っ黒な体が余計に暑そうで、
「よくがんばったね」
と周囲の人にほめられて、犬が一頭いるだけで、その周囲の空気が違うように感じました

横田さんをはじめとするご家族の方たちのご挨拶がはじまると、人だかりが一回りも二回りも大きくなりますが、どの人も通行人を気遣って、通り道を開けて立っていました
列の端の方へ座っていらしゃっる方のためには、大きなスピ−カ−が用意され、大音量でスピ−チが流されました
座っていた人のほとんどが立ち上がり、声のする方へ体を向けます
時々まばらな拍手が起こるのは、「自分は共感しています」という気持の表れなのでしょうか
かなり離れたところの方からも拍手が聞こえ、こんなにひとりひとりの拍手の音が大きいと感じたことははじめてでした

座り込みをしている人へインタビュ−してみると、
「こういうことは、ひとりでも多くの方が参加することに意義があると思います」
と話す人が多く、たったひとりで参加している方も多かったようです
30代くらいのひとりでご参加なさっている女性へ
「賛同なさって、おひとりで参加なさったのですか?」
と質問すると、
「当たり前じゃないですか
同じ日本人として、帰ってこれないなんてつら過ぎます」
と言って泣き出してしまい、他人事ではなく自分のこととして当事者意識をお持ちのようだと感じました

「明日も来られるのですか?」
という質問には、ほとんどの人が、
「明日は別の予定があるので」
と言い、3日間連続で座り込みをする一般の賛同者は少ないように思いました

拉致被害者のご家族のご挨拶の内容は、初日(24日)のものが「Blue jewel」さんに掲載されています
ご家族の悲痛な叫びを間近で聞くと、取材とは言え唇が震えてしまいます

家族会の方がスピ−チをしている最中に、
「朝鮮総連のところへ行け−!」
と叫ぶ男性もいましたが、座り込みをしている方からは、
「誰?あの人」
「相手にするな」
「昨日来てた人とは、また違う人だよね、嫌ねぇ」
と明らかに迷惑がられ、警官にもマ−クされていました

座り込みが終了すると、横田さんご夫妻や増元照明さんらメンバ−の方は、列に沿って歩きながら、
「今日は、暑い中ありがとうございました」
と、参加者ひとりひとりに頭を下げてご挨拶していらっしゃいました
建物の入り口付近まで来た時、世話人のような方が、
「どうぞあちらの方へ」
と休憩室へ案内されても、
「でも、あそこまでご挨拶してこないと」
と横田滋さんが言い、列の最後のひとりまで、頭を下げに行かれました

小泉純一郎首相は同日、座り込みについて「家族はつらいでしょうが、経済制裁すれば解決するという状況では現在ない。よく関係国の判断を尊重して協力していかないといけない」と記者団に語った。

毎日新聞 2005年6月24日 東京夕刊

北朝鮮へ経済制裁を加えろというのは、「やられたらやり返せ」というような気がして、私は賛成できません
でも、3日間汗を流して訴えた人たちに対して、メディアを通してのみ「気持ちは理解している」と言う小泉総理に誠意があるとも思えないのです
長い間、拉致問題について何の対処もせず放置していた国には責任があり、家族会の方々はその被害者であると思います
「気持ちは理解できます」とただ言われても、何の手も施さないのでは、家族が苛立つのは当たり前のことです
本当に、家族の人たちの悲痛な叫びを理解しているのなら、ひざをつき合わせ、正面から向き合って、経済制裁ができない理由や、今後国として拉致問題にどう取り組もうとしているのかを説明し、理解を求める努力をして欲しいと、ご家族の姿を目の前に見て思いました

<文責/泉 あい>
GripForum - 拉致被害者の家族会座り込みスレッド

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コメント

はじめまして。
記事のご紹介とTBをありがとうございました。
平野フミ子さん、有本嘉代子さん、横田拓也さんのテキストもUPしました。
よろしければどうぞご覧ください。

これからもよろしくおつきあいください。

投稿: 金木犀@Blue jewel | 2005年6月27日 (月) 20時06分

金木犀@Blue jewelさん
はじめまして
25日は、私も現場にいましたが、スピ−チを全て聞くことはできませんでしたので、参考にさせていただきました
ありがとうございます
こちらこそ、これからもよろしくお願いします

投稿: ぁぃ | 2005年6月27日 (月) 20時56分

はじめまして。ご自分の足で丁寧にたしかめて丁寧に書かれたレポートに
嬉しくなりました。プロのマスコミの方がもう少し原点に返って頂かないと、
本当に困ると思うのですが…。
傲慢に見える取材姿勢で情報源としての信用を落としたり、
記事そのものの比較や内容についての検索がネットで容易に出来ますと、
視聴率や部数にそのうち影響が出てくると思われます。

またお邪魔させてくださいませ。

投稿: 枇杷 | 2005年7月 1日 (金) 09時38分

質問ですが、曽我ひとみさん、蓮池薫・透さん、地村靖・フキエさんご一家は参加されていたのでしょうか?ニュースでは姿が一度も映らなかったし、インタビューなどもなかったようですが。
特に曽我ひとみさん一家は米国から帰国して
前日に東京に滞在していたと報道されていたので、きっと参加されていたと思いますが。

投稿: ふみ | 2005年7月 1日 (金) 12時37分

枇杷 さん
その時々は必死で取材をしていますが、「もっと突っ込めたのに」と反省する日々です


できれば毎日来てくださいませ♪

投稿: ぁぃ | 2005年7月 1日 (金) 20時37分

ふみさん
>質問ですが、曽我ひとみさん、蓮池薫・透さん、地村靖・フキエさんご一家は参加されていたのでしょうか?

私が行ったのは25日だけですが、曽我さんも蓮池さんも地村さんもお見かけしませんでした

投稿: ぁぃ | 2005年7月 1日 (金) 20時40分

お答え、どうもありがとうございました。
きっと、ほかの日には参加されているのでしょうね。曽我さんは米国でも今度は私の母に会いたいと言っていたし、拉致問題の解決を一番願っているはずですから。

投稿: ふみ | 2005年7月 2日 (土) 13時36分

新潟日報の記事ですが。
佐渡で、瀬戸内寂聴さん講演(6/26)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/index.asp?id=2005062627176" rel="nofollow">http://www.niigata-nippo.co.jp/news/index.asp?id=2005062627176
(他参考・http://www.hikoboshi.com/eba/inori157SetouchiJakuchou.htm
あとこの新聞やテレビで報じられたところによりますと、ジェンキンスさんには佐渡からTIME誌の記者がついて行かれたそうです。
自叙伝の出版契約金を帰国費用に当てられました。ということは、アメリカでジェンキンスさんの本が出版されるわけです。
また曽我さんはお母さまのミヨシさんが安否不明のため、これから度々、集会に出席はされることかと思います。

地村さんはお父さまの保さん、奥さまの浜本富貴恵さんのお父さまとお兄さまが座り込み参加されました。
http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200506/20050624.htm" rel="nofollow">http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200506/20050624.htm
…地村保さんについては、こういうお話もあります。
>保志さんが行方不明になったショックで倒れた妻・と志子さんの介護をしながら、
>人口80万の福井県中から57万もの署名をかき集めた猛者である。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Euro/1880/people_1.html

蓮池薫・透氏についてはこちら。
http://www.geocities.jp/sasaeru_kai_chuo/index.html" rel="nofollow">http://www.geocities.jp/sasaeru_kai_chuo/index.html
…現在、薫さんは、新潟産業大講師・翻訳家のお仕事をされています。
 透さんについてはこちら。
http://adoruk626.seesaa.net/article/2815792.html" rel="nofollow">http://adoruk626.seesaa.net/article/2815792.html

いずれのケースも、今は育ち盛りのお子さんを抱えてのご帰国で、公人→私人として生活できる基盤が整うことが第一、のようです。
日本社会への適応も含め、未帰還者のご家族とは違うことに取り組まざるを得ないのですね。

投稿: 枇杷 | 2005年7月 2日 (土) 21時50分

枇杷さん
情報ありがとうございます

>いずれのケースも、今は育ち盛りのお子さんを抱えてのご帰国で、公人→私人として生活できる基盤が整うことが第一、のようです。
日本社会への適応も含め、未帰還者のご家族とは違うことに取り組まざるを得ないのですね。

日本へ帰ってこられても、どこへ行くにも注目され、プライベ−トはないという感じで、このまま一生このような生活が続くとしたらお気の毒だと思います

投稿: ぁぃ | 2005年7月 4日 (月) 10時27分

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