日本人のメディアに対するニ−ズ
「国際シンポジウム ネット・ジャーナリズムの可能性」へ行ってきました
「ネットジャ−ナリズム」という点では、韓国のオーマイニュース代表理事兼代表記者であるオ・ヨンホさんのお話がためになりました
オさんは、回りに50世帯くらいしか家が見えない小さい田舎の農村のご出身だそうです
インタ−ネットとは無縁の農村で育ちますが、その後反政府メディアに10年間籍を置いたことで、今日のオさんがあるのかもしてません
「月刊マル」という雑誌で、いくら良い記事を書いても主流の新聞ではないために記者クラブには入れない、評価もされない
記者個人が記事を書くのに、大新聞であるかないかということで記事の評価がされてしまうという体験をし、「全ての市民は記者だ」というコンセプトを思いついたそうです
それは、現場で堂々と取材をするためのコンセプト
オさんは、「肩書きを外して話そう」と言います
韓国の記者クラブがオ−プンになったように、日本でも、どこに所属しているジャ−ナリストかということではなく、仕事で評価をすることが常識でいいはずなのに、当たり前のように会社名がブランド化していると痛感します
パネルディスカッションでは、「市民記者の書く記事に信憑性があるのか」という質問が投げかけられました
オさんは、「職業記者は、訓練されている」それに対して「市民記者は自分が見たことを書く」と言います
当然、訓練を受けていない市民記者の記事は、文体もいろいろで読みにくい
でも、オ−マイニュ−スのもうひとつのコンセプトとして「記事の公式を破壊せよ」というものがあります
それは、市民記者は好きなように楽なスタイルで書けということだそうです
それと同じ比重で要求されることは、正確さ
事実を書くこと、事実を誇張しないことは、当然約束して記事を書くのです
もうひとつ市民記者が同意しなくてはいけないのは、常駐している職業記者に決定権があるということ
市民記者が書いた記事のウラを取るために、常勤の記者が現場に行って確認をすることもあるそうです
ウラ取りは確実にしているものの、危険性は常にあり、いつも緊張しているとオさんは言います
でも、訂正記事や訴訟は、今まで10件にもならないし、それほど深刻なものでもないそうです
それに、訂正記事を書くのは、市民記者よりも常勤の記者の方が多いというからびっくりです
常勤の記者は、訓練を受けている分、自信があり傲慢だとオさんは感じるそうです
そして、感心するのは、訂正記事は掲載した記事と同じくらいの大きさで載せるという点
人間は、過ちを犯すものです
ちゃんと「ごめんなさい」って言うのは人として当たり前のことですよね
市民記者が書いた記事の中でも、ウラ取りが難しいのが、エッセイ
「昨日主人とけんかしましたという記事を書かれて、ご主人に『本当にけんかしたのですか?』と確認するのは失礼な話です」
と笑い話のようにオさんは言いますが、笑えるのは、韓国に住民登録ナンバ−というシステムがあるからだと思います
その記者の住民登録ナンバ−を確認すれば、身元がわかるシステム
例えば市場で働く人が市場での出来事を書いたなら、信憑性が増すというように、住民登録ナンバ−は、運用上とても便利なシステムと言えるでしょう
日本では、住民登録ナンバ−のないため、市民記者の身元を確認するのには時間と労力がかかります
ライブドアさんやJANJANさんは、どうなのでしょう
市民記者の登録をそこまで徹底して行っているのでしょうか
身元を確認した上で、記事のウラも取るオ−マイニュ−スの信憑性は、鉄壁と感じます
オさんは、市民が参加するメディアの出現は、職業記者たちを揺るがすと言います
でも、市民記者たちは、職業記者たちが作り上げてきたジャ−ナリズムの基本の上に存在しています
インタ−ネットは、時間と空間の制約を飛び越えたので、アマチュアも参加できる
それは、民主主義の質を高めることになるので、多くの市民が参加するべきで、参加型民主主義は、メディアの中で実現するとオさんは言いました
韓国の人たちは、北からの脅威を感じながら、自分の命を守るために正しい情報を欲していました
市民記者が誕生したことは、必然性があったとオさんが言うように、歴史的な背景も韓国のメディアに大きく影響しているようです
オさんは、日本について
「既存のメディアがどれだけ日本人のニ−ズを満たしているか、市民は、参加する準備はできているのか」
と言います
どれだけの人が、既存のメディアに疑問を持っているのでしょう
「みんな気づいている」ってよく聞くけど、「新聞に書いてあったから本当だよ」とか「テレビでやってたから本当だよ」という会話もよく聞きます
本当はどうなの?
「みんな不信感を持っている」というみんなってどれくらいなんでしょうか
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コメント
いつも興味深く読ませて頂いてます。
一点気になる部分がありました。
>韓国の人たちは、北からの脅威を感じながら、自分の命を守るために正しい情報を欲していました
この部分なのですが、ohmynewsはノムヒョン政権を支持しているといわれ、基本的には親北系と思っていました。
韓国に市民ジャーナリズムは発展したのは、既存の大手3紙(朝鮮、中央、東亜でしたか?)が保守党寄りで、反共路線をとってきたことに対するデモ世代の反発があった、という解説をよく聞くのですが…ほんとのところはどうなんでしょうか。
投稿: 山川草一郎 | 2005年6月 8日 (水) 11時01分
山川草一郎 さん
私が言いたかったのは、オ−マイニュ−スよりずっと前の歴史のことで、オ−マイニュ−スが北から威圧されているという意味ではありません
紛らわしい書き方で申し訳ありません
オさんがおっしゃるには、朝鮮半島が南北に断絶したことで、韓国の人たちは、自分の命を守るために沈黙しなければならないと教えられてきたそうです
オさんは、学生運動で1年間投獄されたそうですが、「私たちが参加すれば世の中を変えることができる」と80年代に身を持って体験したそうです
長い間沈黙するしかなかった民衆の不満とテクノロジ−の発達により、今のオ−マイニュ−スがあるのかもしれません
山川さんのHPを拝見して、勉強させていただいています
このようなコメントをいただくと、とてもためになります
ありがとうございます
これからもよろしくお願いします
投稿: ぁぃ | 2005年6月 8日 (水) 12時50分
今度の記事で、ひとつだけ、「韓国では住民登録ナンバーがあるので、身元確認に便利」というふうに、サラッと書かれていますが、この制度こそがまさに国民総背番号制のことで、戦後の軍事独裁政権を維持する基礎となったものです。それによって国民のプライバシーが侵害されている部分もあるわけで、そこらのところの目配りも、今後、もし、ジャーナリストという職業を目指されるのであれば、必要ではないかと思います。
投稿: 古川利明 | 2005年6月 8日 (水) 17時51分
古川さん
本当に勉強することがいっぱいですね
知りたがりのピ−タ−なんですけど、知らないことがいっぱい
韓国って近くなのに、知らないことが多いんですよね
男の人って、知識が広いっていつも思うんです(女性でもそういう方はもちろんいらっしゃいますよね)
どんな男性でも、お話をするといろんなことをご存知だと感心し、尊敬します
投稿: ぁぃ | 2005年6月 9日 (木) 21時44分
あまり政治的話題で引っ張るのはご迷惑かとは思いつつ、
どうしても気になるので遠慮気味に。
まず
「私が言いたかったのは、オ−マイニュ−スよりずっと前の歴史のことで、オ−マイニュ−スが北から威圧されているという意味ではありません」
というのは分かります。でも、やっぱり・・・
「韓国の人たちは、北からの脅威を感じながら、自分の命を守るために正しい情報を欲していました」
の後に
「市民記者が誕生したことは、必然性があったとオさんが言うように、歴史的な背景も韓国のメディアに大きく影響しているようです」
が続いていると、
「韓国に市民記者が誕生した必然とは、韓国の市民が北の脅威に脅えながら真実を求めていたから」
としか読めません。
実際は、韓国の市民は長い間、軍事政権の抑圧のもとで
言論の自由もなく、真実の情報を求めていた
とオ・ヨンホさんはおっしゃりたかったのではないでしょうか。
書き方が紛らわしいと言うよりも、
事実関係が全然違うような気がするのですが。
「オさんがおっしゃるには、朝鮮半島が南北に断絶したことで、韓国の人たちは、自分の命を守るために沈黙しなければならないと教えられてきたそうです」
という部分も、
本当にそうおっしゃったのならそうなのかも知れませんが、
一般的な韓国現代史の認識からすると、かなり唐突というか、新説のように思います。
書くべきか悩んだのですが、事実関係に関わる内容で、どうしても気になったので。
もし不適当ならコメントごと削除してください。
投稿: 山川草一郎 | 2005年6月11日 (土) 01時33分
改めて読み直してみました。「朝鮮半島が南北に断絶したことで、韓国の人たちは、自分の命を守るために沈黙しなければならないと教えられてきた」という部分は、「韓国の歴代軍事政権が『北の脅威』を名目に言論統制を正当化してきた」という意味だと分かりました。この部分は問題ないと思います。すみませんでした。
投稿: 山川草一郎 | 2005年6月13日 (月) 13時24分
山川さん
文章の未熟さは、自分でもよくわかっています
自分にしかわからない表現をしているのではないかと注意をしていますが、最後まで気づかないこともあるんですょね
だから、わからない時やおかしいと思われた時は、遠慮なくご指摘ください
自分で書いておきながら、読者の方に置いていかれているなと実感していますが、必死について行きますので、よろしくお願いします
投稿: ぁぃ | 2005年6月16日 (木) 13時17分