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2005年6月11日 (土)

記者クラブの表と裏 【取材記11回目】

Itagakijpg 5月30日取材

政治評論家の板垣英憲さんにお話を伺いました
正直私は、評論家という職業を「怪しい」と思っていますが、板垣さんのプロフィ−ルを拝見した時に「これはいろいろな記者クラブを渡り歩いていらっしゃるに違いない」と思い取材を申し込みました
想像通り板垣さんは、埼玉県警記者クラブからスタートして、内閣記者会、総理府記者会、文部記者会、厚生記者会、虎の門記者クラブ(通産省)、建設記者会、公正取引所記者クラブ、兜クラブ(東京証券取引所)、自治省記者クラブ、労働記者会、参議院記者クラブ、自民党「平河クラブ」、野党記者クラブなどと日本を代表すると言っていい記者クラブに所属なさった経験をお持ちの方でした
記者クラブに沿ったお話の中には、現場でしか知りえない興味深いものも多くあります

記者クラブの記者と取材対象者の間には、取材上のル−ルがあるそうです
午前と午後の1日2回、官房長官が記者発表をする
ゾロゾロ金魚のフンみたいに歩きながら、立ち話を聞くのだが、この時記者は、向こうが何をしゃべろうと、しゃべっちゃったらいただき!
『これはオフレコにしてくれ』と言われたら書いてはいけないが、その場合取材対象者側が、先に断っておかなければいけない
言っちゃった後に『これはオフレコにしてくれ』と言うのは違反
座って話を聞く懇談には、メモを取っていい『メモ取り懇』と取ってはいけない『メモなし懇』がある
メモ取り懇は記事にしてもいいが、メモなし懇は書いてはいけない
首相官邸、国会の中、政治家の自宅での懇談は、メモを取らないで聞いている
その時『オフレコで』と言わなければ書いていいが、誰が言ったかは書いてはいけない
その場合『政府の首脳は』と書かれているのは官房長官、『政府筋』となると副長官という約束事があるので、記事を読む方の中の暗号を知っている人にはわかってしまう

板垣さんが担当なさった首相についてのお話も興味深いです
朝、車から降りて執務室へ入るまでの道中、記者が質問をするわけですが、その時の首相の反応の中に個性が見られます
『総理、今日は何かありますか?』と聞くと、大平さんは答えるまでに時間を取ってずっと黙っている
記者たちも大平さんがどういう人なのか知っているから、答えが出るまでずっと着いていく
すると、部屋に入る直前に答えを言う
福田さんは、歩きながらポロポロしゃべる
質問がないと記者は黙って着いていくのだが、執務室のドアの前でクルっと記者の方を向き『Any questions?』と言っていた(笑)

こんなエピソ−ドから、当時の総理大臣がどんな人柄だったのか想像するのも面白いです
福田さんについてはこんな裏話も聞きました
福田さんの自宅で懇談会があると、十数人の記者が話を聞き、帰る
その中で、福田さんにやや信頼されている記者たちは帰ったフリをして戻ってきて、先ほどの懇談会の部屋より更に奥の部屋へ入ることができる
そこで本音の話を聞けるわけだが、実は更に奥の部屋がある
一部の記者は、裏から寝室に近い部屋に入って、本当の本当の話を聞ける
3段階あるわけだが、いちばん奥の部屋まで行けないと、真相はつかめない

これ以外にも「箱乗り」と言い、記者を自分の車にお乗せて秘密の話をすることもあるらしいです
それをうまく活用していたのが中曽根総理で、乗せてもらっていたのが、読売の渡辺恒雄さんと毎日の三宅久之さんだそうです

金魚のフンのお話も奥の部屋も箱乗りも、とても面白いと思いますが、この体験ができるのは、記者クラブに所属している記者だけです
お話を聞いていて私は、異様な密室性を感じます
オフレコの話にしても考えてみれば変なル−ルで、どうせ誰がしゃべったかわかってしまう暗号があるのなら、最初から誰が話したのか書けばいいと思います
板垣さんも、
規制緩和と書きながら、いちばん規制緩和していないのは、新聞社や放送局じゃないか
報道は自由なんだから

と情報提供者に最も近づくことができるのは、記者クラブの記者たちだけだという閉鎖性には反対意見です

ただ、この異様とも思われる密室の中で、記者たちは同じ話を聞いても、それをスク−プする人としない人がいるそうです
鈴木善幸さんが総理大臣を辞めたいとチラっと漏らしたことがあった
当時、政治部長だけが呼ばれる懇談会があり、ランチにカレ−ライスを食べながら話を聞いていた
チラっと話したひとことが、『辞意』と察知した記者と察知できなかった記者がいる
察知できなかった記者が、毎日新聞の政治部長で(笑)、その人は後に社長になった
特オチの最たるものだが、特ダネを落としても社長になれるのだ

プレスリリ−スや記者会見も同じことで、どの記者も同じ情報をもらっているのですが、その人の問題意識によって見え方が変わると板垣さんは言います
通産省(今の経済産業省)担当になると、本体の役所だけじゃなく、中小企業庁があって特許庁があって、資源エネルギ−庁があって、定期的に記者会見もやる
それを全て回らなくてはいけないので、特ダネを取る気で行かないと取ることはできない
普段から疑問に思うことを持ち、会見では、そこを集中的に質問をする
役所の中を回る時も、コ−スを決めて回るが、毎日同じように回っていると、変化があることに気づく

毎日の日課でも、緊張していないと特ダネは掴めないということです

その特ダネには3つの種類があると板垣さんは言います
ひとつは発生モノ
警察署の記者クラブにいる時、ボヤが発生したという情報が入った
ボヤでも暇だったので行ってみると、ボヤを出した家の裏に檻があり、焼け焦げた布団が残っていた
その家のおじいさんが徘徊して、近所中のドアを叩いて回りうるさいからと、家族がその檻へ閉じ込めてしまった
真冬だったため、おじいさんは寒くて布団に火をつけ、そのまま亡くなった
当時このような老人が入れる施設が少なかったので、夕刊の社会面のトップに『医療砂漠』という見出しで載った
ボヤだと思い、取り上げなかった他の社の記者はあわてた
ボヤだからと言って侮れない
もうひとつは、歴史の流れの中で変化があった場合、それをキャッチできるかどうか
ひとつの制度を見ただけでも、突然変化することがある
各省庁のならわしなども含めて、歴史を勉強するのは記者として大切なこと
3つめは、社会の構造上の問題から発見できるもの
例えばサリドマイド
ドイツの医療雑誌で既に発表されていたことを厚生省も医学界もあまり重要視していなかったが、この雑誌を読んでいた記者がいて、報道したら大特ダネになった

「医療砂漠」や「サリドマイド」など、例えがシビアで身につまされますが、特ダネをつかむための記者同志の様子を聞いてちょっと笑えました
記者クラブでの争いは、地味に激しいものです
埼玉県警にいた時、朝からパトロ−ルのように上の階から見て回っていた
他の記者にバッタリ会うと、逃げたりして(笑)、仲の良い記者だと一緒につるむ
なぜつるむかと言うと、自分が特ダネを落としたくないから、お互いの安全保証のため
仲には、食事も一緒、トイレも一緒という記者もいて、お互いに見張っている
記者クラブの中にマ−ジャン室があって、キャップクラスが4人1組になってやっている
それは、相手の動きを見ているので、マ−ジャンの勝ち負けなど関係ない
記者室の中は、衝立で仕切られているので、座っていると他社の様子がわからない
共同通信の記者は、たまにぬすぅと立ち上がって、カワウソのようにキョロキョロして様子をうかがっていた(笑)
私も、衝立の向こうの他社のブ−スを覗いて『失礼じゃないか』と怒られたことがある(笑)みんなそうやって探りあいをしている

特ダネを取るために、当局の職員と人間関係を作ったり、派閥を見抜くのも大切な要素だそうです
当局は記者へサ−ビスしてくれる
警察官と記者が時々マ−ジャンすることもあって、賭博を取り締まっている立場の人が賭けたりすることもあった(笑)
記者の方は仲良くなると『特ダネくれないか』と思うけど、そう簡単にはくれない
警察の中でも派閥争いがあって、夜回りに行くと『情報あげるから』と言われたことがある
派閥争いがあると、腹いせに相手の内部のことを話してしまう人もいる

人間関係を築いて、板垣さんがどんなスク−プをつかんだかというお話も聞かせてくださいました
日教組が違法ストライキを起こした時『どういう容疑でいつ捕まるのか』を知りたたくて、デスクに『朝がけに行って味噌汁飲ませてもらって来い』と言われた
警備担当の調査官の家へ朝4時頃に行って門の前で待ち、カ−テンが開いたのを確認してベルを鳴らすと、家の中に入れてくれた
『味噌汁飲めるかなぁ』と思っていたら、調査官は『これを見たいんだろ』と手帳を見せ『今から風呂に入ってくるから』と言ってその手帳を神棚の上に置いた
奥様もいるし、手帳を手に取ることはできなかった
ところが、ごはんを食べさせてくれ、おまんじゅうまで出してくれて、ちゃんとネタを話してくれた
実際逮捕されて逮捕状を読む時、話してくれたことと全て同じだった
おまわりさんから聞き出すのは大変で検事から聞き出すのはもっと大変なのだが、検事からも特ダネを取ったことがある
朝寝ていたら検事から『○○を捕まえたからすぐ来なさい』と電話がかかってきた
ちょうど、週刊金曜日の編集長をやっている北村肇さんが私のテカ(手下)にいたが、彼が早番で出ていたからすぐに行かせた

では、板垣さんは、記者クラブを通じてせっかく築いた人間関係を壊してスク−プを書くことができたのでしょうか
私は、今までインタビュ−をして知った記者さんの葛藤をぶつけてみました
警察よりも我々の方が偉いんだと思わないと批判できない
記者は、刑事訴訟法に基づいて警察が捜査をしているのかを頭にないといけないのだが、新聞記者には刑事訴訟法も憲法も読んだことがない者もいるから、危険
警察が違法なことをやっていないのかチェックしなければならない
警察を担当する以上は、そういう法律をガッチリ頭に入れる
本当はそういう勉強をしなくてはいけないが、研修などはなく、記者が個人でおいおいする
新聞は読者の立場で、権力のすることを法に照らしてみるというポジションを忘れないようにしていないと、いつのまにか権力と仲良くなってしまうことになる
警察と同化しないことが大切
警察のスパイになってしまうこともあるし、政治家を担当して秘書みたいになり、同時に書きたいことが書けなくなる
それが記者クラブにいる記者の大部分だが、ずっとそこにいる地方紙の記者だと動けないが、全国紙の記者だと移動できるから癒着できるものでもない
記者個人が、ジャ−ナリストスピリットを持つか持たないか
警察の立場から言うと、仲良くなっている記者が事件を起こしたら捕まえなくてはならないのだから、お互い同じこと

なるほど、「警察は、仲の良い人でも逮捕しなくてはならない」という言葉に説得力を感じたのです
実際に板垣さんは、そのような事件の目撃者でした
昔朝日の記者がお酒を飲んで交通事故を起こし、現行犯逮捕された
各社の記者は『武士の情け』だと言って書かないと言った
ところが、朝日の支局長から『書いていいから』と電話がかかってきて、手を震わせながら小さい記事を書いた

この時は、朝日新聞の支局長からの電話もあり、板垣さんは記事を書きました
でも、板垣さんが知っていて書けなかったこともあったそうです
その話の中には『こわいな』と思うことが見つかります
取材対象者と取材者の関係は難しい
警察署の二重帳簿はどこでもやっているが、書かない
下手すると、転勤になる時餞別をくれたりする
担当の警察署を挨拶しに10軒回ったら10万円くらいになっちゃう
多分、二重帳簿を作ってお金をプ−ルしておいて、自由になるお金を持っているんだと思う
宴会に誘われた時は、悪いと思ってみんなで1万円ずつ出して振り込んだ
すると『このお金どうしようか』と警察は困り果てていた
そうやって警察は、円滑に人間関係を築いていた
そのプ−ルしている捜査費用を全面禁止したら、どうなるか
捜査という概念の中には含まれないが、捜査費用として処理した方がやりやすいという人間関係もあると思う
警察は、地元の防犯協会などの団体からの盆暮れの贈答品だってある
商品券やビ−ル券をもらうと換金するだろう
防犯課だとキャバレ−から接待を受けることもある
それは、手入れがあった時に恩義を受けたいキャバレ−の支配人の思惑だろう
警察も絶対に捕まえなきゃいけないということではないし、『二度とやるなよ』で終らせることもある
検事の場合は裁量権があり、起訴するか、不起訴にするか、起訴猶予処分にするかなど、検察官の自由裁量に任されていることがあるから、手心は当然加えられる
『まぁ初犯だからいいか』とか『2度とやるな』と釈放することもある

私が「こわいな」と引っかかったのは、犯罪を犯しても事件にならないこともあるという点です
「それをおかしいと思って記事にしないのですか?」と質問したら、
そういうことは記者発表しないから、表には出にくいので調べるのは大変
暴力団担当で、風俗の捜査をやっているおまわりさんだと、店の経営者と仲良くなって利用券をもらう
風俗店の犯罪が、時々表面化して事件になることもあるが、ほとんどの場合ならない
隠ぺいしようと思えば隠ぺいできる

警察側が発表しないと、事件が起きていても記者たちは気づくことができないのです

隠ぺいされた事件が発覚するのは、内部告発か反体制からのタレこみ、どこからかの苦情
と言って、西山事件について話してくださいました
「記者というものは、何としてでも特ダネがほしいものだ」
と板垣さんは言いますが、愛情のない人と関係を結んでまで情報を得ることが、ジャ−ナリスト・スピリットだと言うのか私にはわかりません

記者クラブの中で仕事をしている記者に板垣さんが危惧するのは、当局が発表したものをそのまま信じて流してしまうことです
記者クラブに完全に張り付けになっている記者は、社会的にすごく関心を持っていることや、自分の足元で重大事件が起きても、それを奥深く調べる余裕がない
自分が調べたわけじゃないから『○○警察署によれば』という表現で、警察の言った通りに書くしかない
当然、警察が間違ったことを言ってもそのまま書いてしまう
責任は警察にあると言うしかないが、松本サリン事件の時も警察の発表通りに書いているから、河野さんが犯人だと思った
日々追われているから余裕がなく、そのためにみんなで河野さんを犯人にしてしまった

「松本サリン事件」を例に挙げられると、流された情報をそのまま鵜呑みすることが、どんなにこわいことなのかよくわかります

それは、記者だけのことではありません
情報を鵜呑みにすることは、読者にとっても同じくこわいことだと、板垣さんは、国際情勢の話を例に挙げました
中国との靖国問題の話から東条英機の話題になり、太平洋戦争での国民について話してくださいました
ヒトラ−と東条英機の違いは、ヒトラ−はユダヤ人を虐殺した人、東条英機は杉原千畝さん以上にユダヤ人にビザを大量に発給した親ユダヤ
東条さんは、日独伊同盟があっても、いずれはヒトラ−と戦う時が来るだろうと先回りしてユダヤ人を助けて来た
だから戦後ユダヤ人から東条英機批判はなかった
A級戦犯として絞首刑にしちゃったから、それを認めるわけにはいかないので、外務省の機密事項にもなっている

戦犯という意味では、私はヒトラ−のドイツと日本では、少し違うと考えています
そこで、「ヒトラ−がいたドイツと違い、日本は国民全体が起こした戦争ではないか」という質問を投げかけてみました
それをいちばん助けたのは当時の朝日新聞と毎日新聞
ちょっと軟弱な外交をすると、朝日や毎日は『政府がけしからん』と批判していた
戦争の協力者であり、大本営の伝達者であった
いちばん悪いのは、東条内閣であり朝日新聞であり毎日新聞
もっと悪いのは、それをバックアップした国民

私は、太平洋戦争は国民全員で起こした戦争で、終ってみれば東条英機ひとりに責任を押し付けたのだと考えています
自分の過ちを認めないで、他人のせいにしてしまったことが、国民性なのかはわかりませんが、記者クラブでも同じようなことがありました
教科書問題です
『侵略』と書いてあったのを『進出』と換えさせたと報道したのは、TBSの新人記者のミスで、各社ともそのまま誤報してしまった
それを中国や韓国が先回りをし、騒がせることによって日本へ圧力をかけるというところからはじまって今日の教科書問題に至っている
記者クラブには教科書がたくさん来るので、各社で分担して読み、ポイントをレポ−トにまとめて各社分コピ−して回す
あの時もは、間違ったレポ−トが元になって外交問題に発展する
『誤報ですよ』と言っても後の祭りで、韓国と中国に謝った後だったので取り返しがつかない
その時、誤報をあっさりと認めて謝ったのは産経新聞1社だけ
お詫びの文書を載せた産経新聞以外は『文部省だったらこういうことはあり得るね』というようなことを書いた
外交問題をおかしくしたのはマスコミの責任

結局、記者クラブの問題について何を改善すればいいのか板垣さんとお話しましたが、メディアの問題はそこではないとおっしゃいます
新聞社や放送局、新聞協会などの組織を変えたって、国際情勢が絡んでいるので、記者クラブを直しても無理だろうと言うのです
だからと言って、記者クラブはこのままでいいのかということになります

記者は、一生記者でいるとは限りません
会社員としての出世を望んでいる記者もいる中で、ジャ−ナリストスピリットを持った記者は組織の中では生きづらいという現実も見えてきました
当局から出された情報を「この中にスク−プがあるかも」という問題意識を持って見ることは確かに大切ですが、それだけでいいのでしょうか
警察が発表しない事件は、事件として世の中に出ることがないという現実
おそらく、他の省庁や役所でも、同じようなことは起こっているでしょう
情報源に最も近い場所にいる記者クラブの記者たちは、それらを伝えるのは難しいと諦めてしまっていいのでしょうか
「みんながそんな取材をしてないから」と言って諦めているとしたら、それこそが談合なのだと思います


さて、板垣さんのインタビュ−には、業界の裏話や、また政治評論家としてのお話など、興味深いものがたくさんありました
取材記本文の中には書ききれませんでしたので、下記でご紹介します(順不同)

<メディアの発達>
先ず新聞ができて、新聞の中から雑誌が生まれた
新聞に書けないこと、例えば男女関係のスキャンダル、つまりヘソから下の話を載せるために週刊誌を作った
朝日なら「週刊朝日」、読売は「週刊読売」、毎日は「サンデ−毎日」など
その後雑誌社系の雑誌も出てくる
例えば、「女性自身」「週刊ポスト」「週刊現代」など
2分化されて雑誌協会ができ、「雑誌社にも取材をさせろ」ということになるが、記者クラブには入れない
「日刊ゲンダイ」「夕刊フジ」のようなタブロイド版も出てくるが、これも記者クラブには入れない
彼らも記者クラブに入りたいという意識があるので、記者クラブの批判をする

<新聞記者が社会部に入ると・・・>
先ず警視庁管内の警察署を担当する
方面ごとに分かれているが、いくつかの警察署をぐるぐる回って取材をするので、その動き方が将棋の桂馬に似ているところから「桂馬記者」と呼ばれているらしい
そこで「できるな」と思われたら、警視庁記者クラブ担当の記者になる
その次は東京地方裁判所の記者クラブに行かされ、検察庁を担当する

<新聞記者の歩むコ−ス>
自民党は毎日新聞とべったりで、OBはよく国民政治協会へ行く
記者が進むコ−スは主に4つある
ひとつは、一生平記者のコ−ス
二つ目は、管理職を目指すコ−ス
三つ目は、キャリアをうまく利用するコ−ス
例えば、政治家になった安部晋太郎さん(毎日新聞の政治部の記者)
作家になった井上靖さん(毎日新聞大阪本社学芸部のデスク・副部長)
ジャ−ナリストになった大森実さん(ベトナム報道)
政治評論家になった三宅久之(毎日新聞退社後テレビ朝日でキャスタ−をやった後政治評論家)
四つ目は、会社に籍を置きながら独立もしないコ−ス
例えば、岩見隆夫さんや岸井成格さん
自分がどういうコ−スに進むのか、40歳前後になるとわかる
二つ目の管理職コ−スは、ポストをめぐって激烈な権力闘争がはじまる
デスクから部長、それから管理職
部長以上は管理職で、その上に編集局次長、編集局長、各出版局長、メディアの局長、社長室長などがある
論説員は大学の教授になる可能性が高い
教授になるためには、文部省の内規があって、論文を2つ書かなければならないが、2つ書いたのと同じ資格を得られる
論説員にもなりたがる人が多くて、熾烈な競争がある

<当局からの発表は通信社に任したらどう?>
51年に毎日新聞が倒産した時、8000人いた社員が5000人までに減らされ、給料は減り、記者の担当するエリアは増えた
どこの役所にも共同・時事の記者がいるから、それにすればいいじゃないかという話も出たが、結局通信社の記事を信用していない
間違いがあれば、毎日新聞として責任が取れない
しかし、割り切って通信社から記事を買い、記者クラブへの張り付けを完全に辞め、遊軍主力で記事を書けば、ひょっとしたら良い記事になるかもしれない

<団塊の世代について>
団塊の世代にとっては、もっと上の世代がいた
下には新人類がいて、その間に圧迫されている世代が我々
いちばん上は戦争に行った世代で、すぐ上は60年安保の世代で、その世代の有名人に加藤登紀子さんがいる
会社の採用は、団塊の世代よりも東京オリンピックの年に採用された人が最も多く、団塊の世代の人たちが多いわけではない
その世代の人たちは、我々から見ると、我々を弾圧したと思われるが、弾圧しながらもいろいろなことを教えてくれた
よく飲みに連れて行ってくれた
お昼も夜も連れて行ってもらってお金を使わないから、1年目で100万円貯まった

我々より下については、新人類くらいまでは私たちの言うことを聞くが、その下は聞かない
飲み会にも来ない
先輩につっくついてこない世代ばかりになっちゃうとどうなんだろう
記事の掴み方など教えてもらえなくなる
記者の世界は職人の世界
文章の書き方からはじまって、取材方法や、上になって管理職としての心構えとかいろいろあるが、下に教えられない
自由気ままにやるのはいいけど、ますます新聞は面白くなくなっちゃうんじゃないか
その一方、記者クラブに張り付けになっている記者もいる
自分の視点をしっかり持って、配属されているポジションの中で、何が特ダネかなと各自が努力しなければならない
荒っぽい言い方は昔からしない
自分の原稿に赤を入れられて『自分の原稿はどこに行っちゃったかなぁ』と思うほど変えられる
そうやって原稿の書き方を伝授されていた

<失われた20年>
我々の時はベトナム戦争があってアメリカが負けた
その後アフガニスタンにソ連が侵攻した10年間、そのことについてほとんど報道されなかった
その後10年間の内乱についてもあまり報道されなかった
ようやく20年経って9.11をきっかけにマスコミも目を向けるようになったが、それまでの20年間を「失われた20年」という
この20年間に記者になった人は、戦争に関心を持っていなかった
湾岸戦争の頃からみんなが考えるようになった

<警察の方のお葬式>
埼玉の警察官で誰か亡くなったとなると、お寺の本堂でやると2000万円、離れた小屋でやると500万円のお葬式を出す
これはお供えで賄うが、もしかすると税金も使われているのかもしれない

<機密費>
官房長官には、機密費が年間60億円ある(今はそんなにないだろう)
使い道としては、報道陣を接待したり、野党に配ったりする
福田総理が終った頃、お金があまったみたいで、記者も赤坂の料亭に連れていってもらった

<兜町は情報の坩堝>
毎日新聞は、給料が減ってきたので、雑誌などへアルバイト原稿を書く
他社でもだんだんと、社内でアルバイト原稿を書かせるようになった
例えば、朝日新聞なら「AERA」
私は、「投資ジャ−ナル」に原稿を書いたが、それをデスクが潰そうとした
毎日新聞の上司と投資ジャ−ナルのデスクの仲が悪かったので、「もっと突っ込め」と毎日の上司に言われ取材をしたら、後に大事件になった
経済学者のような視点で取材をするのか、どういう事件が絡んでいるのかという社会部的な要素で見るか、政治的要素で見るかで、記事は全く違うものになる

<中国の戦略>
情報がどんどん流れてきても、それを全て鵜呑みにしてしまうととんでもないことになる
中国がどういう目的で靖国や教科書問題のことを言っているのでしょうか
中国は戦略を持って言っているように見える
2008年にオリンピック、2010年に万博が控えており、そのためには日本からお金が欲しいし、ノウハウも欲しい
いちばん作って欲しいのは、新幹線
ところがJRが嫌がっている
お金も日本が用意して、技術者もつれて行って、設計図までよこせと中国は言っている
全部吸い取られる感じなのでJRは嫌だと言っているのに、マスコミの話を聞いていると、『新幹線の仕事をくれなくなりますよ』と逆のことを言っている
中国の呉儀副首相がドタキャンをしたが、実は誰が悪いのかというと、彼らの戦略でそうしているわけだから、そこを見誤ってしまうとまた60年前の戦争のことを言われる
中国は、日本からお金を引き出す時に、必ず教科書の問題などを引き合いに出す
今まで鈴木善幸政権、中曽根政権、竹下政権と相当払っているが、小泉首相になって外交路線が今までと変わったので、小泉攻撃をはじめた
何かあげさえすれば中国は引く
万博の担当である呉儀さんは、ドタキャンする前にトヨタ自動車の奥田会長(経団連会長)に会った
多分、2010年の万博のために、お金を引き出して会社のノウハウももらおうと思ったのだろうが、ケチなトヨタ自動車がそう簡単に出すわけがない
呉儀さんは、多分トヨタ自動車の協力を得たいし、ODAの予算も欲しい
だが、政府の方はだめ
トヨタも昼食会までは仲良くしていたが、その後突然呉儀さんはドタキャンする
雰囲気でトヨタがお金を出さないとわかったのだろう
それなら日本にいる意味がないじゃないか
だから靖国神社なんてドタキャンには関係ない
靖国というと日本の国民まで加勢してくれるから、あれは中国の謀略
中国の若い人は東条英機がどんな人か知らないだろう

たまたまこの日、モンゴルの新しい大統領を決める選挙が行われ、当選確実になった直後に呉儀さんが飛んだ
しかも、朝日新聞の夕刊では、呉儀さんがドタキャンした記事の裏側にモンゴルの選挙のことが書いてあった
モンゴルを押さえておかないとロシアが近いという軍事的な背景もある
ちょっと前に中国とモンゴルの関係が大変だという解説が載っていたし、朝日の編集部は知っているはず
けしからんのは、朝日が知っていながらモンゴルのことに一言も触れていないこと
これに触れると靖国の問題ではなくなってしまうので、わざと隠している

国際情勢も、相手が何をしたいのかをよく見て新聞を読まないと、いかにも相手が正しく見えてしまう
「日本は戦争をやったんだから謝れ」と言われ、謝ってお金を渡している
でも中国は、まだ足りないと言う
おかしいのは、今回の教科書の改訂でも、扶桑社の教科書を日本の国民もまだ見ていないのに、どうして中国の上層部が知っているんだ
日本国内にも、しかけている人がいる
昔に遡ると「憂うべき教科書問題」というのがあった
教科書の執筆者はマルキストで、特に歴史の教科書は左翼寄りに書く
右寄りの人で教科書を書ける人がいなくて、それを是正しようと自民党の人が教科書の研究をはじめる
それに勝共連合も加わって、教科書を問題にした
日本の指導権の首根っこを押さえているのは中国
政府も誤報だったことを今更言えないから、そこにも誤りがある
謝ると野党から攻撃を受ける
野党は政府が中国から叩かれる方がいいので、手を回して外圧を利用する
自民党は、自分たちがやりたいことをアメリカにやらせる

中国が覇権を伸ばそうとして、海底油田などでトラブルが起こっている
中国の政府を牛耳っているのは華僑で、壮大な力と財力を持っているから、これだけ経済成長してきて、ますますテリトリ−を広げようとしている
その中で、日本を排除しようとしている
国民が今起きている現代史をしっかりと見て、その中で報道されていることなんだという認識がないといけない
靖国神社参拝に反対している人が増えてきたのは、中国の宣伝効果が現れているから
それに負けてはいけない
マスコミは当てにならない
中国が発言する時は、何のためにやっているのかを見る
彼らのやりたいことは金銭哲学しかない
霊魂を認めていない共産主義者が、なぜ霊魂を前提にした靖国参拝について議論するのか

<中国の日本のメディアへの対応>
昔からマスコミは中国をこわがっていた
日中平和条約を結んだ後でも、特派員を中国に送るが、中国の悪口をちょっとでも書くと支局ごと追放されてしまう
産経新聞はよく追放されている
永久追放されたら取材ができなくなる
追放はまだ良いほうで、下手したらスパイ罪で捕まってしまう
中国は法治国家ではなく人が治める国家だから、北京政府の上層部の意向だけで捕まる
法律はあるんだけど、何を適応するのかは上層部の意向
各社とも北京支局は、すごくピリピリしていてゴマすり原稿しか書けない
何しろ共産主義国で自由な国じゃないが、みんなは共産主義だということを忘れがち
一党独裁で民主主義の憲法がないから、人権なんてない
だから中国の政府が困るのは、人権意識が高まってくること

<イスラム社会での取材も難しい>
イランは酒と女性がいけないが、両方とも犯しちゃった記者の友達がいて追放された
その後に鳥越俊太郎さんがいて、彼は真面目だから追放されるようなことはしなかったんじゃないかな
イスラムの社会を取材するのは難しい


来週月曜日は、テレビ局へ勤務をしている方へのインタビュ−をUPします

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コメント

30年前のマスコミ業界の実態がよく分かるお話ですね。記者クラブでマージャンしたり、警察から餞別もらったり、官房長官に料亭に連れて行かれたり。今はもうないでしょう。今は競争も激しいから、他社の記者が交通違反でも起こそうものなら、すぐに書くのでは。

ただ「政府首脳」とか「政府筋」とかは福田官房長官の時に問題になって廃止したと記憶してますから、これは最近まで続けていたようです。

「通信社問題」も質問していただき、ありがとうございました。回答は「通信社の記事を信用していない。間違いがあれば、毎日新聞として責任が取れない」ということのようですが、配信元の通信社名を明記すればすむ話です。
日本の新聞は通信社記事を使うことを「恥」だと思っており、使う場合も自社記事のように見せかける。だから通信社の誤報でも載せた側が責任を問われるのです。
通信社記事にはクレジットを入れるのが世界の常識です。米国では配信業務の抗弁といって、通信社の記事は通信社が責任を負います。日本もそうなるべきです。

投稿: 山川草一郎 | 2005年6月12日 (日) 12時04分

改めて取材日時を拝見したところ、私が「通信社問題について聞いて見てください」と申し上げた日より先に質問されていたようですね。大変失礼しました。

投稿: 山川草一郎 | 2005年6月13日 (月) 13時20分

>>霊魂を認めていない共産主義者が、なぜ霊魂を前提にした靖国参拝について議論するのか
そういうことを知らなかった自分が情けないような。勉強しないとダメかもです。

投稿: 某S | 2005年6月13日 (月) 22時53分

山川さん
共同通信社の会社案内の設立の欄に
「共同通信社は、国内のほとんどの新聞、放送メディアと多数のノンメディアに信頼性の高い内外ニュース・写真を提供している日本を代表する通信社です。1945年に真実、公正な報道活動ができるよう、加盟新聞社とNHKが協力して維持する非営利の社団法人組織として設立されました。 」
とあるんです
現実とはちょっと違うのかなという気がしますね

投稿: ぁぃ | 2005年6月16日 (木) 13時22分

某S さん
私も、頭では中国では共産主義が取られているということを認識しているのに、その感覚というのは想像できません
それに宗教的な思考というところなどを加えて考えると、姿はそっくりでお隣どうしの日本と中国の思想は、全く違うものだと気づきます
反日の問題は、思っている以上に複雑なのかもしれません

投稿: ぁぃ | 2005年6月16日 (木) 13時27分

お久しぶりです。
最近ちょっと忙しかったのでなかなか読むことが出来ず、
今、やっとこの回を読み終わったところです。

で、指摘ばかりですみませんが、誤字がいくつか気になったので
書かせて頂きます。
東条英機の下りで
・杉浦千畝(リンク先は杉原千畝になってます)
・永久戦犯(これはA級戦犯ですよね?)
文脈上の無視できるモノなら構わないかとも思ったのですが、
固有名詞の間違いでしたので、指摘しておいた方が
良いかと思い、口を出させて頂きました。
小うるさくてすみません。

毎回とても面白く読ませて頂いていますので、
また時間のあるときに、感想はまとめて書かせて頂こうと思います。
それでは、これからもがんばってください。

投稿: ハーミット | 2005年7月17日 (日) 23時40分

ご指摘ありがとうございます
修正しました
恥ずかしいです・・・

投稿: ぁぃ | 2005年7月18日 (月) 12時03分

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