« 競走馬の現実 【取材記5回目】 | トップページ | 競走馬の現実 【取材記7回目】  »

2005年5月11日 (水)

競走馬の現実 【取材記6回目】 

S_2 競走馬が予後不良になるのは、馬の脚に負担がかかる馬場によるものではないか
そう考えて、運動器疾患によって死んでしまった馬の数を見てみました
JRAが発行している「中央競馬年鑑」から引っ張り出してみると、その数字はものすごく少ない
中央競馬に入厩(登録)できた馬は、とても大切に扱われているという数字で、これに馬場との関係を調べる必要性はないと判断できるほどです
人間で言うならば、一流企業に就職できたということでしょうか
もちろん不幸にも競走中や調教中に怪我をして命を落とす馬もいますが、確立からするとすごく低いもので、「JRAや競馬関係者たちは頑張っている」と拍手を送るべきなのかもしれません

S_1 それにしても、「予後不良になる馬はもっと多いのでは?」という私の持つ印象に対し、死殺馬の実数があまりにも少ないと感じます
「予後不良」という言葉の意味をJRAに確認すると、「競走馬として再起できない」ということであり、直接死に結びついている言葉でないことがわかりました
予後不良という言葉の中には、死ぬ馬もいれば、別の生き方を歩む馬もいるということで、その決定権は馬主にあります
競走馬としての能力を失った馬たちが、その後どのような道を歩むのかは、とても興味深いところで、資料を探しました

平成15年の競走馬登録抹消馬事由別頭数 (「中央競馬年鑑」より)

繁殖 683 地方競馬 2,545  斃死 196  乗馬 1,290  使役馬 4  研究馬 16  農馬 1  2歳未抹消 4  その他 621   計 5,360

「繁殖」とは、お父さん、お母さんになるということで、現役時代に好成績を残したり、血統の良い馬がなれます
「斃死」は「へいし」と読み、消化器系や呼吸器系などの疾患で死んだ馬や、骨折、脱臼などの運動器疾患により薬殺処分された馬の数です
「乗馬」は、人を乗せて楽しませ、「使役馬」は、有益な仕事をする馬だということでした
競馬場にいる誘導馬は、乗馬か使役馬のどちらかに入り、いわゆる当て馬といわれる繁殖牝馬を発情させるための牡馬は使役馬に入ります
「研究馬」は、病気の研究や実験のために使われます
実験の例としては、馬への負荷と馬の脚への負担の関係を調べるために負荷をかけ続けたりするとこともあるそうです
馬体実験のようなことが行われていることも想像でき、「行くところがあってよかったね」とは素直に思えません
「その他」は、地方競馬の馬が中央のレ−スに出走し、戻る時に登録を抹消する数なので、同じ馬が違う中央のレ−スに出走する場合は、1頭の馬が1年間に何度も抹消されるということもあります

説明を聞きながら、「JRAを去る馬たちには全て行き場があるじゃないか、じゃあ冗談で『馬刺しになる』と言う人がいるけど、あれは全て噂なのか?」とデ−タの信憑性を疑いはじめました
JRAは、登録を抹消された馬のその後を追いかけるようなことはしません
要するに、この数字は書類上のものなのです

「だいたい不景気で廃止続きの地方競馬が、2,545頭もの馬を受け入れることができるのか?」と思い、地方競馬の関係者に電話をしてみましたが、わかったことは、地方競馬は切なくなるほど頑張っているということでした
私には、経済的に弱者である地方競馬が中央競馬の尻拭いをしているように思えるのですが、当事者たちはそこまで悲観的に感じてはいないと言います
意外だったのは、「地方競馬の厩舎には空きがあります」という言葉でした
中央競馬の厩舎は、慢性的にいっぱいだと島田明宏著「わたしの馬が、タ−フを走る」には書いてあります
中央競馬での登録数は増えて厩舎に空きができるのを待っている状況なのに、地方競馬では余っている
そこには、悪循環の図式があって、地方競馬のお客さんは少ない→馬が勝っても賞金が安い→馬主が減る→馬が減る→レ−スが面白くなくなる→お客さんが減る
それでも地方競馬の方は、なんとか客を呼び込もうと様々なことを試みていらっしゃいます
今回のテ−マとは少し逸れますが、廃止への動きばかりが取り立たされる地方競馬の報道とはかなり違う前向きな努力をしているという印象を持ちました

本当のところは、馬はどこへ行ってるんでしょうか
匿名ということで、話をしてくださった競馬関係者の方がいます
中央競馬と地方競馬の間には仲介業者がいて、馬を安く馬主に譲ってもらおうと努力している人たちもいれば、肉食業者もいるそうです
肉食業者と言っても、競走馬は筋肉ばかりで肉がかたく、しばらくは運動もさせずにえさばかり与えてゆるめてからじゃないと食肉にならないとおっしゃっていました
それが行き場を失った競走馬の現実です

2,545頭の地方競馬へ移った馬たちが、本当に地方競馬で走っているのかを確かめるために「ある調教師さんに話を聞こうと思う」と情報提供者に話してみましたが、
「調教師や馬主だって、罪悪感を抱えながら仕事をしているんだから、そんなことを話すわけがない」
と、とても不透明な部分であるということがわかりました

覚悟はしていましたが、自分の耳で直接そのことを知ると、やはりショックです
中央競馬の競走馬としてスタ−トをきれた馬たちは、とても大切にされているという喜ばしい現実と、JRAの登録を抹消した後の現実
確実に年をとる競走馬は、いつかは走れなくなるのは当たり前のことで、その後のことを考慮せずに競馬を開催するJRA
競走馬フアンは、書類上の数字を「お役所仕事だから」と納得するでしょうか
そして、競走馬フアンでありジャ−ナリストでもある私は、冷静さを失いそうになりながら、経済動物の命の重さについて考えています
肉牛などに代表される人間が食するために生産された経済動物を思い描きながら、JRAが引退した馬のことをもっと考えるべきだと主張するのは、屁理屈なのか
その判断基準を模索しています

明日からは、引退した後の馬と接している人たちにアポイントを取り、特別な想いがあるのか聞いてみようと思います
長い時間かけて数字に向き合い出したデ−タを持って、今度は人と向き合って競走馬について考えてみます

    【 注釈 】
    数字は全て「中央競馬年鑑」から引用

  • 表「死殺馬数統計(運動器疾患)」は、美浦トレ−ニングセンタ−が開場された昭和53年からのJRAの競馬場とトレセンで、骨折や脱臼、断裂などの運動器の疾患により死んだ馬の数とその割合
    グラフ「JRA登録場数と死殺馬数の推移」は、表をグラフにしたもの

|

« 競走馬の現実 【取材記5回目】 | トップページ | 競走馬の現実 【取材記7回目】  »

コメント

ことし

投稿: | 2005年10月17日 (月) 14時56分

(・ー・)・・・

投稿: | 2005年11月29日 (火) 15時06分

競走馬を引退して誘導場になった馬の寿命も意外と短いと感じています
競走馬は、引退しても尚、入れ替わりが激しいのだと、最近切なく思っています

投稿: ぁぃ | 2005年12月 1日 (木) 03時52分

この記事へのコメントは終了しました。

« 競走馬の現実 【取材記5回目】 | トップページ | 競走馬の現実 【取材記7回目】  »