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2005年5月 2日 (月)

競走馬の現実 【取材記2回目】 

Cafemoon ゴ−ルデンウィ−クは、はじまったばかり
約58000人もの入場者のあった土曜日の東京競馬場は、「日本はこんなにも平和なんだ」と平和をどこかへ貯金しておきたいと感じるくらいこどもたちの笑い声があちこちから聞こえていました
夏のようなまぶしい日差しに照らされて熱ったほっぺを冷やしてくれる風が気持ちいい
今週末は、そんないいお天気の中を駆け回っての取材でした
その取材中に遭遇した緑に輝く美しいタ−フでの悲劇を報告します

10レ−ス終盤、4コ−ナ−を曲がってすぐ、外へよれる馬が見えました
カフェム−ンという7歳の牡馬が、足元をふらつかせてコ−スの外の方へ横歩きをしているように見えます
観客が大きくどよめき、「やったな」という空気がその場を一瞬だけ包みますが、レ−スは何事もなかったかのように継続して、他の馬たちがどんどんゴ−ル板の前を駆け抜けて行きました
ただ、カフェム−ン1頭だけが、直線の芝生の上にぽつんと取り残されています
観客は、レ−スの結果を気にしながらも、カフェム−ンに注目して、
「かわいそうに」
「助かればいいけど」
とそれぞれ話しています
私は、『お金を儲けようと集まってきた人たちでも、馬が怪我をするとすっきりしないのだな』と妙なことに気を取られました

その間もカフェム−ンは、右足を上げたまま、じっと立っています
平成7年の宝塚記念で骨折したライスシャワ−がそうだったように、開放骨折なら骨が皮膚を突き破り、脚が皮1枚でプラプラした状態になりますが、カフェム−ンはそうではなさそうです
ス−ツを来た男性が、カフェ−ム−ンに駆け寄って行くのを見え、彼を見たカフェム−ンは、彼の方へ数歩だけ歩み寄りました
その男性は、カフェ−ム−ンの脚をじっと見つめていました

騒然としている中で、私ひとりが冷静にシャッタ−を切っています
『私は冷たい人間か?よく冷静に写真が撮れるな』と自問自答する私の視界がくもり、カフェム−ンが滲んで見えて、『死なないで・・・死なないでね』そう心の中で繰り返しながら、カフェム−ンを必死に撮ることしかできませんでした

Cafemoon2

馬運車が到着して、カフェム−ンは自分の足で歩いて車の中へ入り、どこかへ運ばれて行きました
今日発売された雑誌「Gallop」には「カフェム−ンは競走中に疾病(右第1趾骨粉砕骨折)を発症したため最後の直線で競走中止。蛯名騎手は異常なし。馬は予後不良。」と書かれています
予後不良とは安楽死処分です
カフェム−ンの脚は、骨が砕けていました
痛かったろうに、暴れずもせずに大人しくじっと車が来るのを待っていたカフェム−ンの姿が、私の目に焼きついています
悲しくて、すごく腹が立つ
誰が悪いのか、何が悪いのかはわからないけど、無性に腹が立つんです

骨折で命を落とすなんてことは、人間では考えられないことなのに、馬にとってはそれが普通
競走馬が怪我をすることを『故障』と言い、走るために生まれてきた競走馬にとって『故障』は、致命的な傷になることも少なくありません
馬は、人間よりも2本も多く足を持っているくせに、1本の足を負傷すると健康な足に負担がかかって、他の病気を併発することがあります

有名なのは、貴公子テンポイント
1978年、海外遠征を予定していたテンポイントは、その壮行レ−スとも言える1月22日の日経新春杯、京都競馬場の4コ−ナ−で、左第3中足骨、第1趾骨骨折(左後足)を発生してしまいました
本来なら安楽死処分が取られるところですが、名馬故に手術が行われ43日間闘った後、3月5日、テンポイントは星になってしまったのです
瀬戸慎一郎著「悲劇のサラブレッド」によると、テンポイントの場合は、右後脚に負担がかかり、蹄葉炎(ひづめが腐ったように悪くなってゆく病気)の兆候が出はじめていました
日経新春杯の時490キロあった体重は、400キロぐらいにまで減ってしまい、やせ細ったテンポイントは、立つことも困難になって、馬房の中でずっと横たわっていたそうです
他の馬への調教を終えてテンポイントの元へ駆けつけたスタッフの言葉が書かれています
「どうしようもなかった。覚悟はしてたけど、涙は止まんなくて・・・・・・。」(省略文)
最期を迎えるテンポイントが想うことは、『ありがとう』だったと私は信じています
すごく痛かっただろうし、すごく苦しかったと思うけど、テンポイントはきっと『ありがとう』って思いながら星になったんだと信じます
馬は、そういう優しい動物です
逃げること、人間と共存することで生きながらえてきた動物なんです

テンポイントの骨折から27年経った今でも、粉砕骨折や開放骨折した競走馬は安楽死処分を取られるのが当たり前です
馬の研究は、どのくらい進んでいるのでしょうか
芝生が硬すぎて、馬の脚に負担をかけてはいないのでしょうか
斤量が重過ぎるということはないのでしょうか
そして、もう走れないからと、まだ生きていられる馬を安楽死処分するということはないのでしょうか
私は、ずっとこのような疑問を持ち続けています

明日は、今週末見てきた現役を引退した誘導馬たちのお仕事ぶりをご報告します

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コメント

私の競馬歴はそんなに長くはないですが、やはり今でも、心を痛めたのはサイレンススズカの故障でした。あまりにも有名な馬なので、ご存知の方がほとんどでしょうが。自分が故障をしても、その上の騎手を心配する姿があまりにも悲痛すぎて。
賭けの対象として競馬をみていない私にとっては、一時、競馬を見ることができませんでした。
あと、朝日杯3Sで亡くなったタガノテイオー。
明らかに、最後の直線で足の運びがおかしいと感じた人は多かったはず。上の騎手もわからないわけがないと思うのですが、スピードを緩めずそのまま駆け抜けてしまいました。ゴール前を駆け抜けるときにはもう、私は前がかすんで見えてませんでした。
そのまま2着。左足から、出血していましたし、、、それでも走らせ続ける騎手は・・・?と疑った時でした。左第1趾骨粉砕骨折。
全国ネットでも流れた映像なので、心を痛めた方も多かったかと思います。


サンデーサイレンス亡き今、かもしれないですが、少しの故障でも引退させる馬が増えてきましたよね。確かに、今、故障する馬が多いし、早熟と思える馬が増えてきている気がします。古馬で頑張っている馬って、何頭いるでしょうか。それだけ、故障する馬が増えすぎている気がします。日本の競馬場の馬場状態にも関係があるような気がします。
高速馬場といいますが、それだけ馬場は乾燥し、硬くなっている状態。硬すぎだと思うし、ダートに関しては日本のダートはダートと呼べないのでは?とも思っています。海外と比べると明らかで、日本のダートは砂場ではないかと。
もっと、馬の走りやすい状態、ケガをさせないような状態にもっていって欲しいものです。
ギャンブルではなく、スポーツというのならば、もっともっと考えて欲しいものですが、、、私腹を肥やす大元からしてみれば、、、とやはり考えるのでしょうか。


毎回、TVと見るたび、競馬場に行くたび、今日は怪我がありませんようにと祈ります。
みんなの元気な姿がみたいので、私も撮り続けたいと思います。

支離滅裂で、話にまとまりがなくてすみません。

投稿: ゆきぞう | 2005年5月 3日 (火) 06時58分

素人が思うに・・・
あんなに稼がせてもらってるのに治療の研究に回す金はないんかい?!

豚、牛、馬が肉になるため殺されます。
頭に拳銃のようなものをアテ『なんかイヤだな〜』と思ってる間に命を落とします。
馬は打たれた後更にハンマーで殴られるそうです。
安楽死とは程遠いような気がしました。
私達の助けたかった馬もこのように殺されたかと思うとのどの奥が熱くなります。

投稿: miho | 2005年5月 3日 (火) 10時07分

絲山秋子さんの処女短編集「イッツ・オンリー・トーク」の中に「第七障害」という作品があります。
競技中、乗っていた馬が骨折してしまい、安楽死させられてから、ずっとそのことに責任を感じて引きずっている女性が主人公です。
あいさんは共感できるのでは、と思いました。

それにしても58000の人出とは! すごいですね。

投稿: 美也子 | 2005年5月 3日 (火) 10時43分

ゆきぞうさん
サイレンススズカか倒れた場所は、乗馬センタ−からちょうど見えた位置にあったそうです
スタッフも心配で見つめたましたが、馬たちもじっと見つめていたと聞いています
翌年の天皇賞の日、武さんが同じ場所まで走って行く姿を乗馬センタ−で見ました
「どうしたんだろ?」ってみんなで話しましたが、武さんはサイレンススズカに挨拶に行かれたみたいですね

>早熟と思える馬が増えてきている気がします。
私もそう思います
若い時期にガンガン使って元手を取り戻してると噂される馬主もいますね
ちょっとズレるけど、大井競馬場で行われているトゥインクルレ−スは、競走馬生命を縮めると聞いたことがあります

mihoさん
>馬は打たれた後更にハンマーで殴られるそうです。
なんで馬だけ殴られるんですかぁ???
肉になる動物の安楽死は、薬殺できないんでしょうか?

美也子さん
>それにしても58000の人出とは! すごいですね。
このくらいは大したことありませんょ
10万人超えることもあります
17万人だか18万人も入場者があった時は、ほとんど人の背中しか見えませんでした
私の出身の市と同じくらいの人口なのでビビりましたね

11万人の入場者があった日に、高配当になったことがありました
配当が確定になった瞬間、11万人のため息を聞きました
11万人集まると、ため息もすごいかたまりになるんですね
背中を押されるようなすごい勢いですょ

「イッツ・オンリー・トーク」には、とても興味があります
乗っている時に、馬が骨折する時の音を騎手は忘れられないと聞いたことがあるので、騎手はそれを乗り越えてまた競馬に向き合うわけですから、すごい精神力だと思います
また、情報がありましたら、教えてください
ありがとうございます

投稿: ぁぃ | 2005年5月 4日 (水) 02時11分

ナゼでしょう?それだけ大きいからでしょうか。
拳銃のようなものでほぼ即死なのですが・・・・・。
安楽死とは何でそうか?
やすらかに、楽に、死ぬ。
わかりません。

投稿: miho | 2005年5月 4日 (水) 08時40分

いつもROMばかりでしたが、競馬ファンなものでちょっとだけ。

安楽死させる場合、大抵薬を注射するようです。薬殺です。どういう薬かとかまでは存じませんが、拳銃とか殴打とか乱暴なイメージでの処置ではないようです。

あと、競走馬の故障に関する研究はJRAの競走馬研究所でかなり進められてます。
http://www.equinst.go.jp/JP/index2j.html
我々から稼いだテラ銭も当然使われているはずですよ。

私は一ファンですが、競馬のいろんな問題について関心を持ってますので、あいさんならではの取材の成果が出ることを期待してますよ。ただ結構ディープな世界でもあるので大変かとは思いますが。

投稿: こっしー | 2005年5月 6日 (金) 10時58分

こっしーさん はじめまして
JRA競走馬総合研究所が、日本で唯一競走馬の研究を行っている機関のようです
ここからは、いろいろな論文も出ていて、興味深いものもありますょ

いろいろな大学もありますが、一つの機関に頼っているというところが、競走馬の研究が遅れている原因なのかもしれませんね

投稿: ぁぃ | 2005年5月 6日 (金) 11時18分

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