« 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記5回目】  | トップページ | 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記7回目】 »

2005年4月26日 (火)

中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記6回目】 

4月25日取材

今回のインタビュ−は、昼間、ある企業に突然電話をし、その日の夜にインタビュ−に応じていただくという強行突破
伺った時にお手隙な方が受けてくださるということで、会社に出向くと、インタビュ−されるご本人は「何も聞いていない」とものすごく驚いたご様子でした
一時は、『取材できないかしら・・・』と不安になりましたが、すぐに「大丈夫ですよ」と応じてくださって感謝しています

いろいろな資料を読んだり、中国へ留学していた友人から話を聞いたり、あちこちのブログを読んだり、また実際にお2人の中国の方にインタビュ−をしてみて、中国の中でも、地域によって日本に対する考え方が違うと知りました
今回インタビュ−を受けてくださった方は、仕事柄、中国全土の人たちとよくお話をなさっているためなのか、いろいろな考えがあちこちに見て取れました

彼自身のことを聞いてみると「日本に悪いイメ−ジはない」という第一声でしたが、私にはそう思い込もうとしているという気がしてなりません
幼い頃に見た日本人の残虐な行為を描いた映画
そして、歴史の教科書に載っていること
そういう事実があったと、彼は信じていました
でも、日本人に親切にしてもらって、日本人の女性と結婚した今、あの教科書の中に書かれていたこと全てが事実ではないのかもしれないと感じいます
私には、戦争の当事者ではない彼が、2つの国の間にある2つの事実に翻弄されていると感じました

もうひとつ、気になっているのは、彼が「びっくりした」という点で、今回のデモは、中国国民自らが動き始めたものだというところです
過去の戦争も靖国問題も日本政府がしかけたことだけど、今回のデモは、はじめて中国からしかけた出来事で、しかも中国政府ではなく国民が動いたということ
取材をする前も今も、あの激しい行為を見たり、日本人留学生への暴力があったと聞いて、「常識がないんじゃない?」と考えは変わらぬ私ですが、そろそろ私なりの答えを出してみたいと考えています

    【 覚書 】

  • 四川省成都出身(両親・祖父母共に成都出身) 男性 28歳 会社員
    1998年から日本へ留学
    日本語学校→大学→会社員
    5年前にアルバイト先で知り合った日本人女性と恋に落ち、3年前に結婚

    Q.日本に来るきっかけは?
    A.経済面から考えて、日本語を勉強する必要があると思って留学した。

    Q.どうしてヨ−ロッパやアメリカではなく日本なの?
    A.最初に考えたのはオ−ストラリアのシドニ−だけど、漢字を使うので日本語の方が勉強しやすいと思った。
    しかも、保証人になってくれる人が日本にいたから、その人に紹介されて、先ず日本語学校に入った。

    Q.日本へ留学に来られたということは、中国にいらっしゃる時、日本に対する悪いイメ−ジはなかったの?
    A.私は、日本が好きだから。
    中国は、北・南と広いから、昔戦争されたところは、日本人の昔のイメ−ジが残っている。

    Q.それは中国の中のどの地域?
    A.東北、旧満州の辺り。

    Q.沿岸部の方は近代化が進んでいて考え方も開放的だと聞いているが、成都は南でも内陸部。周囲の方で戦争中の日本人について話をする人はいないの?
    A.あまり知らなかった。ただ、こどもの時テレビ番組でよく見た。
    父の世代より若い人は、戦争を知らない世代だし、もちろん戦争は反対してるけど。

    Q.戦争を反対してるのなら、余計に日本人のことを話す人はいない?
    A.いや、反日感情はあまり高くない。
    今の報道では「反日、反日」と言ってるけど、実際に「反日」と言ってる人は少ないと思う。
    多分学生さんが遊び半分でやってると思う。
    本当に「反日」と言う人は、グル−プの中にひとりかふたりくらいで、その人たちが呼ぶとみんなが集まるという感じが多い。

    Q.あなたが学んだ歴史の教科書には、日本人が戦争中に残虐な行為をしたと出てた?
    A.(少し声が小さくなって)出てた。

    Q.授業の中で、それについて先生がいろいろなエピソ−ドを語ったり、クラスで話し合ったりするの?
    A.ええ。まぁ、事実だと本に書いてあるから。(小さな苦笑)

    Q.では、教科書を読んで「日本人て悪いんだぁ」って思わない?
    A.こどもの頃は思ってた。昔、テレビとかでよく見たから。
    中国は日本やいろいろな国に侵略されて、戦争して、いろんな人を殺されて・・・。
    そういう写真とかが、展示されている。例えば、昔の刑務所とかが残されていて、博物館としてそのまま展示されている。
    写真もその中で展示されている。

    Q.中国には、あちこちにそういう博物館があるの?
    A.いや、そんなにいっぱいない。
    私は、成都で見た。
    つまり日本の昭和記念館とかのように、戦争当時のものが、いっぱいそのまま残っている記念館があった。
    それぞれの地方によってあるもの。

    Q.テレビというのは?
    A.昔のビデオとか映画。
    やっぱりそういうのを見ると信じる。

    Q.こどもの頃は日本人が戦争中に悪いことをしたと信じていて、それから大人になるにつれて日本人に対するイメ−ジが変わったの?
    A.もちろん。

    Q.どうして変わるの?
    A.昔は、日本人に悪いイメ−ジを持っていたけど、日本に来たら、みんな日本人は親切だし、わからないことは丁寧に教えてくれるので、困ることがない。
    最初は日本語がわからなくて悩んだけど、みんなが親切に解決してくれて、日本人は優しい人が多い。
    テレビとか映画では、そういうイメ−ジではなかった。

    Q.中国にいらっしゃる時は、日本人と話す機会はあった?
    A.あまりない。
    私が日本に来たのは7年前だけど、その前から中国には、日本のドラマとかいっぱい入ってきてた。
    日本のイメ−ジは、それを見て変わってきた。

    Q.戦争中の日本を描いた映画を見ていたのは、何歳くらい?
    A.だいたい小学校ぐらい。(教育制度は日本と同じ6・3・3・4)
    中学ぐらいから、日本のドラマとか見はじめた。

    Q.あなたが見た日本のドラマで、印象的だったものや今でもよく憶えているものはある?
    A.いや〜、日本人の名前は、なかなか覚えられないから。

    Q.山口百恵を見てたと29歳の人が言ってたけど?
    A.それは、6歳7歳のくらいに見てた。古いな。(笑)

    Q.じゃあ、かなり以前から日本のドラマをご覧になってるのですね?
    A.はい。

    Q.では、日本のドラマを見ると、戦争中の日本人と違うと感じる?
    A.今の中国の若い人たちは「反日」と言っても口だけの人が多い。
    日本製品を壊したり、日本の製品を買わないと言ったり、日本の自動車を壊している人も報道されていたが、自分たちの家の中には、高級電化製品など日本製品が多い。
    本当に反日だったら、自分の家の日本製品を壊せばいいじゃないですか。(笑)
    昔、経済があまり発達してない頃、中国人は、日本の製品がいいと思って、買う家庭が多かった。製品の質がいいので、すぐには壊れない。
    それなのに「反日」と言ってるなんて、ちょっとおかしい。

    Q.日本に来る時は、ご家族はどなたも反対しなかった?
    A.しなかった。(笑)みんな承知してるから。

    Q.テレビをご覧になったりして、日本に来る前イメ−ジはどんなの?
    A.それは富士山!それは平和のシンボル。
    中国人で日本に観光に来る人の第一目的の場所は富士山。

    Q.あなたも富士山に行った?
    A.ええ、一度だけ。(笑)結構きれい。
    昔から、富士山の風景の映画をよく見ていたので、みんな日本に来る時は富士山、次は大阪・京都。
    東京に来る人の目的は、秋葉原の電気街。
    去年の計算によると中国人のお客さんが、いちばん売り上げトップなのに、なぜ「反日」と言うのか。
    結構中国人の買い物はすごい。
    外国人にとって秋葉原は、電気の街で、世界中で有名。
    毎日、結構観光で来ていて、その内の半分以上が中国人。

    Q.あなたが、日本に着いて最初に持った印象は?
    A.人口が多いって思った。でも、すごく便利。
    今、通勤はすごく遠いけど電車1本で通えるし、地下鉄も発達してるし、中国の北京と比べると、まだまだ北京は何年も追いかけなくてはならない。
    日本は、経済面で昔から強くなってるから。
    日本人の創造力とか、働きとか・・・。
    昔中国の教科書にも日本人のことを『働き蜂』と書いてあった。日本人の精神力はすごいので、教科書に載っている。

    Q.何か日本人に嫌なことを言われたりとか・・・。
    A.(質問が終る前に)いやないね!
    昔、飲食店でアルバイトをしていたが、若い人たちとお互いにすぐ仲良くなれた。
    いじめられたことは、そんなにない。

    Q.日本の食べ物はどう?
    A.生ものがだめだった。わさびもだめだし。中国にもわさびはあるけど、食べる人は食べるけど、食べない人は絶対だめ。
    今はだんだん慣れて、全くだめではなくなった。
    納豆は大丈夫。
    今は、中国でも日系の企業がどんどん入っているから、日本人が増えると日本料理も増えるので、中国の人でも納豆を食べるかもしれない。
    四川料理は、麻婆豆腐とか回鍋肉とか。(笑)
    エビのチリソ−スはない。向こうは海ないから、えびとか無理でしょ?
    麻婆豆腐も、山椒とかいっぱいかけるから・・・。日本のはかけないでしょ?
    日本人の口に合わせるように作ってあるけど、向こうに行ったら全然違う。辛いし、油っこい。
    日本の中華料理屋さんでは、油っぽくないように片栗粉でとろみをつけてあるけど、向こうではそんなに使わなくて油っこい。
    炒めてる時は、火が燃えてる。家庭でもそう。
    唐辛子は体にも良いと思っている。
    四川は雨が多くて湿気が多いので、関節炎とかにならないように唐辛子をかける。かけると汗が出るでしょ?風邪もあまりひかない。
    四川地方は、周りもみんな辛いのが好き。
    上海の方、つまり華中は辛いのが好きじゃない。
    北京はぎょうざ・しゅうまい・ラ−メンが中心で米は食べない。
    南は、魚とか肉が中心。
    日本に来たばかりの頃、辛いものがあまりないと悔しかったが、韓国料理にあった。
    日本料理は味噌汁とか漬物とか、あんまり味がないと思う。四川料理は味が濃い。中国料理は何でも味が濃いけど、日本に来たら何でも油がなくて味も薄い。

    Q.大学を卒業した時、日本から出て別の国に行くことを考えなかったの?
    A.シドニ−に行きたかったけど、資金がない。
    でも、友達は英語を話す人が結構いる。友達の紹介で、アメリカ人やカナダ人の友達がいるので、英語も勉強している。

    Q.卒業した時、中国に帰ることは考えなかった?
    A.このまま帰ったら、笑われる。大学も卒業したし、こんなに長い期間日本で勉強したのに・・・。
    能力のある人は、すぐ帰って自分で会社を作ったり、大手の会社に入ったりできるけど、私は、まだ何もできない
    それなのに帰ったら、ちょっとおかしいとみんなに笑われると思う。
    もうちょっと仕事の経験を積んでもっと勉強すれば、向こうへ帰っても、すぐ仕事が見つかると思う。もっとここで仕事したいと思った。

    Q.では、いずれは中国へ帰るの?
    A.いや、当分は考えてない。シドニ−には行きたい。そしてお互いに文化の交流をしたい。
    私は、小学生の頃から太極拳とか少林拳が好きだった。武道をやっていた。
    日本に来た時の最初の夢は、ここに教室を作って先生になること。中日の文化も交流できるし。
    でも、日本に来たらちょっと違った。
    例えば、中国の公園では、朝5、6時からあっちこっち人が溢れて、健康のために運動している。
    日本の公園の中に入ったら、誰もいない。みんなスポ−ツククラブとかに入ってるから。
    大学の時クラブで少しやってたけど、社会に出たら時間的に無理。
    実は、結婚したので簡単には中国へ帰れない。
    中国では、男性でも厨房へ入って家事をするので、私も土日は家事をする。
    今の中国では、ひとりっこが多いので、あまりやらなくてもいいけど、日本に来てひとり暮らしをはじめてからできるようになった。

    Q.ご結婚なさる時、ご家族の中で反対する人はいらっしゃらなかったの?
    A.いなかった。両方とも両親は反対しなかった。反対に喜んでくれて、うれしくてよかった。
    彼女は、アルバイトをしている時に知り合って、日本語がわからなかった私に英語でいろいろ教えてくれた。それがきっかけ。
    こんなに早く結婚するなんて、私もびっくりした!
    普通日本人の家庭は、外国人と結婚するのは嫌いでしょ?最近は増えたけど・・・。
    最初は、向こうも自分の親も反対するだろうとドキドキした。
    彼女のご両親もとても優しい人で、しかも昔から戦争を嫌がって、おじいさんも戦争へ行かなかった。
    だから国際結婚しても反対されなかった。

    Q.国籍は?
    A.私は中国、妻は日本。

    Q.奥様も中国に行かれたの?
    A.短時間で行くことはあるけど、向こうで生活をはじめようとは考えたことはない。
    向こうに行ったら、上海とか香港とかはいいと思って「上海に住みたい」と言うが、内陸へ行くとバスや電車のないところとか、結構いろいろ不便。
    こどものことを考えると、将来的には日本の方がいいかなと考える。
    これから家族のためにがんばらなきゃ。

    Q.では、一生日本で暮らす覚悟をなさっているの?
    A.多分将来は、中国で親と一緒に生活するかもしれない。ひとりっこなので、親の面倒を看なくてはならない。

    Q.教科書に書かれている日本人と、今実際に会っている日本人にはギャップがあるように感じる?
    A.ふぅ(苦笑)
    日本に来て、だんだんイメ−ジが変わってきたし、教科書に書かれている事実もあるし、嘘ついてる部分もあると思う。
    日本に来ないで向こうにいたままだと、そういう考えは変わらないかもしれない。

    Q.あなたが中国に帰った時、教科書の中の日本人と今の日本人にはギャップがあると周囲の人に言うことはできる?
    A.うん!そうですね。しかも今の日本人の若者たちは、戦争のことをわからない人が多い。
    その責任はないし、戦争はもう昔のことになっているから。
    これから中国もそうで、オリンピックのことで精一杯になってるから、昔のことは・・・でも今はわからないですね。

    Q.中国の方の中には、また日本が侵略すると思っている人はいない?
    A.中国では、なかなか戦争は起こらないだろうと思っている。
    今、中国と日本の間は経済的にお互いさまで、日本の貿易の中心は中国だし、中国のどこにでもいろいろな日系の企業があるから、もうお互いに経済を発展させていると知っている。
    政治的に問題は台湾で、日本は戦争するまでには行かない。
    ただし日本は、靖国神社参拝とか歴史問題を繰り返して、中国人の感情を壊すかもしれない・・・。
    向こうの人の考えは、靖国神社には昔の戦争に行った人・・・。日本人は多分当たり前と思うかもしれないけど、中国だけじゃなくて韓国とか他の東南アジアの人も反発している。
    それは戦争の元に・・・。

    Q.小泉総理が靖国神社に参拝するようになってから、中国の人はずっと我慢してたの?
    A.(暗い声で)そうですねぇ・・・。
    やっぱり台湾人とか香港人からはじまって、今はインタ−ネットがすごく流行っているので、どこで何があったとすぐに全国的に広まる。
    中国での反日感情が高まったのは、今年かな?去年かな?

    Q.小泉総理が靖国神社に参拝するまでは、そんなに怒ってなかったの?
    A.ええ、全然なかった。

    Q.先ほど、反日デモに参加している人は学生さんが多いということだったが、物を投げたり壊したり、暴力を振るっている人たちは、具体的にはどういう人だと思う?
    A.気持ち的には反日じゃないと思う。
    後ろで誰かが誘っていると思う。
    学生さんたちは、遊びたい人が多いので、それにひっかけて自分の気持ちを発散させているのではないか。

    Q.では、あなたは「なぜあんなことをしてるのだろう」と思う?
    A.逆に小泉さんは、なぜ靖国神社に参拝するだろうと思う。そういうことをしなければ、デモもできないわけだから。
    日本の料理屋さんなどは、何もしないのにお店を壊されたり、大使館にも石とか投げられたり、そういうのはおかしい。
    日本は、日本の問題もあると思う。靖国のことと島のこと。
    結構政治の問題は難しい・・・。

    Q.では、デモを起こしても仕方ないなと思う?
    A.う〜ん・・・学生さんなど20代の人は、そんなに反日という気持ちはないから、30代、40代の人は、昔家族の中に処刑にされた人がいるので「なんでそういうことできるの?」と怒っている人もいる。

    Q.日本人に処刑にされた人がたくさんいるの?あなたの知り合いにもいる?
    A.成都にはいなかったけど、昔成都も日本に空爆されたから。
    今は平和になっているままだといいけど、どこか一箇所でも反日感情が高まると、すぐに全国的に広まってしまう。

    Q.おじいさんやおばあさんが日本人に処刑にされたという人は、戦後もずっと怒りの気持ちを抱えていたの?
    そういう人はたくさんいらっしゃるの?
    A.(中国の地図の北京からハルピンの辺りを指差しながら)やっぱりここら辺でね・・・。

    Q.「満州」と言われていた辺り?あと南京も?
    A.ええ・・・。ここら辺に人たちはやはり反日。
    上海や南の方は日中友好の付き合いをこれから続けて欲しいと思っている。そんなに反日ではない。

    Q.南の方の人の教科書にも、昔の日本のことは出ていたけど、今は日本と経済的なつながりがりがあるので、複雑な気持ちの人もいる?
    A.それはない。昔の歴史は、もう薄くなっている。
    中国は、昔から「戦争戦争戦争」、何千年も続いているから。
    もう将来を考えると、歴史の問題のことは忘れないけど、これからの経済を発展させるように、日本を責めてばかりいないで仕事をがんばる。
    だから、南の方の人は、歴史はあまり関係ないと思っている。

    Q.日本を追い抜いてやろうとみんな思っているの?
    A.ええ。

    Q.日本での反日デモの報道についてどう思う?
    A.中国と違う。中国では、そういうことはあまり報道しない。要するに、向こうのマスメディアはあまり公開していないから。
    日本だと言える権利があるけど、向こうだとやっぱり厳しいから、政府に何か文句があっても出せない。
    この前、上海と広州の大規模なデモがあったので、心配して中国に電話をかけたけど、向こうの家族は誰も知らなかった。
    旅行会社で働いている友人から「日本から出張や仕事で中国へ行っている人が、今月でもいっぱいいる」と聞いている。
    でも、ツア−はキャンセルされて影響があった。
    危ないところはデモをやっている大使館の回りとか、日本人に関係のあるところ。でも、普通の街では、普通に歩いても何もない。
    日本のテレビは激しいデモの様子を中心にやってるけど、実際はそんなに危なくない。
    ずっとテレビでそういうのばかりやっていると、日本人も「中国人嫌い」という気持ちになる。
    みんなお互い友好で解決してほしいと思うのが、いちばんの気持ち。

    Q.デモがはじまってから、日本人に何か言われた?
    A.(びっくりしたように)日本で?いいえ!ないですよ。

    Q.デモについて、奥様や他の日本人と議論した?
    A.いいや、うちではしない。
    「まだ中国でやってるよ」と奥さんに話したら「私たち関係ないです」と話した。

    Q.中国の方同士では話す?
    A.ええ。「ちょっとなんだか向こうはおかしいんじゃないの?」「なんでそんなことやってるの?」と話した。
    例えば靖国神社のこと、歴史問題のことなどは、昔は日本政府からということがあったけど、今回のは、はじめて中国国民からの「反日」だからちょっとびっくりした。
    昔は、多分ずっと我慢してたから、今回は、台湾・香港を中心として、すぐ中国全部へ広がった。
    昔は、香港とか台湾人に反日感情があったと思う。いちばん反日感情が強いのは、多分韓国。昔植民地なので。

    Q.台湾がいちばん反日感情が強いの?
    A.ええ。台湾は、50年間日本に統治されて植民地だった。だけど今回、釣魚島へ入った人が日本に逮捕されたニュ−スが出たら、向こうでは怒っていた。
    その後、中国へ反日感情が伝わった。
    台湾は3、4年前からはじまっていた。2年前かな?釣魚島へ入った人が逮捕された後、1回大規模なデモになった。
    中国人の領土なのに、なぜ日本人が逮捕したの?だから中国人は納得できない。

    Q.それは、中国全土の人もそう思ってる?
    A.う〜ん、昔の歴史があるから、どこがどこの領土かわからない。
    中国人は、台湾人と同じ民族だから、一緒にそういうことに没頭して・・・。
    そういえば、韓国の中心は竹島?それも韓国の領土か日本の領土か、いろいろアンケ−トもやってたはず。

    Q.香港の人たちは、イギリスに対して反日感情と同じような反発する気持ちを持っていないの?
    A.ええ、持ってない。

    Q.日本とイギリスの何が違うの?
    A.え〜っとねぇ・・・(考えて)わからない。
    日本人とイギリス人を比べると、香港はイギリス人のお陰で今のように発展した。
    日本人の方は、戦争の時に空爆でいろいろ壊しているから、ショックがあると思う。
    香港もされたことがあるけど、香港だけじゃなくて、東南アジアのベトナムやミャンマ−とか、いろいろなところまで、中国と同じ反日感情を持っている。
    昔、戦争中に東南アジアへ逃げた中国人がたくさんいるから。シンガポ−ルも結構中国人が多い。
    なぜ日本人に反日感情を持っているかというと、昔戦争で家がなくなったから、あちこちの周辺の国へ逃げたから。

    Q.それは、歴史で習うの?
    A.うん、あっちの教科書に出てる。

    Q.中国人のお友達と反日デモについて話した時「デモして当然だ!」と強く言う人はいない?
    A.う〜ん・・・そうですねぇ・・・、私たちの仕事にも影響するので、あまりして欲しくない。
    在日中国人といろいろ話すけど、在日中国人に関しては、反日感情を持っている人は、そんなにいない。
    やっぱりみんな日本の技術とか文化を勉強するために来たのだから、反日感情はなさそう。

    Q.では、日本のマスコミに、デモばかりではなくて、街の中には静かで安全な場所もあると報道して欲しい?
    A.日本のテレビ局は、何か事件があると、ずっとそればかりやっているから。どのチャンネルも同じこと。

    Q.日本人は、中国の方たちに許してもらうには、どうしたらいいの?
    A.私たちの協力も必要だけど、私たちの力は何にもならない。
    中国は共産党がいちばん強いから、いちばん上のトップの人が言わないと、みんなは何もできない。
    むこうは日本と違うから、小泉さんがひとりで何か言ってもみんな反対できるけど、中国ではできない。
    何か反対したら、昔のことを考えたら、今の北朝鮮のように政治犯になってしまう。毛沢東の時代はそういうこともあった。
    今は、ぜんぜんなさそうだけど、実際には厳しい。トップの悪口を言っても、何の得にもならない。
    今の問題は、中国も日本も両方が謝らないこと。向こうはこっちの責任、こっちは向こうの責任。それを続ければ、もっと激しくなるかもしれない。

    Q.日本人は世界で嫌われてると思う?
    A.思わない。尊敬されていると思う。日本の技術は、世界一、トップだから。例えば車とか電気製品とか、日本のものがどこでもいちばんいいから、日本の技術者たちがすばらしい。
    戦争の時の日本人の『武士道』を中国でも教育されたことがある。
    日本人は、戦争に負けても逃亡しないで自殺するということで、精神力はすごかった。
    向こうでは、そういう教育もあった。
    日本とアメリカの戦争で『兄弟』という映画も出たくらい。

    Q.日本はアメリカにペコペコしてるって感じる?
    A.ええ、感じる。中国人から日本を見ると、アメリカから奉公させられているから兄弟という感じに見える。

    Q.日本政府に望むことは?
    A.ない。日本人の国民と同じように感じていて、日本政府の中に与党と野党がいて、前からけんかばかりのことをやっているので、それを解決しないと外のことは何もできない。
    政治家たちは嘘ばっかりついているから、本当に何かをやる気持ちが、昔に比べたらなさそうに見える。
    だから、今の政治家たちに何かを望もうとしても、多分無理だと思う。

    Q.中国の政府はやる気満々?
    A.ええ。

    Q.中国のマスコミは政府について自由に報道できないでしょ?
    A.あまり自由にできない。でも、今中国の政府は、前と比べると大分変わった。
    昔は、みんな70歳代以上じゃないと有力な人にはなれなかった。でも今は変わった。中国の主席の胡さんもすごく若い人。
    昔は、みんな戦争に行った人ばかりが有力だった。でも今は、大学出た人。
    昔は、同族に偉い人がいないと出世できなくて、中国の経済も伸びなかった。
    今は、試験もいろいろやってその人の能力を見るし、中国も日本をいろいろ真似てやるようになってきた。公務員試験とか、資格試験とか、いろいろあるよ。
    今は実力主義に変わってきた。

    Q.中国の若い世代に望むことはある?
    A.あるよ。Yahooの掲示板では結構ある。
    チャットで中国の知らない人たちと話すと、私はもうずっと日本にいるから、今の若い人は何を考えているのかわからない。
    戦争とか歴史とかぜんぜん関係ないテ−マで話しようと話しかけられて、「ああ、なんだ日本にいるんだ」と悪口ばかり言われて話にならない。
    なんか壁があるのかなぁ・・・話にならない。

    Q.では、インタ−ネットの中だと反日感情はすごく高まっているという感じはする?
    A.ああ・・・多分ね。反日について話すとすぐにけんかになりそう。

    Q.「日本人と仲良くしたほうがいいよ」とは言えない雰囲気なの?
    A.ちょっと言えない。言ったらすぐに悪口言われる。

    Q.例えば何と言われるの?
    A.え---っと・・・ちょっと、(力なく)はっきりは言えないけど。(苦笑)嫌がられる感じで、「私たちと話しないで」とか「出て行け」とか。

    Q.ネットの中ではかなり深刻ですね?
    A.全く関係のないことを話せばいいんだけど「日本にいるよ」と言ったら、すぐ話は終る。(苦笑)
    戦争とか歴史の話でなければ問題ない。例えば、事務製品とか新しいパソコンの話とか、向こうでは日本の携帯電話にすごく興味を持っているから。
    カメラや動画もきれいだし、テレビ電話もついているから、そういうテ−マばかり話していると、逆に反日のことを話している人に「サヨナラ」と言う。
    戦争や歴史がテ−マのチャットだと悪口を言われるが、文化がテ−マのチャットル−ムだと「出て行け」と言われることはない。
    携帯電話の話だと逆に「日本のはいいですね。欲しいですよ」という話になる。
    情報が欲しいし、見せて欲しいと思っているようだ。
    若い人たちは、日本の携帯電話やビデオカメラにすごく興味を持っている。

    Q.反日と興味、どっちが多いの?
    A.日本のことを知りたい人が多い。今中国の人は、日本のことに詳しい。
    反日感情を持つ人は、家族の影響があって「昔おじいさんが亡くなって、財産が日本人に奪われた」という話がもしあったら、孫たちは反日感情を持つ。
    中国では、若い人はみんな学校に住んでいて、デモに行きたくない人でも行かないと「なんで行かないの?」と言われるから、誘われれば行く。
    若い人たちは、戦争のことは何も知らないけど、遊びたいから。私はそう思ってる。

    Q.昔、日本人から嫌なことをされた家族を持つ人がこどもにがデモに行けと言うの?
    A.いや、そうではない。

    Q.中国では親がこどもに厳しいの?
    A.今中国ではひとりっこが多いのであまくなってると思う。
    本当の気持ちは反日感情を持っていない人の方が多いが、若い人同志で「どうして私は行くのにあなたは行かないの?」とひとりだけ言われないように「ちょっと行ってみよう」となっている。
    石を投げているのは、何かを表現したいと思っている若い人たちで、7割の人たちは誘われている人。
    日本のことをもっと知りたい人が多いから、日本の韓流ブ−ムみたいに、もっと文化の交流をすればいいと思う。

    Q.実際にはチャットの中で「出て行け」と言われたのはどの位?
    A.私は2、3回ある。

    Q.中国の方は、反日について話すのは嫌なの?できれば話したくない?
    A.いや、別に気にしてない。大丈夫。私は、政治と経済の中立にいる。

 * たどたどしい表現もできるだけ忠実にお伝えしたいので、そのままにしている箇所があります。ご了承ください。

|

« 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記5回目】  | トップページ | 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記7回目】 »

コメント

あいさん、こんばんは∈^0^∋
ご苦労様でした。
 ぼくは、清濁併せて、様々な情報を流せる政府がないと、そこには、正しい判断が出来ないのではと思いますね。
 くまさんでした。ではでは(^.^)/~~~

投稿: くまさん | 2005年4月27日 (水) 09時38分

あいさんお疲れさまでした。

普通の方の反応が伺えてよかったと思います。今回の暴徒化したデモが中国人ひとりひとりの意思を反映したものでない、ということがよくわかります。小泉首相が事態の沈静化に動いたのは(当然とはいえ)評価できると思います。これが戦前だったら「暴支ヨウ懲」の「世論」に押されて火に油を注いだ結果になったでしょう。村山談話を再確認して、日中間で歴史認識を共有する手がかりができたのですから、事実の解明作業を日中共同して進めて、教科書の共同作成までできるとよいですね。

投稿: maharao | 2005年4月27日 (水) 11時16分

マスメディアには出来ない切り口でとても参考になりました。また同じインタビューを読んでいても全く違う捉え方をしているコメントがある事に驚きました。 maharaoさんのおっしゃるように教科書の共同作成が行われて両国間がより近い関係になる事が望ましいと思います。(これはドイツ、ポーランド間でも行われたと聞いています。)今後のご活躍を期待しています。

投稿: 今泉 | 2005年4月27日 (水) 18時07分

あいさん、初めまして。このたびの日中問題についてネットを巡っているうちに偶然たどり着きました。取材記、大変興味深く拝読させて頂きました。
 私は、仕事で中国人留学生と接する機会が日常的にあり、彼らと(彼女らと)日中間の政治・歴史問題についてたまに話し合います。この度の反日デモについては、彼らは総じて否定的です。日本人は優しく親切で、日本は経済発展した素晴らしい国という認識のようです。(もっとも、日本に留学に来る中国人は、もともと「日本好き」な人が多く、このような答えが返ってくるのは当然なのかもしれません。)
 歴史問題については、近年の教科書問題を取り上げて、日本はなぜ歴史を捏造するのか?というような質問をよくされます。これに対し、南京事件等のいくつかの歴史トピックスは、いまだ学術的に検証中であって、史実として統一的な歴史認識ができていない、と説明しています。そうすると、たまに、「歴史的事実は一つしかないのに、何故検証する必要があるのか?」と質問されることがあります。(一瞬めまいを覚えますが、)ここで、学術活動に対して政府の規制の強い中国とは違い、日本では、歴史事実は学術的研究の積み重ねによって中立的に確定されるということを一生懸命言っています。
 上の方がお書きになったように、日中間での教科書の共同作成は、実現できれば、素晴らしいことだと思います。是非とも学術研究に基づいた中立的な史実が書かれた教科書を作って欲しいものです。 
 ただ、ドイツとポーランドのケースは日本にとってあまり参考にならないと思います。なぜなら、戦後ドイツ政府は、戦前のナチス政府との政権の継続性を認めていません。つまり、戦前の悪いことは全てナチスのやったことであり、戦後のドイツ政府及びドイツ国民にはその責任がないこととなっています。もちろん、ポーランド政府に対しても、ドイツ政府が公式に外交上の謝罪をしたことはありません。従って、両国での歴史認識の共有が比較的容易だったのでしょうね。

 とりとめもないことを書き込んですみません。今後の記事を楽しみにしています。

投稿: hatsu | 2005年4月28日 (木) 01時43分

この記事へのコメントは終了しました。

« 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記5回目】  | トップページ | 中国人に問う「あなたは反日ですか?」 【取材記7回目】 »