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2005年3月18日 (金)

介護保険施行から5年。今現場の声 【取材記4日目】 

Izakaya 今日の私はおでん隊
老人ホ−ムで『居酒屋』と称するイベントで、おでんの仕込みと配膳担当の受け持ちです
ボランティアをさせていただいて、介護保険の利用者でる方たちの暮らしぶりをのぞいてみました

夜の楽しい居酒屋の前に、午後に開かれた年2回のデイサ−ビスセンタ−を利用されている方の家族懇談会にも同席させていただきました
ご家族の方が不安なのは、決まっていないことが新聞等で報道されている介護保険の改正後そうなるのかという点です
新聞には「こんな風に改正されるらしいですよ」と書かれているけど、じゃあ自分が住んでいる地域では、実際どの部分が変わるのかと質問してみても、施設では決まっていないことを無責任には回答できません
とは言え、生活に密着していることなので、少しでも不安を解消できるようにと、施設長が新聞のコピ−を使って説明をしていました

「決まってないことは答えられない」と最初に言われているので、質疑応答の時間になっても、会場内は静まりかえっています
質問しようにも、どこまでを聞いていいのかわからないと言った重苦しいが空気流れるだけ
家族の方たちも、施設の方の最大限の努力を承知なだけに、どこに不安をぶつけたらいいのかわからないといった感じです
新聞には詳しく書かれているのに、決定事項ではないなんて、納得いかないが不満を受け入れてくれる場所ない
それでも、介護保険はしっかりと施行されていて、日本人はおとなしい国民なのかもしれないと切なくなりました

利用者のご家族の中で、過去に2つの区で介護保険の認定を受けた人がいらっしゃいました
介護保険の認定は、年に1回(重度だと年2回)行われます
去年はこちらの区で患者のことを知りつくしたケアマネ−ジャ−が審査をしてくれたが、今年のあちらの区では、初対面の人が審査してちょっとおかしいと不満をもらしていました
患者のことを知っているか知っていないかは、審査の結果振り分けられる要介護の区分に大きく影響します
特に、ひとり暮らしの場合、代弁してくれる家族がいないので、家族がいる人ととでは、その基準が変わってしまうことにならないかと切実に感じました

その要介護の区分は、今年の10月の改正に伴って、軽度の人は大きく変わります
それぞれの区分に当てはめられて、その中でいろいろなサ−ビスを受ける介護保険
老人ホ−ムでの居酒屋ボランティアを通して感じたことは、人はひとりひとり違うのだから、区分に分けられるのがおかしいんじゃないかということです
例えば、この人は、介護は必要ないのでジムワ−クで介護保険を使えるが、意欲を持って生活するためにデイサ−ビスを利用したいというご本人の要望から、それも受けていいですというようなオプション形式にすればいいのにと思いました

老人ホ−ムの食堂で、ただ座っているだけの老人を見て、若かりし日の厳格な父の姿を想像し、「老いって何なのさ」と考えさせられました
世の中に貢献し家族を養った後この施設に来たこの人は、自分の人生についてどう考えているのだろう
そして、居酒屋では、
「私、楽しいの♪」
と仲間たちと酒を飲み、合唱をして楽しむおばあさんの姿もあります
子供を産んでいない私は、将来こういう施設に入って、若い人にサポ−トされながら、仲間と一緒に楽しく最期の時間を過ごすのかなぁと老いと介護保険を身近に感じた一日でした

    【 今日の覚書 】

  • デイサ−ビス利用者の家族懇談会に出席した

    居住費用・食費の見直し
    施設:介護保険に関する報道をご覧になって、不安な点もあるだろうが、決まっていないことには答えられない。
    現状のままだと介護保険は破綻してしまうので、保険料を上げて給付を減らしていくという形を取らざるを得ない。
    例えば、在宅の人と老人ホ−ムを利用している人に格差があったので、その差をなくそうとしている。
    在宅の人ならば家賃を払っているので、老人ホ−ムに住む人も家賃を個人で負担してもらう。
    食費も見直されて、老人ホ−ムを利用している人は、食費を1日780円個人負担しているが、その780円という金額は食材の値段だけで光熱費は入っていない。
    在宅の人ならば、当然材料費に加えてガス代や水道代がかかるので、老人ホ−ムで暮らしている人にも光熱費と調理を作る人の人件費を個人負担してもらう。
    デイサ−ビスを利用している人の食事も同じなのだが、食材費に何をプラスして金額を出せばいいのか、厚生労働省や行政に確認してもはっきりしないので、ご家族の方へ数字を提示することが現段階ではできない。
    施行されるのは平成17年の10月からなので、今年の夏にははっきりしたことが言えると思う。

    新予防給付の創設
    施設:今までお買い物に行っていた人が、ヘルパ−が来るようになったら買い物にいけなくなってしまったというのは、本来の介護保険の使われた方と違うのではないか。
    介護されなくてもいい体力を維持するためにお金を使うべきだという考えで、予防給付というものができ、それに伴って、従来の要介護区分が変更される。
    その区分によって、今まで受けていたプログラムと変わってしまうことになるかもしれないが、職員と利用者の信頼関係や、また仲良くなった利用者同士の人間関係が壊れてしまうのは、お年寄りにとって良くないこと。
    お年寄りは環境の変化にとても弱いので、今までと同じ施設、同じスタッフで対応できるよう、利用者の希望を行政に伝えたい。

    認定は正しいのか
    利用者家族:はじめて会う人が認定をしてくれるので、「家族の私がいる時に来てください」と言ったが、不在の間に審査を済ませてしまった。
    結果としては、今までの介護区分と同じだったが、後から送られてきた書類に、利用者である主人は左半身麻痺なのに右半身麻痺と書かれてあった。
    主人は脳の病気を患ったので、「痛い?」と聞かれれば「痛い」、「痛くない?」と聞かれれば「痛くない」とオウム返しのように答えてしまう。
    そういう状況も、はじめて会う人にはわからないが、そのまま認定されてしまう。

    施設:第2の被害者を出さないためにも、認定をする人が右半身と左半身の麻痺を間違えたことを区に報告するべき。
    要介護の認定が、介護保険の全てのスタ−トで、全ての尺になる。
    利用者の中には、しっかりしていそうでしっかりしていない人もいて、それを初対面で見極めるのは難しいし、面と向かって「あなたおかしいんじゃないの?」とは口が裂けても聞けない。
    「トイレ汚していませんか?」と質問してひとり暮らしの方が「汚してません」と言い、家族と同居の方がいれば、「汚してるじゃない。いつも私が拭いているのよ」と言うなど、言ってくれる人がいるかいないかの違いということもあるので、やはり、初対面で認定というのは難しい。
    要介護の区分変更は、認定をしてから1ヶ月しか経ってなくてもできるので、区に申し出てください。

    利用者家族:認定の時の質問事項の中で「火の不始末があるかないか」というのがちょっとおかしい気がする。
    利用者である主人は、脳に障害があるので、火を使わせることがないし、使う必要もない。
    使える状況でない人にこういう質問をするのはどうかと思う。

    廃用症候群
    (骨関節疾患などによる下肢機能の低下や栄養状態の悪化による生活機能の低下、環境の変化をきっかけとして閉じこもりなどを原因として、徐々に生活機能が低下していくことをいう。そのままにしておくと「寝たきり」「歩行不能」などに陥るおそれがある。高齢者ほど生じやすく、いったん起きると悪循環が生じて、悪化が進む。新潟県中越地震でも、避難生活等による活動不足(過度な安静)などが原因で「廃用症候群」になるおそれがあるため、注意喚起している。「福祉広報号外」より)
    利用者家族:廃用症候群は、精神的な疾患でなはいということでしょうか。
    施設:脳も萎縮をするので、脳ドリルや脳リハビリは効果的だと思う。
    利用者家族:脳ドリルとしてア−トセラピ−をしている。粘土などを持たせると、すばらしい作品を作るので喜んでいる。
    利用者家族:お年寄りでお化粧をして喜んでいるのをテレビで見たが、ここではしていただけないか?
    施設:エステティックをしている。
    マッサ−ジして、基礎化粧をして、ファンデ−ションをつけて普通のお化粧をしたり、マニュキュアをつけるという簡単なものをやっている。
    利用者家族:母はよくやってもらうが、いつもでかけない人なのに「もったいない」と言って、デイサ−ビスから帰っても、どこかへ出かけたがるし、夜までお化粧を落とさずにいて、すごくうれしそうにしている。
    施設:精神科のドクタ−が男前に変わったら、女性が元気になった。
    いくつになっても、異性に注目されることはいいことだ。
    デイサ−ビスにもイケメンを入れよう。あっ、ここにいた。(一同笑)
    施設:口腔ケアもいつでもするので、いつも使っていらっしゃる歯ブラシ等を持参してください。

    介護保険の規約内での利用
    利用者家族:今来ている日以外でも利用したい。
    施設:ケアマネ−ジャ−の出したプランに沿って利用していただく。
    要望があればケアマネさんに相談してみてください。
    施設でも介護者教室というものを開いて、介護保険について説明したり、要望を聞いたりしている。
    介護教室以外でも、いつでも電話や連絡帳でご質問ください。

    家族同志の情報交換
    施設長:本当は、懇談会の後のおしゃべりの時間が大切で、ご家族同志が情報交換できるよう、施設とは別のところで家族会が運営されればいいと考えている。

  • 老人ホ−ムのイベント「居酒屋」でボランティアをさせていただいた

    エプロンは持参したが、三角巾やマスクも必要なので、お借りした。
    午後3時過ぎ、栄養士さんと2人で、老人ホ−ムの食堂で仕込みをはじめる。
    まな板や包丁、器にはアルコ−ルを吹きかける。
    ちょうどおやつの時間だったので、利用者の方々が食堂に集まっていて、無言のまま見つめられた。
    おやつを食べるのに、職員さんがずっと付きっ切りの方がいたり、咳き込めばすぐに職員が背中をさすったりしている。
    家族の人が来ていて、
    「材料を切る包丁のとんとんとんって音いいわね」
    とおばあさんに話かけていて、みんな少しやわらかい表情をしていたと感じる。

    食材は、全て細かく切る。
    と言っても、細かく切りすぎると逆に飲み込みにくい。
    はんぺんなら1枚を6等分、ごぼう巻きは3等分、揚げボ−ルは半分、がんもどきは半分から1/4、ちくわ・ちくわぶは約1cmの厚み。

    切っている間、
    「やまださん(仮名)、私にもちょうだい」
    「やまださん、どうしてくれないの」
    「やまださん、頭がいっぱいなの」
    「やまださん、食べてないのよ」
    「やまださん、食べてなくなっちゃった」
    とずっと話しているおばあさんがいて、正面にいるのがやまださんで、ずっとシカトしてるなと思ったら、やまださんは話しているそのおばあさん自身だった
    他のおばあちゃんに職員が、
    「今日は居酒屋の日だよ。
    ○○さんお酒好きですか?」
    と聞くと、それまで何を言っているかわからなかったが、突然、
    「好きです」
    と答え笑っていた。

    家族の人が電話で、
    「今、老人ホ−ムに来ていて、姉のところにいるからちょっと代わりましょうか?」
    と言い、電話を代わったおばあさんは、声を絞り出すように何かを話していた。
    しばらくしてまた家族の人に代わったら、
    「もしもし、何言ってるかわからないでしょ。ごめんなさいね、つき合わしちゃって」
    と言っていたけど、おばあさんはちょっとさみしそうにしていた。
    その後、私もそのおばあさんと話す機会があったが、話はまともに通じた。

    7時になり、居酒屋の会場となる食堂の入り口には赤提灯と手作りののれんが飾られた。
    職員は、入り口で待ち受けていたお年寄りのひとりひとりの手を取り、食堂へ入って行く。
    のれんの前で、椅子に座って待っているおばあちゃんのうちのひとりが、私のことをずっと指差したままでいて、隣のおばあちゃんが、
    「その手をどうしたいの?さっきからずっと指差したままで、何がしたいのよ」
    と言い、指差すおばあちゃんは、文句を言うように何かを言い返していた。
    私が近づくと、笑顔になって私の手を握り、言っていることはよくわからないけど喜んでいることはわかった。
    職員の人が迎えに来ても、手を放そうとせず、居酒屋がはじまった後も気づくと見つめられ指さされていた。

    みんな食事を済ませた後だが、結構な食欲で、おでんはどんどん減っていった。
    中には、からしをチュ−ブから7cmくらい出してくれというおばあさんもいて心配したが、おいしそうに食べていた。
    私はお菓子を差し入れたのだが、私が持参したポッキ−のようなチョコレ−トにむせたおばあちゃんが涙を流して苦しんでいて申し訳なかった。
    職員や看護師も着いていたので私は何もできなかったが、食べたものを戻していたようで、苦しそうだし、職員にも余計な仕事を増やしてしまって本当に申し訳なかった。

    「お水を持ってきて」
    と言うふりをしながら私の手を握り、
    「歌ってちょうだいよ」
    と言うあまえ上手なおばあさんは、イケメンの職員が、
    「今日は早番だったから、もう帰るよ」
    と言うと、
    「嫌よ。帰っちゃ嫌。」
    とまるで彼女で、
    「もしかして、ダ−リンですか?」
    と私が聞くと、
    「そうよ!私のダ−リンなの。じゃ、また明日来てね。」
    とフェロモンたっぷりで圧倒された。
    あちこちでカメラを向けると、それぞれおばあさんがお気に入りの職員と撮って欲しいと言い、私はあっちでもこっちでもラブラブ2ショットを撮影した。
    一方、おじいさんはノ−リアクションで、女性はたくましいなと感じた。

    合唱を楽しむグル−プに入れてもらうと、ほとんど知らない歌だった。
    「浜千鳥って聞いた時ないから、教えてください」
    と言うと、
    「あらぁ、そうなの?」
    と言って歌ってくれるが、自分たちも知らなくて適当に無理やり歌っていたりする。
    ほとんどの歌が、最後の部分が有名なフレ−ズなので、最後だけみんなの声が大きい。
    33歳の職員は何でも歌えて、その人が来ると、合わせてみんなで合唱し、これも職員の仕事なのだと感心した。
    歌詞カ−ドを持ったおばあさん2人が、
    「これ歌おうよ」
    「何ペ−ジ?」
    「何ペ−ジってどこに書いてあるの?」
    「ここに数字が書いてあるじゃない」
    とやり取りして、見ていると、いちいちどの曲のペ−ジを開いてもそう言い合っていて、ほほえましかった。

    8時半頃、お開きとなったが、「早すぎる!」とずっと怒っているおじいさんがいた。
    「私楽しくって♪」というおばあさんもいた。

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コメント

昨日はありがとうございました。
今日は、お年寄りと、庭でお釜でご飯を炊き
おにぎりにして食べました。うまかったです。

さて、読ませていただきました。専門家でないことが帰って新鮮に感じました。
ただし、一部誤りがあったので訂正して欲しいと思います。

4日目の取材   ・・・・過去に2つの区で認定を・・・・の後で「年に1回、重度だと2回」これは
誤りです。
原則初回は半年、それ以後は年1回、重度(要介護4.5)の方で、症状が固定されている方は2年に1回になることがある。というのが正しいです。

4日目の取材   その要介護の区分は今年の10月の改正に伴って、経度の人は大きく変わります。
これも誤りです。
正確には、10月の改正で変わるのは、食費についてで、これはすべての利用者が対象です。軽度のかたが変わるのは、平成18年度からです。


他は、ニュアンスの問題でこのままでも良いと思います。

おいでいただき、私たちも楽しかったです。またいつか機会があったら、あそびにおいでください。

投稿: 迫 | 2005年3月20日 (日) 15時54分

迫さん、ご指摘ありがとうございます
そして、貴重な体験をさせていただき、ありがとうございます

老人ホ−ムでのボランティアは、高校生の時ぶりでした
以前訪問した老人ホ−ムでは、寝たきりのおばあさんが、私の手を握って泣きじゃくり、困らされたことを鮮明に憶えています
私のことをお孫さんと間違えて、
「どうして会いに来てくれなかったの?
家に連れて帰って」
とおばあさんは、私の手を強く握ったまましばらく泣いていました
「ごめんね」
と言いながら、しわしわでしみだらけの手をさすりながら、自分の祖母のことを考えて涙がこぼれました
私のおばあちゃんの手もあったかくて、農作業をいっぱいやっている手でした

私の両親が離婚する時、、私たち娘の養育権を取リ合い、結果、私たちは母に引き取られました
父側の祖父母は、言葉では表現できないくらい私たちをかわいがってくれていたので、母の元で暮らす私が訪ねてくるのをずっと待っていたようです
でも、父はその後再婚したので、行きづらくなって・・・

今でも、自分の祖父母のことを毎日のように想い出します
祖父母の愛情がなかったら、今頃私はどうなっていたかわからないのに、私は、会うことさえ拒みました

今回のボランティアでも、本当の意味でボランティアができていたとは思えず、あの場にいる時も心が痛みました
自己満足だと思うのですが、時間に余裕ができたら、またぜひ参加させていただきたいと思うので、ご迷惑でなければ、よろしくお願いします

投稿: ぁぃ | 2005年3月22日 (火) 01時13分

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