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2005年3月 3日 (木)

2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会−長野がはじまるよ!! 【取材記10日目】

ホストタウンプログラム

ホストタウンプログラムで、2人のアスリ−トたちを受け入れたホストファミリ−の方にお話を聞いてきました
宿泊日の2ヶ月前に、同じ地区から2軒で、4名のアスリ−トを受け入れてほしいと長野市から要請があったそうです
私がインタビュ−した方(表現しにくのでAさんとします)は、その地区の区長だし、ご夫妻がボランティア精神にあふれていらっしゃる方なので、1軒はご自分のお宅ということですぐに決まったそうです
ところが、あともう1軒がなかなか決まりません
頼みに行っても、「自信がない」「夜眠れない」「ごはんは作れない」などの理由で、ご主人はOKなんのですが奥様に断られました
実際にいろいろと動いて面倒をみるのは女性なので、ご主人の協力がないと断らざるを得ないという事情は、同じ女性として理解できます
理解できないのは、
「アメリカのきれいな女ならいい」
なんてことを言った人で、優しいAさんも激しい口調になりました
「一般の人たちはわがままだよ
スペシャルオリンピックスに対する意識が、日本では低いんだよな
スペシャルオリンピックスはオリンピックじゃないんだ
『ス』に意味がある
勝ち負けではないんだよ
国際理解とか障害者、健常者を理解したり親睦を深めるなど、いろいろな意味が込められているんだよな」

やさかむら.net」より

知的障害者の人を今回受け入れてみて
予想外に問題がなかったので驚きました。
むしろ新鮮でとってもいい印象を持ちました。
国際交流というもの以上の交流の中身があったと思います。
つまり普通にむしろ純粋な人たちの心に触れた交流できたという感じです。

結局、宿泊日の10日前にやっと受け入れ先が決定して、2月23日にAさんのお宅には17歳と18歳の韓国の青年がやって来ました
黙っていたのは最初のうちだけ、すぐにAさんご夫妻になついて、にこにこして声を出していたそうです
「やさかむら.net」さんに書かれているように、Aさんも彼らがとても純粋だということを強調なさいました
「応援に行くと抱きついて来て喜ぶんだよ
それだけ心が純粋なんです
私のように70年生きていると、頭の中にいい面と汚れている面が入っているが、あの子たちは心が真っ白じゃ
だからうれしい時はうんとうれしい、悲しい時はうんと泣く
我々は、悲しみをこらえるだろな
彼らはそういうことができないんだから
だから障害者と呼ばれる
でも、心はものすごく純粋なんだよなぁ」

Aさんは、ご夫妻共々彼らのことがかわいくて仕方なく、奥様は毎日、Aさんもできるだけ応援に行っています
旗を振って応援するAさんご夫妻の姿を見つけると、にこにこ笑って抱きついてくるそうです
交流会でとても仲良くなった女の子も、抱きついてきて、
「大好き!!」
と言います

そんなかわいいアスリ−トたちですが、大変なこともありました
2月23日、最初の晩ごはんは、トンカツとエビフライ
普通私たちは、おかずを食べてごはんを食べて、次はお味噌汁でまたおかず、そんでごはんとあちこちいろいろ食べますが、彼らは違うんだそうです
最初にトンカツをパパっと食べて、次にエビフライを食べる
お皿に盛ってある野菜には全く見向きもせず、Aさんご夫妻がまだ食べていないトンカツをじ〜っと見つめていました
仕方なく、Aさん夫妻はトンカツもエビフライもアスリ−トにあげちゃったんだそうです
そして5合炊いてごはんを全て平らげました
「我々は食べるものなし!」
とおっしゃるAさんは満面の笑みでした

彼らの食欲はものすごいです
練習から帰ってくるとお腹が空いているらしく、バナナ3本、みかん7個をあっという間に食べ、りんごを4個剥いてあげると、それも2人で全て食べ、お菓子の袋を2つ
これだけのものを全て一度に食べちゃったそうです

「まぁ〜食欲あるあるぅ!!」
とAさんが大笑いなさるのは、2日目に長野市主催の歓迎会(立食パ−ティ−)でのこと
「炒めごはんでしょ、それからスパゲティ、ほんで五平餅、それからぁ、てんぷらね
とにかく山のように盛って3皿!!!
だからね、見ていて彼らの好きなものがわかったよ
肉類、肉の中でも豚肉ね
あとはフライでしょ、炒めごはんにスパゲッティ」
とAさんは自慢げにお話なさって、私もあきれてお笑いしました

「キムチも用意なさったんですか?」
と質問してみると、意外にも、キムチには全く箸をつけなかったそうです
「だからね、こういうことなんですよ
日本の食事をしてほしいということですから、例えばイタリア人だからったって、スパゲティを出さなくちゃいけないってことは全くないんだってわかったわけです」
というAさんのお言葉に、なるほど、逆の立場だったら、わざわざ海外の一般のお宅で2泊か3泊するのなら、お味噌汁とごはんより、地元のおいしい家庭料理をいただきたいと思うのが人情ですね

食事以外に大変だったのは、お風呂
バスタブのお湯は、もれなく抜かれちゃいます
シャワ−も厄介で、きれい好きなアスリ−トはシャワ−を夜中の12時とか1時に浴びて、すっきりしたら自分はとっとと寝ちゃいます
ところが奥様が、
「なんだか水の音がするわよ」
と言うので、Aさんがバスル−ムに行ってみると、熱いシャワ−が出しっ放しで、バスル−ム中湯気でもうもうとしていたそうです
「シャワ−を浴びたら止めるっていう感覚を持てるのは健常者、それができないから知的発達障害があるってことなんですから」
と、Aさんは養護学校の先生もなさっていたので、元々知識がありました
Aさんが関心なさったのはトイレで、最初にしっかり教えたそうで、とてもきれいに使えました

お風呂以外にもっと大変な事件も起きました
アスリ−トたちは、朝食の後、それぞれ練習に出かけます
近くまでシャトルバスがお迎えに来るので、Aさんはそこまで車で送っていきます
事件はその時起こりました
車の後部座席にアスリ−ト2人を乗せて、Aさんは部屋に戻り、火と戸締りの確認をしました
すると、彼らのうちにひとりが、パワ−ウィンドに興味を持ち、上げたり下げたり上げたり下げたり・・・
アスリ−トの俊敏な指使いについていけなかったパワ−ウィンドは壊れてしまいました
「24500円!」
Aさんの支払った修理代の金額です
「どこからももらえませんよ
まさか、韓国に請求するわけにもいかないし(笑)
俺が悪かったぁ・・・
エンジンかけなきゃよかったんだもん
だってさ、待ってる間寒いだろうと思ってさぁ
高校卒業するかしないかって年頃なんだもん、まさかねぇ(笑)」
24500円はイタかったようですが、「このお話はAさんのネタになっっちゃてるな」と私はほほえましく感じました

興味深く聞かせていただいたのは、トレ−ニングのお話です
夜ごはんまで時間があるので、トレ−ニングとしてウォ−キングをしに外へ出かけたそうです
彼らは、身長180cmもある若者
70歳を過ぎたAさんの足ではとてもついて行けません
「ほっといたら、とんでもないとこ行っちゃうもの
でも、こっちは韓国語がわからないでしょ
だけど、私は元英語教師だから、『スト−−−−−−−−−ップ!!』って大きな声で言った
そしたら、じっと止まってこっちを見ちょる
ああ、韓国でも『止まれ』のことを『ストップ』って言うんだなとわかったんだよ」
すごく得意そうにおっしゃいましたが、『ストップ』ってきっとほとんどの国で通用する言葉ですよね
でも、にこにこして一生懸命話してくださるAさんなのでした

もうひとつは、日本の漫画を渡すとじっと読んでいるけど、日本のテレビや音楽には全く興味を示さなかったと聞いたことです
そして、教員をなさっていたAさんは、
「知的発達障害を持っている人というのは、アルバムを食い入るように見るんですよ
うちにあった私の結婚式の写真とか、子供のの写真とか、まぁ7冊渡したら、じぃ−−っと見てましたよ」
他人の写真の何が面白いのか聞いてみたいです

接していて難しかったのは、注意する時だったようです
自分で自分の荷物をまとめられない
Aさんがまとめて車に積み、目的地に到着すると、荷物を持たずに自分だけどんどん進んでしまう
そういう時に、
「『お〜い、荷物持って行けよ』と呼ぶと、怒られたと思ってしまうような弱い子供なんです」
Aさんの表情がほんのちょっぴり険しくなった瞬間でした

更にAさんは続けました
「ごはんをこぼしても、『こぼしたな』とコ−チは言えても、我々は言えませんよ
お風呂の水を抜かれたなと思っても抜かれたまんま(笑)
自分の好きなことしかやらないから、手をこうやってくるくる動かし続けたり、テ−ブルを叩いたりもする
そういう時、『やめっ』と言うと怒られたと相手は思うので難しいんですよねぇ
いちいち注意したら、うちを飛び出しちゃうんですから」
純粋であるということは、繊細でもあるのかもしれません

2日目の夜、ひとりのアスリ−トが一晩中歌を歌っていました
どうしていいのかわからないAさんが、通訳の方に聞いてみると、
「Aさんのおうちに来れたのがうれしくてはしゃいでいるのでしょう」
と言われたそうです
この話をする時のAさんは、とてもしあわせそうに見えました

そんなAさんに支えられて、アスリ−トのうちの一人が見事に銀メダルを獲得したと、奥様が大興奮で電話をかけてきたそうです
交流会で奥様を大好きになった同じ韓国のアスリ−トは、失格になってしまい、悔しくて悔しくてずっと泣き続け、コ−チがなだめるのに大変そうだったと、今度はものすごくがっかりなさって電話がかかったそうです

Aさんご夫妻のお話を聞いて、「ホストファミリ−」という言葉の「ホスト」はいらないんだって思います
Aさんご夫妻は、彼らの日本のファミリ−になったのだと断言できます

旅鳥の独り言」より

今まであまりスペシャルオリンピックスに興味が無かったが、とても気が穏やかで陽気な彼らと接するうちに、彼らのフロアホッケーの応援に長野市ホワイトリンクに行きたくなってきた。
 彼らの健闘、いや、楽しく試合をされることを心から祈っている。

明日(3月4日)のフロアホッケ−は決勝です
フロアホッケ−は、今までの成績に関係なく、明日の総ト−ナメント戦で順位が決まります
レベル分けの結果、1つのグル−プは、だいたい4チ−ムなので、ほとんどのチ−ムがメダルを狙えるんです
(中には5チ−ムや6チ−ムのグル−プもあります)

「旅鳥の独り言」さんにお願いがあります
ぜひ、応援に行って、彼らの輝いている姿を称えてください
そうすることが、彼らの今後の自信となり、彼らの人生に大きな影響を与えることになると思います
だって、ホストファミリ−は日本で唯一の彼らの家族なんです
人は、最も信用する家族にほめられることが、何よりうれしいって思いませんか?

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