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2005年2月 2日 (水)

社会が作るこどもの傷 【取材記9日目】

Sakamoto

はじめて有名人の取材ができました
5月12日、後楽園ホ−ルで復帰が予定されているプロボクサ−の坂本博之さんです
坂本さんが施設出身者で「こころの青空基金」を立ち上げていらっしゃるとインタ−ネットで知り、角海老宝石ボクシングジムへいきなり電話をし、取材が成立しました
HP上で坂本さんのお顔を拝見した時「見たことあるなぁ」と戦歴を確認したら、畑山隆則さんとの世界タイトルマッチをテレビで見ていたんだと思い出しました
あの時、坂本さんを応援してたんですよ・・・負けちゃったけど感動的ないい試合でしたよね

今日は、練習から見せていただきました
もちろん、ボクシングジムへ行くのは生まれてはじめて
ボクシング(練習)を生で見るのも生まれてはじめてです
想像以上の迫力と真剣さに、カメラのシャッタ−を切る私もファインダ−に集中しました
昨日の夜は「裸の男の人がいっぱいいるとこ行くんだぁ」と興奮気味でしたが、裸で練習する人はひとりもいらっしゃいませんでした・・・

坂本さんの印象は一言で「ヒ−ロ−」
はっきり言ってかっこ良過ぎです
考え方は超が10個くらいつきそうなほどの前向き
長所は我慢できること
「では短所は?」と聞くと、数秒考えた後「悪いことがあっても全ていい方に考えるから」と答える
ボクシングという人生を一歩ずつ歩んできた自信に満ち溢れていました

だけど、私にはポジティブさを持って、坂本さんは自分で自分を追い込んでいるように見えました
「我慢は自分のためだけにしているの?」
そう聞きたかったけど、前を向いて突っ走る人に向かって言えるほどの度胸はありませんでした

施設で育った有名人を坂本さん以外に私は知りません
言うなれば、坂本さんは養護施設出身者の代表のようなものです
その坂本さんが悪事を起こせば、「施設の子だから」と言う人もいる
坂本さんはそのことを意識しているはずです

また、施設の子供たちの夢を背負い、それに応えようと再びリングに立つ決意はプレッシャ−との戦いでしょう
もちろん、坂本さんの口から「プレッシャ−」なんて言葉は出てこないけど、私は施設出身者故の枷に縛られているような気がしてなりません

こういう私の思考も偏見なのかと胸が重くなります
先週今週と、いろいろな人の気持ちを聞いていながら、まだ特別視してしまう私の思考をどう整理すればいいのでしょうか
私の心のどこかに、同情心があるのかもしれない
明日は、生活がうまく行かなかった人たちのことを調べてみます

    【 今日の覚書 】

  • プロボクサ− 坂本博之さん
    入っていた施設は121名の満員の大舎で、ホ−ムステイの経験はない。
    施設にいる時はみんなと一緒に平等にごはんを食べられるのがうれしかった。
    施設から学校へ行き、施設でごはんを食べ寝る、施設のお陰で生活ができたと感謝していて、いる時はしあわせだったと思う。
    お正月やお盆は半分以上の子供が外泊するけど、他にも残っている友達がいるからそんなにつらくはなかった
    お正月は甘酒がもらえて、「帰れなかったけど甘酒がもらえるからよかった」と思えた。

    施設の食堂のテレビでボクシングを見て、華やかな世界へあこがれ、自分もその中へ入りたいと思った。
    デビュ−戦の時、「いよいよあの花道が・・・」と立ってみたら、テレビの中のイメ−ジ通りで興奮した。
    それから新人王をとって施設へ訪ね、子供たちと交流している。
    勝つたびにおやつを持って行ったり、チャンピオンになった時はベルトを持って行く。
    子供たちはみんな試合を見ていて、負けた試合を見て涙を流す子供もいる。
    「もう1回やって」という子供たちの想いがあるからやりがいがある。

    2000年の畑山隆則さんとの世界タイトルマッチの記者発表で、こころの青空募金の宣伝をし、施設へパソコンを寄付した。
    メディアを使った宣伝は効果があり、1台だったパソコンは今では10台になっている。
    毎年七夕の時には、短冊を売るなどして寄付を募り、試合と重ならなければ施設へ行き、みんなで七夕をする。

    子供たちに言いたいことは「養護施設に入っていることは恥ずかしいことじゃない。一生懸命やれば受け入れてもらえるから、毎日一生懸命生きようね。自分に自信が持てるよう、好きなことを1つだけやろう。ただし、迷惑はかけるな。」ということ。
    こういうことは、自分が同じように施設にいたから言える。
    待っているだけじゃ、理解してくれる人には出会えないから、自分から飛び込んで行く。
    自信が持てれば、自然と施設にいたと言えるようになる。
    悩む時期があっていいと思う。ただ、その時に誰かひとりでも話ができる人がいて欲しい。
    子供たちがそういう人に出会って欲しいと願っているし、自分自身がそんな存在になれればいいと思って交流している。

    ボクシングは職業ではなく、生き様としてやっている。
    好きなことをやるなら、いくらだって我慢する。
    つらい時は歯を食いしばり、つらい時こそ前へ出る。後ろにさがるな。
    前進すれば道は開けると、今までやった積み重ねの中でおぼえた。
    やってできなければ後になって考えればいい。
    だから、去年ヘルニアの手術をした時も、ボクシングをやりたい一心で決意した。
    何十年後かに、「あの時手術してたら、またボクシングできたんじゃないかな」と後悔したくなかった。
    入院している時もボクシングのことだけ考えて、痛みがあっても、慌てずに「こんなことはある、誰にでもある」と前向きに考えた。
    試合前は練習がうまくいかなくてイライラすることもあるが、そういう時は寝る。

坂本博之さんのHP"FUDOUSHIN"

こころの青空基金HP

角海老宝石ボクシングジムHP

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コメント

 初めてお会いする方のインタビューって、緊張するでしょうね。相手が“インタビュー慣れ”している方だとなおさらかも知れません。

 さて。今日はかなり辛辣ですが。
 この取材で、坂本さんが「施設出身者ゆえの枷に縛られている」と感じた根拠はなんでしょうか。「悪事を働けば『施設の子だから』といわれてしまうことを意識している“はず”」なのはなぜですか。
 あなたが坂本さんの言葉やしぐさから“坂本さんを縛る枷”を感じ取ったのであれば、その部分を具体的に描き出す必要があります。私には、あなたが坂本さんをスクリーンとして、自分の中の“施設出身者=かわいそう”イメージを描きたかっただけのように感じられました。
 インタビューは“聞き手の想定していない答え”が出る方が面白いですし、独自性が出るものです。せっかくお話しを聴くのですから、もっとお話しの内容に寄り添ってみてはいかがでしょうか。

 では、前向きな話も少し。
 自分の中に存在する(であろう)偏見を押し殺してしまうだけではなく、「私には“施設の子=かわいそう”という先入観があって、おそらくそれはかなりの人々が共有しているように思うのですが、あなたが他人の先入観を感じ取るのはどんなときですか」などと、開き直って聞くこともあり得るでしょう。
 また、坂本さんに「ご自身の子どもをどのように教育したいですか/していますか」などという形で家族イメージを聞き出すことも効果的でしょう。「自分は施設に育ったことをマイナスとは思わないが、子どもにはあたたかい家庭愛を与えたい」とか、「集団の中で成長するのが望ましいので、集団スポーツなどを通じて自立心を持たせたい」とか、いろんなとっかかりが見えてくるものです。

 私は、あなたの【取材記】からたくさんのものを感じ取っていますし、いろんな事柄について改めて考えるチャンスを得ています。あなたの試みは決して間違ってはいません。厳しいことを書きましたが、へこたれずに頑張ってください。応援しています。ではではまた。

投稿: an_accused | 2005年2月 3日 (木) 05時35分

痛いところを突かれました
>「施設出身者ゆえの枷に縛られている」と感じた根拠はなんでしょうか。
どんな質問を投げかけても、ゆるぎない坂本さんのポジティブさです
「短所は?」という質問にも具体的なものは出てこず、「いつも前向きだからね」と答える坂本さんに異様さを感じました
昔のアイドルのように、事務所の方針としてヒ−ロ−を演じる必要があるのかとも思えますが、私がもう一歩踏み込んでインタビュ−できなかったのは、別のところに理由があります
ヘルニアの手術を経て、5月の復帰戦へまっしぐらに突き進む坂本さんは、自分自身が前向きであると思い込むことで前へ進んでいるのではないかと思ったんです
私が、後ろ向きなインタビュ−をすることによって、自分の弱さを認識し、突っ張っているものが切れて崩れてしまわないだろうかと、その部分には触れてはいけないと私が勝手に脅えてしまったんだと思います

それは失礼な話で、答えが導き出せない取材をしてはならない
今後は、言葉に配慮をしてインタビュ−します
それには、an_accusedさんがコメントしてくださったことはとても参考になりました
fratdriveさんが以前にコメントくださった、「ボウリング・フォー・コロンバイン」も思い出します
マイケル・ム−アさんは見ている方がドキドキするような質問をするけど、だから面白い
今の私の力や立場では、なかなか乗り切れないと思うけど、決してあきらめずに、鋭く切り込んで行けるように考えて取材に取り組みます

投稿: ぁぃ | 2005年2月 4日 (金) 11時54分

 “いつも前向き”なのは、施設出身者ゆえのことなのか、それとも勝負を前にしたボクサーの自己暗示なのか、あるいは初対面の女性には弱みを見せまいという配慮なのか、もともとポジティブ思考の持ち主だからなのか。“前向きさ”の理由を推測するには、もうすこし情報が必要なようですね。
 執筆者の解釈がきちんとインタビュー内容に根拠付けられていればよいですが、推論の根拠が薄弱だと、“執筆者の思い込み”との印象が強くなってしまいます。
 この【取材記】を坂本さんが読まれたとしたら、彼はどんな印象を抱くでしょうか。取材対象に媚びる必要はありませんが、インタビュー内容に忠実であろうとする姿勢は必要だと思います。

投稿: an_accused | 2005年2月 5日 (土) 13時47分

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