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2005年2月11日 (金)

ネットジャ−ナリズムの行方 【取材記5日目】

Yokokei 今日は、新聞と名がついていながら、インタ−ネットだけで発信している「ヨコハマ経済新聞」さんを取材しました
お話を聞かせてくださった杉浦編集長は、本職は舞台監督をなさっていらっしゃる方で、その風貌を見た時には
「編集長?うそぉ〜!」
と思ってしまいましたが、舞台監督と聞くと「なるほど」という感じがします

「情報が欲しければ自分から発信せよ」と、今週お会いした人のほぼ全員がおっしゃったように、ヨコハマ経済新聞もまた同じ考えです
ヨコハマ経済新聞は、基盤にあるNPO法人の活動の一環として発信されていて、単純に情報を発信するのが目的なのではありません
簡単に言うと、おしゃれでかっこいい街づくりをして、みんなが横浜に行きたいなぁ住みたいなぁと思ってもらうのが真の目的で、
そのために、専門分野に優れた人がやっていること、考えていること、目指していること、またその人の所在も含めていろいろな情報をヨコハマ経済新聞の中に取り込みます
集められた情報は、みんなで共有した方が世の中の役に立つだろうと公開し、公開することで他の情報を得るという情報の循環を担う役割を果たしています
ヨコハマ経済新聞はみんながいつでも知りたい情報を取り出せる情報バンクであるために、検索機能が有効であるという点でインタ−ネットにこだわっているということでした

それにしても、本職を持ちながら日刊でヘッドラインニュ−スを、週刊で特集記事とラジオ出演ということで、ボランティアという形にしては負担が大きいのではないかと思い、
「その情熱はどこから来るのですか?」
と、先ずはじめに質問してみました
「アクセス数がゼロから少しずつ増えてきているので、見にきてくれる人のために有益なものを送り出したいという気持ちがあります
それから、僕らが扱っているものは僕らから見て価値がある、リスペクトできるもので、伝える価値があると思っています
スタイルがいいとか、考え方がいいとか、サ−ビスや事業がいいというところを見ていて、そういうものを貯めたり伝えたりするのは世の中の役に立つものですよね」
と答えた編集長の言葉の中に奉仕の心があるのかなと最初は思いました

でも、じっくり聞いてみると、NPOの活動も本職の舞台監督と同じ情熱なんですね
多くの人ががそれぞれ専門分担を持ち、その役割をきちっと果たしてひとつのことに取り組む
私は音大出身なので、何度か舞台に立ったことがありますが、個人のリサイタルよりも合唱やオ−ケストラなど大勢で取り組むことの方が最後の感動は大きい気がします
舞台も役者、衣装、美術、照明といろいろな役割分担があって、長い期間練習し、準備をして、当日お互いのコンディションを確認し、お客さんの入りを見て、ステ−ジに立ち、長い間練習してきた成果を出し、幕が下りる
拍手とオレンジと強い白色のライトを浴びる時の達成感と感動がくせになるものです
その達成感が大きければ大きいほど、やってよかったと思うし、またやりたいと思う
杉浦さんにとって、NPOの活動もそれぞれの人がその専門分野で力を発揮し、人の役立つことをする
舞台のお仕事と同じように達成感があるのだと思います

だから、ヨコハマ経済新聞の中でやっている取材したり記事を書いたり編集したりという作業は、ジャ−ナリズムに違いないのだけれど、最終目的が伝えることではないというところではちょっと違うのかなと思います
「こんなジャ−ナリズムもあるのかぁ」と私の中にセンセ−ショナルな風が吹きました

かっこ良さやスタイルの良さなどトレンディであることを追及してクリエイティブするなんて、外箱だけにこだわってるのかなと思うけど、実はそうするために人と人とのつながりを重視して、達成できれば人の心を豊かし、役も立つ
自分が役割を果たしたことで達成感を持ち、自分の存在価値を知ることができる
「ヤバい・・・ハマっちゃいますね 」
と私が言ったら、
「ハマってください」
とにこっと笑われてシビれちゃいました

こちらのNPOは「ラボ」ということで、ヨコハマ経済新聞も研究材料のひとつです
より良くするために、その時のその時の最先端の技術を取り入れ進化しさせていくようです
インタ−ネットとジャ−ナリズムという両方の視点から、これからの時代を読むために注目すべきクリエイティブ集団だと思います

    【 今日の覚書 】

  • ヨコハマ経済新聞 編集長 杉浦裕樹さん
    エリアを横浜都心臨海部に限定した「クリエイティブ」「ビジネス」「マ−ケティグ」に関する情報をインタ−ネットで配信するサ−ビス。
    ヘッドラインニュ-スを毎日更新し、週に1回木曜日に「Special Feature」として特集記事をUPしている。
    翌週記事を出した翌日の金曜日の朝FMヨコハマに出演し最新情報を発信している。

    NPO法人 横浜コミュニティデザイン・ラボの一環で、情報が循環(情報を集めるために発信)する仕組みを作るためにいいだろうと去年の4月にはじめた。
    コンサルティングや情報の編集や発信を仕事としている人たちが集まって、そこで得たノウハウや人間関係を自分の住んでいるところに役立てていくことをミッションにしたNPO。
    世界の港町横浜を目指し、面白く、楽しい街づくりを実践型で研究する非営利のラボ(研究機関)である。
    いろいろなものの中間に入る(インタ−メディアリ−)というコンセプトに基づき、媒介して何かを伝えたり、いろいろな価値や才能を持った人たちが一緒に取り組めるよう連携や協働をしながらやっていくというのが大きな活動のテ−マ。
    NPOとしての事業内容は、
    (1)街づくりに関する調査・研究・コンサルティング調査事業
    (2)コミュニティビジネスの研究及び開発に関する事業
    (3)産官学民横断型のコミュニティ・プラットフォ−ムの組織整備
    (4)市民メディア、パブリックメディアに関する調査・研究・実践
    (5)街づくりに関するセミナ−・イベントなどの事業
    (6)街づくりに関連するWebや、メ−ルマガジン等の企画・製作・運営
    この中の(6)に位置するヨコハマ経済新聞を通して知り合った人たちとのつながりがどんどんできて、あるテ−マについて一緒に研究や検討をすることが本来の目的で、ヨコハマ経済新聞というのは、そのための道具である。

    横浜コミュティデザイン・ラボは、智財創造ラボのプロジェクトのひとつで、その智財創造ラボとは、連携と協働のための活動・道具・環境をデザインし、そこから生まれる関係価値=<智財>の社会化を目指す研究プロジェクト。
    智財とは、価値がある人との関係ができているという財産のことで、そこにどんな人がいて、どんな想いでどんなことに取り組んでいるのかというこをがわかっている価値を大事にしている。
    人は、何かに関心を持って、同じ関心を持つ人たちと一緒に何かをしたりつながりたいと思い(コミュニティの連携と協働)、コミュニティは力を発揮すると、世の中が良くなったり豊かになったりする。
    智財をみんなで使えれば、世の中の人にとって役に立つだろう
    ヨコハマ経済新聞は、価値のあるものを欲している人たちを結びつけて智財を作り、尚且つメンテナンス(維持)していくためのツ−ルである。

    Q.ヘッドラインニュ−スの選択にこだわりのようなものを感じましたが、選ぶ時の基準は?
    経済、経営というのは、世の中の経済状況とか、会社を経営するとか、株為替に限らず、もっと普通のことだと思う。
    例えば、市民団体がホ−ルを借りて何かをやるとかでも経済とか経営に係わるわけだから、僕らが見ておもしろいなとか興味があるなとかいう目線を持って編集し伝えている。
    何を選ぶかによってト−ンが決まってくるし、どういうことで選び、どういう見出しでどう見せるかというのがクリエイティブなのかもしれない。
    エリアを横浜の都心臨海部にスパっと限定して、その中でクリエイティブに価値があるもの、ビジネスに価値があるもの、マ−ケティングに価値があるものと思えるものの情報を出している。
    他拠点展開も予定していて、その地域のある限られた分野に関してNo.1になり、その領域に関してはここが面白いという情報が欲しい時に短期間で獲得できる道具になる。

    Q.反響は?
    クリエイティブな活動をしている人たちや何らかの問題意識を持ってやっている人たちにとってはすごく役に立つと言われる。
    施設の人たち、例えば赤レンガ倉庫、クィ−ンズスクエア横浜、ランドマ−クタワ−、カレ−ミュ−ジアムなどの人たちは、自分のことも知って欲しいし回りのことにも興味があるので便利。
    メディアの人たちも使っているだろうし、一般の人も毎日の新しい情報をヨコハマ経済新聞というフィルタを通して得られる。

    Q.ポ−タルサイトを目指しているのですか?
    ミドルメディアと言って、マスメディアとパ−ソナルディアの両方から引っ張られる中間の位置。
    検索サイトに引っかかりやすくするために、ロボット型のサーチ-エンジンにみつけられやすくするためSEO(サ−チエンジン最適化)というのをやっている。
    マスメディアから見ると、狭いエリアのある分野の情報は自分たちより詳しいぞということでチェックする。
    パ−ソナルメディアの方は、トラックバックや引用という形で、見つけてきた情報をコピ−ペ−ストしていろいろな人に再発信していくというのがここ数年のスタイルとして定着してきている。

    自分たちを(ミドル)メディアと呼ぶからには、信用感が担保されるように様式とポリシ−を大事にしている。
    そういう意味では大手の新聞に似ているかもしれない。
    どこかのHPから取ってきた情報をコピ−ペ−ストするということをいっさいやっていないが、かと言ってそんな多数の記者が回っているわけではないので、公式な発表としてリリ−スされたものを元に書いたり、新聞から情報を得て、情報源にコンタクトを取って、その情報について何かをもらったりコメントもらったりしながら、自分たちのポリシ−で書いている。

    Q.今の技術でできる方法の中で最適なものを選んで、いいものが出てきたらどんどん取り入れて行くんですね。今後は?
    欲しい情報をプッシュしていく形を考えている。
    情報があふれているので、自分の欲しい情報を登録しといてもらって、それを出せるという仕掛けに変えていく。
    私たちは実践型研究集団というラボなので、一番新しくて、これから当たり前になっていくだろうという社会化していくものをいち早く実験する。

    ジャ−ナリズムそのものというより、ジャ−ナリズムによってできた関係。
    違う種類の専門技術を持った人たちが集まって、ひとつのことをやったという経験が、幅も広げるし豊かにもする。
    そこで、自分のやっていることが伝わっていると自分の存在価値を認識したり、フィ−ドバックもできる。

    ヨコハマ経済新聞

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